ピッグスクイール考

皆様こんにちは。
こちらはデスメタル関連の記事です。

生理的に無理!という方はご無理なさらずに戻るボタンなりウィンドウの×ボタンなりをクリーック!


先日昔好きだったSentencedというフィンランドのゴシックメタルバンド(初期はデスメタルバンド)を久しぶりに検索してみました。

Sentencedは2005年に解散してるはずなのですが、なぜか2015年発表というアルバムが引っ掛かりまして、おやっ再結成かしら?!

と思い聴いてみました。こちら↓

聴いてみたらデスメタルだもんで、まさかの原点回帰かいな?とも思いましたが、あまりにもテイストが違いすぎるので、検索してみると、このバンド、イギリスでできた新しいバンドみたいです。

伝説的なバンドとおんなじ名前って、それ、ええんかいな?

ちなみにフィンランドのSentencedはこんな感じのバンドです。↓

さてこのような偶然によってであったこのSentenced(UK)ですが、聴いてびっくり、上の動画の2:05あたりからのボーカルの歌唱法は、デス声による倍音唱法じゃあありませんか。
下のリンクからだと2:05から開始します。

あたくしもうとても驚いてしまいまして、しかもこのバンド、このデス倍音唱法をいわゆるサビで使うんですね。つまりサビに歌詞がない

そういう意味ではこれも先日衝撃を受けましたBillie EilishのBud Guyと共通してるんですね。
こちらはサビがインスト(シンセ音を楽器と言っていいのかわかりませんが)です。

なにこれこういうのはやってんの?もうサビに言葉はいらないの?というかSentenced(UK)はBillie Eilishの先駆けなの?とか興奮いたしまして、Facebookのノイズボイスカラオケのグループに投げたんですね。あ、Twitterにも投げました。

それでそのノイズボイスカラオケのグループで徳久さんから返信が来たのですが、曰く

「ピッグスクイールじゃん?」

・・・・あーーーそう・・・ね・・・そうか・・そうね・・・。

言われてみればテクニックとしてはピッグスクイールそのもの。

ピッグスクイールが何かということについてはいわおさんのブログをご覧ください。

http://falsechord.hatenablog.com/entry/2019/10/13/032011

ぬ?このブログ、私の誕生日に書かれてる。私への誕生日プレゼントかな(違

それで私が考えたのは、なぜ私がSentenced(UK)の音声をピッグスクイールだと思わずに、デス声による倍音唱法だと感じたのかということ。

というわけでYouTubeでpig squealを検索!いろいろ聴いてみました。

こうしていろいろ聴いてみると、pig squeelの使われ方にもほんとバリエーションがかなりあるんだなあということ。

動画もピッグスクイールだけでこの他に山のようにまとめがありました。

シャウト的なロングートーン、リズミックにアクセントを加えるもの、基音が高めのもの、低めのもの、なんかちょっとしゃべってるものもありますね。

ちなみに私が気に入ったのはこの人↓

なにこのポップなテクノチューン笑。おっちゃめーーー!

デスメタル界の岡崎体育かよ!笑

それでSentenced(UK)と何が違うのかというと、これらのほとんどはピッグスクイールを効果音的に使っているということです。

それに対しSentenced(UK)は明らかにピッグスクイールによって生成される倍音によって旋律を奏でています。

世の中にはね、二つのピッグスクイールがあるんですよ。

それはね、効果音的ピッグスクイールとね、旋律的ピッグスクイールなんですよ(ドヤ顔)


で倍音唱法でいうとですね、ホーメイを例にとると、舌を口蓋につけるものとつけないものとがございまして、

舌をつけるものをスグット

舌をつけないものをホーメイ(芸能としてのホーメイの中に、技術としてのホーメイがあるんですね。ヤヤコシイ)

というんですね。でピッグスクイールは舌をつけているのでスグット系なわけです。

またホーメイにはさらに

仮声帯が声帯と同じ周期で振動しているもの(ホーメイ、スグット)と

仮声帯が声帯の1/2の周期で振動しているもの(カルグラ)

があるわけですが、音印象として旋律的ピッグスクイールはカルグラの、舌付けって感じですよね。

仮声帯が 声帯の1/2の周期で振動しているもので、舌をつける技術はないのかというとあります。それが、 カンズップКаңзыпです。

というわけで旋律的ピッグスクイールはカンズップに似ているのですが、では何が違うのでしょう。

多分まだはっきりとはわかっていないと思いますが、おそらく、ピッグスクイールのもとになっているフォルスコードなりフライなりのガテラルは仮声帯か声帯かどちらか、あるいは両方が非周期振動をしていると考えられます。

ガテラルはカルグラの親戚

ピッグスクイールはカンズップの親戚

と、言えるかもしれません。

そして、Sentenced(UK)が他のヴォーカルのピッグスクイールと比べて音程感が強いのはひょっとすると声帯は周期振動、仮声帯は非周期振動しているのかもしれません。

そういうわけで私がSentenced(UK)を聴いて、これ倍音唱法じゃんって思ったのだと、考えたのでした。

おしまい。


本文と全然関係ありませんが(もちろん深いところではつながっていますが)、叔母とのコンサートが今週末です。

先日リハーサルしましたが、なかなか凄いです。

物凄く異質ですが、マッチしてるという感じです。

多分私たちにしかできない内容です。いろいろな意味で。

グレゴリオ聖歌と声明のコラボって割と見聞きしますけど、ここまでドラスティックにお互いの領分に切り込んだものはこれまでなかったでしょう。

そしてこれからもないかもしれません。

お席が残り14席となっております。

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デスヴォイスとはなんぞや

昨日、Twitterでつながっているいわおさんというデスヴォイスを探求する人の講座に参加してきました。

普通の発声ですらまだまだ謎深いのに、デスヴォとなるともうブラックボックス。なにがなんだかわからない。それを解明しようとする人も少ない。

いわおさんはそれに医学的なアプローチで真っ向から挑んでいる人です。

昨日の講座はもうのっけから超マニアックで、脳みそがフル回転で焦げ付きそうでしたが、大まかに私の脳みそが理解した内容は以下のようなものでした。

披裂軟骨の上部にくっついてる小角結節、そこを起点に喉頭蓋に走る披裂喉頭蓋ヒダ、そしてその披裂喉頭蓋ヒダの中間にある楔状結節。これらの「揺れ」がデスヴォの形成に重要な役割を果たしている可能性がある。

コチラのページからお借りしました。

デスヴォの種類

デスヴォイスには大きく2つの出し方がありまして、フォルスコードとフライという2つの名称がついています。

フォルスコードとは仮声帯のことで、この仮声帯が接触して振動していることから、フォルスコード(仮声帯の)・スクリーム(叫び)などと呼ばれます。

フライは揚げ物のパチパチした感じの音の印象からつけられたらしく、この発生のときは仮声帯は振動していません。

2つの名称が、ひとつは振動体から、ひとつは音の印象からつけられているという時点で、なかなか混乱してる感じ伝わってきますよね。

こういうジャンルの人って基本バイブスで生きてるんで、定義付けの曖昧さとかどうでもいいんですよね。ジャンルとかの定義も人によって違ったりして、いまいち釈然としません。

それで、こういう混乱した状況をなんとかしたいというのもいわおさんの目的のひとつなのだと思います。

なので、私がここで書いているのも、あくまでもいわおさんの見解を私が解釈したものだということを付言しておきます。(なんかいつもこんな事言ってるような笑)

私フォルスコードに関しては結構実感としてピンときてて、ようはカルグラと同じような仕組みなので、やり方分かる感じなんですね。

ところがフライについては、いわゆるヴォーカルフライ(エッジヴォイス)を音程上げていくとか、いまいちよくわからんことしか言われてなくて、全然できる気がしませんでした。

そもそもヴォーカルフライとエッジヴォイスって同じなの??それもよくわからん。フライが音印象からきた命名で、エッジは振動部位っぽいけど多分それも感覚的なもんだと思う。昨日質問すればよかった笑

私の理解では、ヴォーカルフライとかエッジヴォイスとかって、輪状甲状筋(CT)も甲状披裂筋(TA)も脱力した状態で外側輪状披裂筋(LCA)のみが働いてる状態なのだから、そこから音程上げていったらTAが入って普通の声になるだけなんじゃねえの?って思うわけです。

それで、今回のいわおさんの説明では、披裂喉頭蓋ヒダが共鳴腔として生体に影響を与え、声帯の正常な振動を妨げた結果ノイズが発生しているのかもしれない、ということでした。共鳴腔が声帯振動そのものに影響を与えるというのは普通のボイトレ業界でも言われていることで、共鳴腔を操作することで、声帯がうまく振動できるようにするのが、いわゆる普通のボイトレアプローチです。

フライスクリームをやるにはつまりそれの逆をやると。

共鳴腔を操作し、声帯振動がうまく「いかないように」する。バグを起こさせることでノイズを作る。

私にとってはこの説明のほうがよほど納得がいきます。

やっぱり私理系の人間なので、理解できないとできる気がしないんですよね。

まあ今回も理解できたかという意味では「謎が深まった」という方が正しいですが笑、声帯と仮声帯で全部説明しようとする従来の考え方で止まっていたことから考えればすごい進歩だと思う。

デスヴォの分類

今回の講座では今まで知らなかったことがいっぱい知れたのですが、そのひとつがデスヴォイスの分類についてです。

大まかには上記のフォルスコードとフライなのですが、このそれぞれに「スクリーチ」「スクリーム」「グロウル」「ガテラル」など、音高や倍音の構成(音色)の変化をもたせることで、分類してるそうです。

今までグロウルやガテラルはフォルスコードで、スクリーチやスクリームはフライだと思ってのですが、フライ・ガテラルもあるし、フォルスコード・スクリーチもある、ということなのだそうです。(まあこの分類も人によるそうですが・・・)

それから、フライとフォルスコードは行き来できなくない。むずいけど。

あと、フォルスコードは脱力系だけど音でかい。フライは緊張系だけど音小さい。そして燃費がいい。。

それで、まだまだわからないことがたくさんあるので、ここに書いておこうと思います。


1.フォルスコードスクリームとカルグラの違いは?

これは昨日質問したのですが、結局良くわかりませんでした。ただ、講座後に以下の動画をいわおさんに送って、5’20あたりの音声の解説を頂いたところによると、カルグラの音にブレがある瞬間、披裂喉頭蓋ヒダが揺れてる。つまりカルグラのときは披裂喉頭蓋ヒダは揺れてなくて、フォルスコードスクリームのときは揺れてる。その、差なのかもしれない。。。。

2.吸い(インヘイル)の時にノイズになりやすいのはなぜか。

これに対するいわおさんの答えは、吸いで声帯を正常に振動させることになれていないから、バグが起こりやすいのではないか、ということでした。
うむ。それもあるけどそれだけじゃないような、、、、。
私吐き(エクスへイル)のフライって苦手なんですけど、吸いだと簡単にノイズ入れれるんですよね。謎い。

これとかそうです。これは以前徳久さんのワークショップに行ったときの音声です。吸いのノイズと普通のボイトレのアルペジオ練習を交互にやってます。
このときの記事はコチラ

3.仮声帯接近の例で出される、平泉成やお相撲さんの声の感じが、音声からも、発声体感からも、フォルスコードやカルグラとかけ離れすぎている。

いわおさんいわく、確かに平泉成は仮声帯接近しているが、他の要素がフォルスコードとかけ離れているからそう感じるのではないかということ。
私の今の感覚だと、平泉成はどちらかというとフライスクリームの感覚に近いんですよね。
このあたりも今後検証していきたいところ。

何しろ内視鏡やMRIで実験したい。
いろんな声で、いろんな人で実験したい。
わからないことだらけです。


こちらの動画は講座後にいわおさんがシェアしてくださった動画です。
上の私の音声、これの6’40あたりに出てくるPig squealに似てると思うのですがいかがでしょう?Pig squealは舌と鼻腔を使って倍音を操作してますが、私はしてません。そこの差はあるのですが、原音レベルではかなり近いと思います。
これ見ると振動してるのは声帯だし、披裂喉頭蓋ヒダも揺れてないように見えます。

いや、ほんと自分どこへ向かってるんだって思いますが、なにしろ言えるのは楽しかったし、手応えがあったってことです。

またひとつ、声の神秘に近づいた。

むしろ謎は深まったって、それはそうなんですが、私にとって「圧倒的なわからなさ」というのは「圧倒的面白さ」と同義なので。

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