インド古典声楽とグレゴリオ聖歌

先日開催いたしましたイベント、「インド古典声楽とグレゴリオ聖歌〜研究発表的レクチャーコンサート」ですが、ご要望がありまして、録画を販売することとなりました。

料金はお手頃価格のの1500円です。

レクチャーと演奏合わせて1時間40分ほどの内容となっております。

お申込みはこちら→https://forms.gle/KAB1yED3WSEx6HgcA

ツイッターでお声がけさせていただいたところ、思わぬ反響をいただきまして、2−3個売れたらいいなあと思っていたところ、すでに20名ほどの方にお申込みいただいております。

おそらくですが、演奏会であれば生演奏派の方も、レクチャー部分に興味を感じていただけているのではないかと思っています。レクチャー部分に関しては生でも録画でも得られる情報には違いが少ないと思いますので。

私が6年間ほどインド音楽のレッスンに通いまして、それをグレゴリオ聖歌の演奏にどのように活かしているかということについて赤裸々にお話しております。

後半の演奏部分では太郎さんのバーンスリーが本当にすごいことになっています。

大森の教会の響きがこれほどバーンスリーにぴったりだとは思いませんでした。

神がかった演奏です。

太郎さんのチャンネルからショート動画が上がっています。

パンフレットもついてます。

パンフ冒頭に書きましたまえがきを貼っておきます。ご興味持たれた方はぜひ録画をお求めください。

お申込み→https://forms.gle/KAB1yED3WSEx6HgcA


 グレゴリオ聖歌が楽譜として残され始めるのは9世紀から10世紀のことです。この単旋律のレパートリーが、西洋音楽の源泉と呼ばれるのは、まとまったレパートリーとして楽譜が残っているものとして最古であるからですが、その後もこのレパートリーは、現代に至るまで歌い継がれています。その間グレゴリオ聖歌は不変のものではなく、時代や地域の価値観の変遷に合わせて変化し続けています。ルネサンス期にはルネサンス風の、バロック期にはバロック風の、ロマン期にはロマン風の編曲がなされ、同じ曲であっても同じとは思えないほどの改変がなされることもありました。
 その都度その時代の歌いまわしも変化し、記録としての楽譜は残っているものの、録音技術が発明されるまでは、実際にどのような歌であったか、はっきりとはわかりません。特に最古の記譜法である「古ネウマ」に書かれている歌いまわしについては、わかっていることはほんの一部で(少なくとも私の目から観ると)、その全体像は完全に失伝してしまっていると言えます。西洋音楽の源泉という大仰な看板を背負いながら、実際それがどういうものだったのかはよくわかってないのです。
 私はこの「古ネウマ」を初めて見たときに「私は一体今まで歌の何を学んできたのだ。ここには歌のすべてがあるじゃないか」と感じました。それくらい「古ネウマ」は五線譜に親しんだ人間にとって、衝撃的に情報量の多い記譜法です。
 この「古ネウマ」で書かれた時代のグレゴリオ聖歌の「歌」、つまり「失伝した西洋の歌」の再創造が私の活動の大きなテーマであるのですが、その途上で出会ったのがインド古典音楽です。バーンスリー奏者の寺原太郎さんに習い始めて私は、「古ネウマ」と出会ったときと同様に、「私が今まで学んできた歌は一体何だったんだ」と白目を剥きました。それはもうカンブリア紀並に、歌の世界が広がり、旋律に対する解像度が爆発しました。その結果今では「古ネウマ」に書かれているのは歌の1%くらいなんじゃないかと感じています。そして裏を返せばそれくらい五線譜に書かれた情報(音高と音価)というのは断片的で、歌の0.001%位なのではないかと思っています。
 インド音楽を学びつつ、師匠にグレゴリオ聖歌を聴いてもらい、歌いまわしを相談しながら、「古ネウマ」の、特に「装飾ネウマ」と呼ばれるタイプのネウマについて検討を重ねました。その結果、それぞれの装飾ネウマについて、ある程度確信を持って、こうだったんじゃないかという歌い分けを決めることができています。それが決まったとて(それは歌の1%にも満たないので)、グレゴリオ聖歌がとても美しく歌えるというわけではないのですが、ここでその経緯と結果を一度発表させていただきたいと思います。
 そしてこの営みの中でわかってきた点として、グレゴリオ聖歌とインド古典音楽にどのような共通点があり、どのような相違点があって、いかにインド音楽の発想がグレゴリオ聖歌に活かされるのかということも整理してお伝えしようと思います。
 再創造した「歌」に説得力があって、それをもってこの営みに共感していただくのがもちろん一番なのですが、それを補足するものとして、またなぜそういう歌いまわしに至ったのかという疑問にお答えするという意図もあって、この度のレクチャーコンサートを企画しました。この企画を通して、「失伝した西洋の歌の再創造」の営みの輪に加わってくれる方が、一人でも増えると嬉しいです。