今日は午後はカペラ、夜はコントラポントの練習でした。
コントラポントは6/22(月)
カペラは海の日7/20(月)
http://www.cappellajp.com/topics/index.html
にコンサートがあります。
それぞれの演奏会詳細はリンク先のホームページをご覧ください。
古楽を演奏する際は、多かれ少なかれ必ずぶつかる問題として、使用楽譜の問題があります。
一般に、演奏する作品が古くなればなるほど、つきまとう問題は増えるように思います。
例えば前回のブログに書いたドラランドなど盛期バロックの楽譜は、手書きで見にくいということはあっても、記譜法自体は現代の記譜法となんら変わりがないので、楽譜の読める方なら解読可能です。コントラポントは基本的にバロック時代の作品をレパートリーとしています。今はモンテヴェルディのヴェスプロですが、この曲の場合そういう問題でないところに問題があります(笑)。
ところが時代を遡ってカペラがレパートリーとしているルネサンス期あたりになりますと、かなり事情が変わってきます。
まずスコアがありません(笑)。この時代あったのは、パートブックとコワイヤブックと呼ばれるものです。
パートブックというのは、いわゆるパート譜状のものが、テノールならテノール、ソプラノならソプラノで1冊にまとまっているものです。
こんなかんじ
これでも演奏できることはできるのですが、何しろ誰にも全体像が分からない状態(スコアがないので)でリハーサルをするのはかなり難しいです。
そこでカペラでは通常コワイヤブックを用いて演奏します。
これは1枚の大きな楽譜に、左上にソプラノ、左下にテノール、右上にアルト、右下にバスを記載した楽譜です。
演奏者は全員、この1枚の大きな楽譜を見て歌います。スコアのように、同時に鳴っている音を瞬時に判別はできませんが、慣れてくると、どのパートが何をやっているか、なんとなーく分かるようになってきます。(もう7年くらいこの楽譜で演奏していますが、まだそんなレベルですみません)
ですので、全体を把握して歌う為には、かなりの割合で、「聴いて覚える」という作業に依らなければなりません。ここの所が、コワイヤブックで演奏する際のメリットであり、デメリットであると思います。
パートブックとコワイヤブックの説明にえれー文字数使ってしまった…。
この二種類がこの時代に存在した楽譜なのですが、曲によってはパートブックしか残っていないものもあります。
そんな時は、諦めてパートブックで演奏するか、パートブックをそのまま超拡大して無理やりコワイヤブック状にして使うということも考えられますが、一番快適なのは、パートブックを切り貼りして、捏造コワイヤブックを作るということです。
こんなかんじ
今カペラでは、僕がこの作業を担当しているのですが、これ、意外と難しいんです。
しかもこの難しさって、なかなか伝わらないんです(笑)
難しさを説明するのが難しいんです(笑)
ちょっとその難題に挑戦してみましょう。
今回扱う曲は7声です。まず、A4を横に使ったパート譜が7つあります。Superius, Altus, Tenor, Bassus, Quintus, Sextus, Septimusです。パートによって休符多いパートもありますので、段の数はまちまちです。
それを、A3用紙に収まるように並べていきます。高度な空間処理能力が求められることがおわかりでしょう。
七つのパートをA3に入れるので、左側に4つのパート、右側に3つのパートです。とうぜん左はギッチギチ、右はスッカスカになります。ただし、一番下のパート(テノールかバス)には、ワープを使うことが許されていて、ワープ記号を書くと、同じ見開きの右から左、あるいは左から右にワープできます。
写真では、左下のテノールが、右下へワープ!
ね!もう既に難しいでしょ!難しさが難しいでしょ!
1曲はもちろん1枚には収まらないので、曲の途中でページをまたがなければなりません。みんなが同じ楽譜を見ているのでめくるタイミングは同時でなければなりません。かなり頻繁にシンコペーションが起こっているので、同時にめくれるタイミングを見つけるのは結構手間です。
あとはクレフの問題。段の初めには必ず音部記号を付けなければならないのですが、A4横をA4縦に入れるわけですから段が倍くらいになります。つまりクレフも倍必要ということなので、クレフのために原本をコピーして、クレフのストックを作ります。それを新しくできた段の最初のところに、ずれないようにぴったり貼ります。万が一一段ずれてクレフを貼っちゃった場合大惨事!そのパートは3度ずれて歌っちゃいます!
あと、歌詞が必ずしも音符の真下に書いてあるとは限らないので、切って貼った時に、右の歌詞と左の歌詞ががっちゃんこするときがあります。そういう時はどっちかを諦めて、別のところに、しかもわかりやすいところに書き直さなければなりません。
そういった作業の後、クストスを全部の段につけ直したら完成です。
はじめから綿密な計画のもと作業しているわけではないので、いつも出来はいびつで恥ずかしい仕上がりです。(泣)今度の演奏会では、そんな人知れぬ努力の賜物である楽譜を使用しています。
ちょっといびつな楽譜を見かけたら、そんな努力の跡を垣間見ていただけると嬉しいです(笑)。