羽生善治 | 大局観

気まぐれ書評です。

私は幼稚園の頃に、サッカーより先に将棋を覚え、小学校の一時期は毎週将棋教室に通っていました。

羽生さんは小学2年生から始めたそうなので、羽生さんより早いゾ!

その頃までは将棋がとても好きだったのですが、いつからか興味が薄れて多分中学生の頃から今までほとんど将棋から離れていました。

なぜそうなったかは覚えてないのですが。

それがなぜか最近将棋にまたハマりだして、YouTubeで羽生善治チャンネルをお気に入り登録して廃人のように見ふけったり、スマホのアプリでコンピュータ相手にもう多分200局以上は打ってます。

あぁ、それにしても人間と将棋が指したい。

そういう流れで羽生善治の「大局観」という新書を読みました。


大局観とは、争点の箇所だけでなく盤面全体を見渡し、文字通り大局にたって判断するということなのですが、これを私は剣道の「遠山の目付け」同様、音楽に応用しています。

羽生さんは大局観を、「読み」と並ぶ能力として、対局において重視しているそうです。

読む力、つまりこう指したら相手がこう指して、そう来たらこうやって、という様々なパターンについて先を読むという力は若い人の方が上回っているそうです。

しかし年齢を重ね、経験を積んでいくと、大局観が培われ、若い棋士とも同等に渡り合える。だから羽生さんは、今の自分でも20代の時の自分に負けない、と思えるのだそうです。

将棋の対局をしている間、棋士は黙って盤面に向き合い、黙って一手一手を指します。

その姿をいつも、何考えてんだろーなーとか思ってたので、饒舌に語る羽生さんの著書はすごく新鮮でした。

そして、どんな当たり前の事でも、羽生善治が言うと全然違って聞こえる、というか説得力エグいです。

リスクを取らないことが最大のリスクだと私は思っている。なぜなら、今日勝つ確率が最も高い戦法は、三年もたてば完全に時代遅れになっているからだ。

とか、

棋譜検索で得た情報は過去から現在までのものを表示しているだけで、それがどんなに膨大な量であっても、未来については何も書かれていない。

とか、

400局負けたということは、私には少なくとも400以上の改善点があることになる

とか、

得ることよりも捨てることの方が何倍も難しい

とか、

なかでも注意すべきなのは、複数の選択肢をシミュレーションして、どちらもうまくいきそうにない場合だ。こんな時には、最後に思いついた別の選択肢が、やけにうまくいきそうに見えることがある。

とか、

将棋に限らず日々の生活のなかでも、一つの選択肢によって極端にプラスになるわけでもないし、取り返しのつかないマイナスになるわけでもない。

とか、

確率で大部分について解る。しかし、すべてではない。

とか、

最近の将棋の傾向(昔から将棋をやっている人にとっては、筋悪とか、美しくない、と感じる)を

私は、「モダンアートのようだ」と表現している。

とか、

私はこれまで、何と闘うという目標を立ててやってきていない。

信じていただけないと思うが、常に無計画、他力志向である。

などなど。

どんなに天才に見える人であっても、結局は一手一手、凡人同様に全力を傾け、何度となく負け、地道に、改善点に一つ一つ取り組んでいるんだと、思いました。


目次

第一章 大局観

1 検証と反省

2 感情のコントロールはどこまで必要か

3 リスクを取らないことは最大のリスクである。

4 ミスについて

5 挑戦する勇気

第二章 練習と集中力

1 集中力とは何か

2 逆境を楽しむこと

3 毎日の練習がもたらす効果

4 教えることについて

5 繰り返しの大切さ

第三章 負けること

1 負け方について

2 記憶とは何か

3 検索について

4 知識とは

5 直感について

6 確率について

7 今にわかる

第四章 運・不運の捉え方

1 運について

2 ゲンを担ぐか

3 スターの資質

4 所有について

第五章 理論・セオリー・感情

1 勝利の前進

2 将棋とチェスの比較

3 コンピュータと将棋

4 逆転について

5 ブラック・スワン

6 格言から学ぶこと

7 世代について

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演奏動画公開中!

Heinrich Schütz “Musikalische Exequien” op. 7 III. Canticum Simeonis / Salicus Kammerchor

Ensemble Salicus : Gregorian chant from “Proprium in ascensione Domini” / “Ordinarium missae I”

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主宰団体Salicus Kammerchorホームページはコチラ

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