コエダイr合唱団の日

昨日は12:00-20:30でコエダイr合唱団にお世話になりました。

コエダイr合唱団はヴォーカルパフォーマーの徳久ウィリアムさんが主宰されている、特殊発声を専門とする合唱団です。


ブルガリアンヴォイス特別講座

12-14時はブルガリアンヴォイスのスペシャリスト、井尻真樹子さんをお招きしての講座でした。

井尻さんの講座は数年前にも受講しましたが、その時は確か30人以上の参加者がいて、今回は少人数での講座だったのでより濃密に受講することができました。

昨年ブルガリアンヴォイスのグループの来日公演を聴きに行って、精緻なアンサンブルに感銘を受けましたが、それを基礎練から体験でき、エッセンスをいただいて参りました。

ユニゾンから和音が展開し、半音を含む不協和音を経過してユニゾンに戻るハーモニーの繊細さは、民族音楽というよりはクラシックの現代合唱に通じるものがあると思いました。

楽譜を少しいただいたので誰か音出しして遊びませんか?

徳久さんのお陰でインド古典声楽やら声明やら学ばせていただいて、やはり自分としてはそれをどうしても特殊ネウマの解釈に結びつけようとする思考が働くのですが、今回のブルガリアンヴォイスのシステムはインド音楽のそれに近いものがあるんじゃないかと思いました。

両方ドローンの重要度が高く、ドローンに対してどういう音程関係を作っていくかというのがキモになっているし、ブルガリアンヴォイスの音階もインド音楽のシステムできっと説明出来るだろうなと。

そういう場合第7旋法から第4旋法に転旋?とか思うよりも、基本「レ」で最後だけ「コーマルレ」になるんやな、と思った方がスッキリします。

かと思えば、詩編唱に上声を足したオルガヌムの発想に似てるなあと思ったり。

音の選び方が違うので全然別物に聞こえますが、構造そのものはほんとよく似てます。

あ、それからインド音楽と決定的に違うなと思ったのは、喉でアーティキュレートする(多分装飾の一種)を多用するということ。

インド音楽はもうすんごいびっくりするくらいレガートなので。そういう意味ではインド音楽の方がネウマヌメヌメには近い。

ただクィリスマの歌い方で喉のアーティキュレートの装飾だったんじゃないかという説があって、これはつまりイタリア初期バロックにおけるトリッロのような感じなのだけど、これはもう断然声門閉鎖が強くて地声的発声の方が効果的だと思いました。

この一瞬入る打楽器的効果音みたいのは、ヨーデルでも重視されているそうです。地声から裏声に変わる一瞬に起こる独特の経過音。

だからもしクィリスマがそういったグロッタル系の装飾なのだとしたら、アンサンブルオルガヌムのような地声的発声で歌っていた可能性があるかもしれない。


コエダイr合唱団練習会

14-18時は合唱団の練習会。拓さんが抜けなければいけないということで、代打で指導させていただきました。

生まれて初めて楽譜無しで合唱指導しました笑

いやー貴重な経験をした。

これ毎回やってる拓さんタフやなあと思いました笑

歌詞だけいただいて、今初めて聞いた曲を指導するってまあなかなかの経験です。

結構じっくり耳を使う練習をしましたが、こういう西洋クラシック的合唱練習って、民族音楽系合唱をやる上ではある意味ナンセンスだとは思うけど、現地の方々とは環境が違うし、メソッド使って効率よくやるのもちょっとずるっぽいけど近道にらなるかなあと思いました。

異国の地で異国の民族音楽をやるのと、古楽をやるのってそういう意味で結構近い。

前者は音源豊富だけど文献が少ない(あっても入手しづらい、読めない)、後者は文献は豊富だけど音源がない。

なんつって思いながら、そこでサルデーニャのテノーレスの参考音源を聴いてて思ったのは、かれら(おそらく本能的に)旋律を純正調的に歌ってますね。

我々は単旋律の時と、長3度を純正と捉える前までの音楽はピタゴラス音律で歌ってて、それ以後の音楽は基本純正調で歌うんですね。

つまり和音用の音階と旋律用の音階を使い分けてるんですが、テノーレスは単旋律の部分でも純正調っぽく音をとってる。つまり長3度が低くて4度との半音が凄く広いんです。

で、これってインド音楽もそうで、インド音楽って単旋律音楽の極致だと思うんですけど、ドローンがずっと鳴ってるから、音程はそれに対して純正にとるんです。

だからグレゴリオ聖歌なんかもひょっとして日常的にドローンを使ってたような人達はもしかすると自然と純正で歌ってたかもしれない。

それで他の地域の人たちから「なんであいつらはミをあんな低く歌うんだ」とか言われてたりして。

なんの根拠もないけど。

それともドローンに対してすらピタゴリアンを貫いて長3度をハモらないように頑張ってたかも。その可能性ももちろんありますよね。

いずれにしろ平均律に慣れ親しまされた私たちはなんも考えないと「狙ってる音程そのものが違う」ということになりかねません。

これがまさに、環境が違うってことで。彼らが自然に出来てることを、私たちは意識的にやらなきゃいけない。郷に入っては郷に従え。ある思想を本当に理解するためには、理解する側の変容が必要だ。

なんてことを、ぼんやり考えてました。

あ、そうそう。前半ではホーメイ歌手の澤田香緒里さんとアイケイイチさんの指導も受けれて、カルグラとホーメイがまたちょっと上手くなりました!感謝!


サルデーニャ訪問簡易報告会

18時からはコエダイの皆さんがテノーレスの本場サルデーニャに行ったお土産話を聞きました。

なんとイタリアンのシェフ伊藤さん(広島の皆さん、バルセロの元シェフです)が駆けつけてくださって、集会所のキッチンでパスタを作ってくださいました。

とんでもないくらいシンプルな食材で信じられないくらい美味しいパスタを作ってくださいました。

こ、これが料理人の腕というやつか!

この報告会でのハイライトは現地で習ってきたばかりの曲を演奏してくださったときでした。

もう明らかにパワフルになってて驚きました。

ほかに、津軽三味線が聴けたり、小学生の歌う「大都会」が聴けたり、素晴らしい報告会でした。

↑拓さんからお土産いただきましたー。

ベリーかなんかのお酒だそうです。

ビンがコルクに巻いてあります。

コルクがサルデーニャの名産なんですって。

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〈インド古典声楽入門〉に参加してきました。

〈インド古典声楽入門〉に参加してきました。

先週の光岡英稔先生の武学講習会につづき、今週はバーンスリー奏者の寺原太郎さんの講座を受講してきました。

この講座は、先月私が講師を務めさせていただいた、コエダイr合唱団コブシ研究会の主催するワークショップシリーズです。

ちなみに来月はうちの叔母、桜井真樹子が講師を務める、「声明入門」で、こちらも私参加予定です。

ちょっと、よくよく考えたら私最近講習会通いまくり!

先週武学、今週インド音楽、来週とばして再来週武学(2回目)、再々来週声明。5週間のうちに4回講習会!

やば。スーパーインプット月間だわ。モチベーションどないなっとんねん。


ロングトーンによる瞑想

寺原太郎さんの講座は実は2年前にも受けているのですが、その時も大変感銘を受け、今回はことコブシにフューチャーした講習会ということで、あわよくばグレゴリオ聖歌の歌唱法のヒントになるかもと思い参加しました。

tanpura(開放弦5-6本で鳴らし続けるドローン楽器)がずーっと鳴ってる中で進められる講習会のスタイル。なんとi tanpuraというアプリだそうです。早速ダウンロードしました笑

今回の講習会は実際に受講生が歌ってみるという箇所が多く、大変実践的でありがたかったです。

朝イチにインド音楽の演奏者がやるという練習法、ひたすらに基音(sa)を出し続けるというのをまずやりました。

インド音楽では基準ピッチのようなものはなく、声域や楽器によって自由に変えていいそうです。

が、だいたい男性はD周辺、女性はA周辺がsaになることが多いそうで、今回はDを基音にしました。低い方からということで、なんとしょっぱなに発する音がLow D!朝だからギリ出るけど笑、いきなり凄い練習法とびだしました。

しかもなんとこれを1時間とか2時間やるそうで、もはや呼吸よりも自然に声が出る、という境地に至るそうです。

もうとにかくこういうゆったりとした時間の使い方って、私たちの体にとって本当に必要だと思います。

先週の武学の講習会でも、正座で体を観る、という観法を30分くらいやりましたが、途中でほんまに暇すぎて、現代に染まりまくった体には、拒絶反応が凄かったです。

でもそれをやってみて初めて、暇で暇でしょうがないという経験をすることができたし、本当に自分の体から目を離さないというのがどういうことかを学べました。

今朝早速1時間Low Dやってみました。30分正座に合掌で内観やりながら、30分は座禅のスタイルで。

いや、死ぬかと思いました。インド人すげえ。


インド古典声楽におけるコブシ

インドってデカい。なので一言でインド音楽といっても何を指すのかわからない。しかし古典音楽となると、ムガル帝国の影響があってそこまでの地域差はないそうです。

今回は北インド古典声楽ということで、古来のものと、ペルシャ系の文化が融合して発展してきたのだそうです。なんというか、インドって半島の端っこだし、いろんなものが流れ着くようになってるのかなあと思いました。

特徴としては、まずはなんといっても音の滑らかさに対するこだわり、ある音と、隣り合う音との間にある無限の音高、この「無限に一瞬で触る」というのが重要なコンセプトなのだそうです。

この滑らかな動き、にも3種類あって、初速が速くて後半減速しながら次の音に達するもの、初速はゆっくりで、加速して次の音に達するもの、それから初速速くて途中減速し、次の音に達する前にまた加速するものとを歌い分けるそうです。

しかもその途中に音の揺らぎを上につけたり、下につけたり、上下につけたり。こうした細かい動きがラーガによって規定されていて、それらを聞き分け、歌い分けできないとそのラーガは演奏できない。

そしてコブシにあたりそうなガマックとかムルキーをつけているときも、この滑らかな動きが失われないようにします。

ガマックは音と音の間を素早く行き来するのですが、隣り合うだけでなく跳躍音程でも普通にやるそうで、オクターブガマックがデフォルトの流派もあるそうです。

ムルキーは7個とかの音を一気にズラズラズラーっと歌うもので、それを知らないと、なんかしゃくったな、くらいにしかわかりません。あまりに瞬間的なので。しかしそう歌ってると言われて聞いてみると、不思議なことにそう聞こえてくるんですね。確かに音が7つ入ってる。

このムルキーもラーガによって入り方が決まっているそうで、その決まりの中で即興していくのだそうです。

https://youtu.be/76dGK1xcV2E

この動画の15分あたり、細かい音を鍵盤で後追いしてくれているのでわかりやすいです。


悠久のラーガ

このラーガの話で印象的だったのは、寺原さん自身が演奏に使うラーガは50種類くらい(メモってなかったので違ったらすみません)、聞き分けられるのは150種類くらい、ということでした。

旋律の微細な動きの差から、150種類聞き分けるってのも半端ないですが、それでもラーガって無数にあって(今ウィキで調べたら3万以上あるそうです)1人の人間が全てを習得できるということはないそうです。

全てを習得することをそもそも前提としていないというか、悠久の歴史の中でそれだけのものがあったということで、伝統の力強さを感じました。

それからこれも講座の後で個人的に聞いた話なのですが、大変印象的だったので書き留めておきます。

ラーガって一つ身につけるのにどれくらいかかるんですか?って私のしょうもない質問に対する答えとして話してくださった逸話です。

インドで国営放送が始まる時に、専属ミュージシャンのオーディションが行われた。気位の高いインドの音楽家は、なんもわからん役人に審査されることを嫌って誰も応募しようとしなかった。結局オーディションに来たのはいわゆる大御所とされる人ただ1人。一応決まりに従って口頭試問が始まった。「あなたはラーガをいくつ知っていますか?」という質問に、その大御所は「一つです」と答えた。「そんなわけがない。あなたほどの人が一つってことはないでしょう?!」、大御所曰く「知っていると言えるほどに身につけることができたのは一つだけです」

つまり一つのラーガを習得するには、(少なくとも)一生はかかる。

一つでも身につけてみたいなあと気軽に考えた自分が馬鹿でした笑


インド古典声楽における音律

グレゴリオ聖歌との共通点をいくつか感じることのできたインド古典声楽ですが、ここはかなり違うなと思ったのは、音程のとり方、音律についてでした。

グレゴリオ聖歌は基本的に音律はピタゴラス音律を用います。純正5度を使って積み上げた音律で、ドに対してファやソは純正になりますが、ミやシは純正長三度よりかなり高くなります。詳しくはコチラ

それに対しインド古典声楽では、純正調の考え方が基本的としては近いようです。純正調についてはコチラ

タンプーラが常にドローンとして鳴っているので、それに対して自然に音をとっていくと3度も純正にならざるを得ないという感じのようです。

ただいつもsa(ドレミで言うとドの音)を基準にした純正というわけではなく、ラーガによって同じ音でも高さを変えるということでした。

固定されているのはsa(ド), ga(ミ), ma(ファ), pa(ソ), dha(ラ)の5つ、動く可能性があるのはkomal re(レ♭), re(レ), komal ga(ミ♭), tivra ma(ファ#), komal dha(ラ♭), komal ni(シ♭), ni(シ)で、全部で(少なくとも)22個の音程があるのだそうです。

ちなみにここでレ♭という、移動ド固定ドのことをわかっている人からすると意味不明な書き方をしていますが、多分インド古典音楽的にはこの書き方が一番近いです。

これもかなり西洋音楽と違うなと思ったところのひとつで、インド古典音楽の階名は、西洋音楽の音名とも階名とも異なる考え方で、saの音高は適宜移動するのですが、saから階名は固定されていて、例えばkomal reの音もreの音も階名唱では同じreを用います。西洋音楽の階名の考え方だとミ-ファやシ-ドに読み替えるか、あるいはRaと言ったりしますよね。

階名唱に慣れている人にはかなり違和感がありますが、しかしシラブルが全然違うので、意外と慣れればできるものなのかなあとか考えていました。


講習会の後、コエダイr合唱団と、寺原夫妻と、イタリア料理のイベントに行き、たらふくうまいものを食い、コエダイの皆さんのテノーレスを聴くという、なんだかやたらと充実した1日でした。(広島のバルセロにいらっしゃった伊藤さんも料理を振舞われておりました)

https://youtu.be/HVyPQ34bhdM

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魅惑のカルグラ地獄

魅惑のカルグラ地獄

いやー。もう。凄いっす。

先程までアガリアム合唱団のリハーサルだったのですが、もう、兎に角凄いっす。

えと。もう何から説明したらいいかわかりませんが、、、。


アガリアム合唱団は主に2つの民族音楽を使って合唱しています。

1つはホーメイ、もう1つはイタリア、サルディーニャ島に伝わる、テノーレスという男声合唱です。

実はこの2つは非常に発声的に近くて、一部は全く同じと言っていいほどです。

まずホーメイですが、これはトゥバ共和国という今はロシアの一部となっている中央アジアの国に伝わる民族音楽で、有名なモンゴルのホーミーとよく似ています。

似ていますが全然違います。

ホーメイは大きく分けて3種類の発声法があります。

1つはホーメイ笑、ホーメイの中でもホーメイと呼ばれる発声法は、喉詰め発声とも呼ばれ、声門閉鎖を極端に強くして、高次倍音を強調したような発声です。

日本でいうと浪曲の任侠モノ、広沢虎造なんかがよく似ています。

https://www.youtube.com/watch?v=gJEkyBvN6L0

オーマイガ!なんて素晴らしいんだ!
そしてもう1つはスグット、ホーミーのように舌を硬口蓋につけて、倍音を強調し、その倍音でメロディを奏でます。

ぴーって、笛みたいな音がするのがスグットです。

そして最後にもう1つ、カルグラです。

これは声帯で出している基音のオクターブ下の音を仮声帯で同時に鳴らすというものです。

今回のメンバーは全員このカルグラが出来るのですが、4人全員でカルグラをやるという曲があります。

それがこれです(今日の録音です)

こりゃあヤバい。しかしヤバいだけでなく美しいと思いませんか?思いませんかそうですか笑。

そしてアガリアム合唱団の2本の軸のもう1つ、サルディーニャのテノーレスでは、このホーメイ(喉詰め発声)とカルグラを使ってハモります。

もう一度言います。ハ・モ・り・ま・す!

ね?想像しただけでワクワクするでしょ?しないですかそうですか笑。

以下はサルディーニャのテノーレス、これも今日の録音です。

拓さんが若干モニョモニョ言ってますが笑

4人で歌っています。旋律が拓さん、上から2番目の喉詰めを徳久さん、上から3番目の喉詰めが私、一番下でカルグラをやってるのがアイさんです。

全員日本人です。

こんなようなプログラムを30分を2公演やる予定です。

興味のある方はお早めにセアダスフラワーカフェへお問い合わせください。

残席わずかだそうです。

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