3つ目の記事です。
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傾向その6「狭母音が苦手」
これは発声というよりは発音なのですが、発声が発音に影響しているという意味で発声の問題に直結しています。
逆に言うと、発音を改善すれば、発声も改善する可能性があります。
母音は基本的に舌の位置(最も高い位置がどこにあるか)と唇の形(円唇か非円唇)かで決まりますが、狭母音というのは、舌の位置が高い母音のことです。
今回ラテン語で用いた狭母音は非円唇前舌狭母音[i]と円唇奥舌狭母音[u]です。
非円唇前舌狭母音[i]
i母音は舌の前の方を口蓋に接近させて作ります。言い換えると前の方で口蓋と舌のトップとの間が「狭い」とiという母音になります。
その際舌の先端は舌の歯のあたりについたままです。前舌母音というと下の先端を口蓋につけようとする方がいらっしゃいますがそれは誤りです。
i母音で陥りやすい傾向は2つです。
1つ目は、口蓋と舌の狭さを作るために顎を狭くしてしまうこと。
特にクラシックの場合は、音色が変わりすぎてしまうことを避けるために、顎の広さを確保しておくことが必要です。
顎を広くしたまま口蓋と舌を狭くするには、舌の方をがんばって高く保つということが必要です。結構努力感必要だと思います。慣れないと。
2つ目は、おそらくだんご舌の影響で舌が奥に行ってしまい、i母音がe母音に近づいてしまうことです。
そしてiっぽさを作るために閉鎖を強めてしまって、さらに音が硬い印象になってしまうということがあります。
円唇奥舌狭母音[u]
u母音はi母音同様口蓋と舌の間を狭くしますが、iよりも奥の方で狭めをつくります。
なので、aの時よりも舌が高い位置にいなければならないのですが、ほとんどの方が、a→o→uと変化するにしたがって、舌が下がっていきます(同時に喉頭が下がります)。
これは、ラテン語のuは日本語の「う」と違って深いんですよ。と言われ続けた結果だと思います。
イメージだけで「深く」と思うと喉頭が下がって舌も下がります。
その結果uには聞こえない、ひいき目にみてo?のような発音になって今います。
深いというよりは、暗くこもった音です。
傾向その7「特定の子音が発音できない」
これも発声というよりは発音の問題なんですが、やはり発声と密接に結びついていますので、ここで取り上げることとします。
語末、音節末のn,mが発音できない
今回の曲、最初のところがSpem in alium nunquam habuiという歌詞なのですが、ほとんどの音節がnかmで終わるんです。これが言えない人が本当に多かった。
語末のn,mは次の単語が母音から始まる場合はくっつけていいよって言ってもできない方が多かったです。
特に多かったのはnunquamのnで、これは日本語の「ん」の発音にひっぱられていることが原因と思われます。
nの発音は歯茎鼻音といいまして歯茎に舌の先端をつける鼻音なのですが、日本語の「ん」は歯茎鼻音を含め5つの発音があるといわれています。
詳しい説明は他に譲りますが、例えば「日本」というときの「ん」と「日本橋」という時の「ん」へ別の発音です。
前後関係で発音が変わる「ん」のイメージに引っ張られてnの発音が揺れてしまうんですね。
またこうした鼻音が多いセンテンスでは、母音が鼻母音化してしまう人が多いです。
傾向その4「開鼻」とつながります。開鼻傾向のある方は、鼻音の多いセクションではより一層その傾向が強まります。
lが鼻音化する
これも開鼻問題とつながっています。
lは側音といいまして、舌の先端を歯茎につけて、舌の横から息を流すようにして発音します。
ここで開鼻になっていると、lが非常にあいまいになって、nのように聞こえます。
nは歯茎鼻音でした。下の付ける位置がlと近いので、lが鼻音化するとnに聞こえてしまうんです。
日本の英語教育では、rの発音は日本語と違いますから気を付けましょう的なことにはフォーカスしていると思うのですが、lの発音が日本語と違うということにはあまりフォーカスしていないという印象があるのですが、その影響も大きいかなと思います。
lの発音自体を誤解している方も多いのではないかと思います。日本語のらりるれろとはこれも違う発音なので、やはり練習が必要だと思います。
rは巻けるのにtrは巻けない
これ私最近自分の合唱団にこういう方がいて、ほーそういうパターンもあるのかと思ったのですが、今回の企画の中でも結構いらっしゃいました。
一般的傾向とまでは言えなくても、かなり多くの方に現れる症状としてここに書き留めておく価値があると思います。
どうなっちゃうかといいますと、r単体では普通に巻き舌ができるのですが、trになると、英語のtreeみたいな発音になっちゃうんです。tribulationeという単語でこれが起こる人が多かったです。
やはり外国語を発音する際に、子どものころに習った英語の発音にひっぱられてしまうということは結構あるようですね。
似たような例としては、音節末のlが英語のdark lのように母音化してしまうという症状や、ドイツ語でerとつづるときに母音化したrが英語のrのようになってしまうなどが挙げられると思います。
ビブラート問題
さて、これも傾向とは違うはなしなんですが、ビブラートについてです。これは昔からあらゆる合唱人を悩ませてきた根強い問題です。
ビブラートがかかっちゃう人自身が問題意識を持っている場合もあれば、仲間にビブラートがかかっちゃう人がいてどうしたもんかと気をもんでいる方も多いでしょう。
これがですねえ。ビブラートが起こる仕組みというのがイマイチよくわかってなくて、直し方もコレっていうのがないんですよね。私の知る限り。
ただ、
・例えばソプラノという声種を選択した方に多い(ほかの声種にいないわけではない)
・プリングチェスト傾向の方に多い(あるいは目立つというだけかも)
・音程と音量が両方著しく揺れる場合、音程はそれほど揺れていないのに音量が激しく揺れている場合がある。そして後者はあまり気にならない
ということに今回気づきました。
波形を見るのがおもしろくて、途中から編集作業の中のちょっとした楽しみになっていました。ビブラート波形コレクターみたいな感じで、おおこれは!と思ったものはスクショ撮ったりしてました(笑)
謎深いビブラート問題ですが、最近試している方法で、少なくとも一部の方には効果が出ている方法を対策編ではご紹介しようと思います。
いやはや、またもや対策編に入れませんでした。
何しろ電車の中か出先のカフェとかでしか書けてないので、なかなか進まなくて申し訳ないです。
次回はいよいよ対策編です。