倍音唱法と基音唱法

倍音唱法と基音唱法

また思いつきで発声のことを書いてみます。

「カウンターテナーとテナー(テノール)の違いとはなんぞや」

僕らみたいにクラシックの歌い手の中でもちょっと特殊な業種、つまりいろんなパートを歌うことのある人たちにとって、この問題は結構頻繁に話題になるところです。


一般的な答えその1「音域の差やろ?」

そうですよね。まあ割とあたってると思います。

ただ特にアンサンブルの分野ではそれほどの差はないんです。

アルトでもF3とか出すことはよくあるし、テノールでも特にバーバーショップのレパートリーなんかはD5くらいまで出てくるし。

更に、私が専門にしている古い教会音楽の場合、現代のアルトにあたるコントラテノールとテノールの音域はだいたいほぼ一緒です。

このジャンルの場合この2つの声部の違いは、音域の違いというよりは「役割の違い」で、それはコントラテノールというの名前にも現れています。軸になるテノールに「対する」パートということです。


一般的な答えその2「裏声か地声かの差やろ?」

これも確かにその通りなんだと思いますが、さらに問題となるのは、裏声って何?地声って何?ということです。

一応僕の学んでるメソッドでは、「そんなもんネー」ってことになってます。

あるのは「裏声/地声的発声感」と、「裏声/地声的に聞こえる声」であると。

音楽の中では、本人がどう感じているかはさておき、どう聞こえるかが問題になると思いますので、話題にしたいのは後者になります。

では「裏声/地声的に聞こえる声」とは何か。

これまで僕は発声に関わる筋肉、すなわち甲状披裂筋と輪状甲状筋のバランスによって引き起こされる、発声時に接する声帯の厚みの差に起因する喉頭原音に含まれる倍音の違い、と説明してきました。

ようは声帯を厚く使うか、薄く使うかということです。厚く使うと倍音を豊かに含む原音になるので地声的に、薄く使うと倍音が減るから裏声的に聞こえるというわけです。

ただ最近、この声帯の厚みの差にだけ注目していると、必ずしも「カウンターテナーとテナーの差」を説明できないんじゃないかと思うようになりました。

カウンターテナー歌手でも結構声帯厚く使う人もいるし、テナー歌手でも声帯かなり薄く使うことは結構頻繁にあるんですね。

あとは歌ってる実感としても、やればやるほどテナー的な発声とカウンター的な発声が近寄っていって、なんだか結局目指しているところは同じなんじゃないかと感じるようになってきました。


第3の答え「カウンターテナーは基音唱法、テナー(テノール)は倍音唱法である?!」

それで最近思うようになったのは、カウンターテナーとテナーを分けるのは、「喉頭原音レベルでの差ではなくて、共鳴腔の状態の差」の方が大きいのではないかということです。

ここで登場するのが、「歌声フォルマント」と「フォルマント同調」という術語です。

これらについては小久保先生のブログにキッチリ書かれているのでこちらをご参照下さい。

歌声フォルマントについてhttp://www.voicetrainers.jp/blog/mixvoice/1995.html

フォルマント同調についてhttp://www.voicetrainers.jp/blog/mixvoice/2898.html

僕が最近考えているのは、カウンターテナーとテナーの差は、ボリュームを出すために強調する音の音域の差なのではないかということです。

この2つの声種は、音色が違いますよね。程度の差はあれ。この人はカウンターテナー、あるいはテナーだなって判断する基準は音色によるところが大きいと思います。

音色が違うということは、出ている倍音の構成が違うということですよね。

カウンターテナーは(音域や個人差もありますが)第1フォルマントと基音を一致させる、フォルマント同調という現象を使うことで、基音を強めます。

倍音はあまり強調されないので、どちらかというとまろやかな、裏声的に聞こえる音色になります。

それに対してテナーはフォルマント同調は基本的に使いません。

ではどうやってボリュームを稼いでいるかというと、「歌声フォルマント」を強調しているのです。

歌声フォルマントとは3000Hz付近の倍音帯のことで、これを強調すると、基音がそれほど強くなくても、人間の耳に聴き取りやすい音になると言われてます。

凄く遠くで歌っているのに、まるで耳元で歌っているかのように聞こえる。優れた歌手の演奏を聴いて、そういう体験をされたことのある方も少なくないのではないでしょうか。

これが歌声フォルマントを強調することによる効果です。

倍音を強調しているので芯のあるような、地声的に聞こえる音色になります。

どうやって強調するかというところについては、喉頭蓋の調節ということになるのですが、これはまあおいおいというか、レッスンに来てください笑


つまるところ、フォルマント同調によって基音を強調したのがカウンターテナー、喉頭蓋の調節によって(3000Hz帯の)倍音を強調したのがテナー。

これが、カウンターテナーとテナーの差なんではないか、というのが今のところの僕の見解です。

もちろん実感からくる推論という側面が強いので、来年には全然違うことを言ってるかもしれません。

そうなったらまたこのブログで正式にお詫びします笑

はい。というところで、ここでやっとこのブログのタイトルについて説明できます。

倍音唱法というと、ホーメイやホーミーなど特定の倍音を強調しながら倍音で旋律を奏でる歌い方のことを指しますが、「特定の倍音を強調する」という意味では、テノールって倍音唱法じゃね?!

それに対してカウンターテナーは基音を強調するから基音唱法なんじゃね?!

っていう半分冗談のタイトルでした。

基音唱法なんてのは私が作った造語なので多分そんなものは存在しないです(私の知る限り)。


ポップス系の発声を学ぶようになって、クラシックの声種とか、音域に対するイメージが随分変わってきました。

最後に、先日小久保先生に教わったR&B界のバスバリトンをご紹介します。

Luther Vandross

https://youtu.be/Gu2JBMNBbKo

僕はこれを聞いてかなりカルチャーショックでした。

声種とか、声に対するイメージとか、もう、ほんと、なんなんでしょうね。

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Salicus Kammerchor

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アンコール→サリクス

アンコール→サリクス

今日はヴォクスマーナ伊左治定期のリハからのサリクステノールパート練でした。

(今日は机の上をメインに撮ってみました、絵変わりがしなくて退屈かと思って笑)


なんでかわかんないんですけど伊左治さんの曲を沢山やっていると物凄く疲れます。

今まで単品でやっていた時は全く思わなかったのですが、13曲並べるとなると相当大変だということがわかりました。

集中力が必要な、つまり綿密に練られた作品であるということもあるんでしょうけれど、単純にテノールには休符が少ないような気がします笑

つらい笑


ところで、いまだかつて、

「アンコールピースを新曲委嘱初演して、そのアンコールピースだけを集めたプログラムで演奏会をする」

という試みがなされたことはあるのでしょうか?

実は世界初なんじゃないかな、このクレイジー企画。

ヴォクスマーナとしては伊佐治さんのアンコールピース初演というのは毎度のことで、当たり前のようになっているけど、そもそもアンコールを新曲でやるということ自体なかなか奇特な発想ですよね笑

ここにも書きましたが。



(昨日見てた資料です。やっぱ立奏なのかな)

今日からいよいよ、サリクスのリハーサルが始まりました。

今回からパート練習を事前に組むことにしまして、今日はテノールのパート練習でした。

私のリハーサルは基本はひとつひとつ、全てのパートの全ての箇所をこうやってーって歌うので、初めからパート練習にした方が効率がいいと判断したのでした。

なぜそういう練習になってしまうかというと、歌うのが一番てっとり早いからです。そしてどんな細かいところでも、無意識に歌って欲しくないからです。

だから結局全てのパートの全ての箇所を歌うことになってしまいます。

もちろん効率は悪いと思います。カンタータクラブのように潤沢な練習時間があるわけではないので。ロ短調ミサの全てのパート全ての箇所を歌うリハーサルなんて、カンタータクラブ以外ではできません笑
今回のテノールは、金沢青児、佐藤拓、沼田臣矢の3人です。

(あ、やべ、写真撮り忘れた、こ、ここにプロフィール写真ならあります!)

いやーテノールはほんとに人材が豊富でありがたいです。

みんなほんといつものメンバーなので、私の言うこともわかってくれます。

多分私がやってるようなリハを普通の声楽家の人が体験したら、キレて逃げると思います。

ほんとにありがたい。

それにしてもバッハのテノールは鬼畜です。(稲葉浩志ほどではないにしても笑)

テノールに声種変更してからより身につまされちゃってほんともう泣けるヽ(;▽;)ノ

でも、自分には絶対実現不可能なことでもジャンジャン要求するよ!指揮者ってなんて素敵な職業なのかしら!( ̄◇ ̄;)

ほんと、みんな嫉妬するくらい、え?こんなこともできるの?じゃあこれは?え?これもできるの?じゃあもっとこうして!

いやはや、人間は欲深い笑

みんなほんと凄いです。ぜひ聴いていただきたいな。

演奏会詳細

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