カペラスラファセ千秋楽!

今日もカープはぼろ勝ちでしたね。

私たちはどうでしたでしょうか。
三回公演、しかも三日連続ということで、不安もありましたが、やはり3日目は流石の演奏になりました。
カープじゃないですが、前半神ってましたね。
これだけ全員が深いゾーンで歌ってるのは初めて見ました。
凄かった。出来過ぎでした。怖いくらい。
こんなスラファセ今までどこにもなかったんじゃないかと思うくらいでした。
録音が楽しみです。
前半良過ぎた分、後半は失速気味でしたが。
そこは3連戦の諸刃の剣、疲れもありましたね。
もうヘトヘトです。
明日からまたヴォクスマーナです。
それから明日は古楽のマーケティング講座にも参加します。
芸術家の生きやすい世のために、、、(笑)
ーー・ーー・ーー・ーー
大久保といえばベトナムちゃん。
安定のネタビール、ビエール・ラ・リューをおともに。
{B03FDA06-008C-488A-A1A1-AB007F758BFC}
ーー・ーー・ーー・ーー
主宰団体Saclicus Kammerchorのホームページはコチラ
演奏動画はコチラ
特典充実!
――・――・――・――・――
櫻井元希へのお仕事のご依頼は以下のメールアドレスまで。
g.sakurai.office@gmail.com
発声・歌唱指導、合唱指導等承っています。
詳細はコチラをごらんください。
無料の音楽お悩み相談室についてはコチラ

ヴォクスマーナ 山根明季子/渋谷由香作品

今日、この夏初めて帰ってきてすぐシャワーを浴びました。
アツがナツイぜ!!

ーー・ーー・ーー・ーー

7月29日のヴォクスマーナの演奏会で初演する二作品の作曲家の方が昨日の日経新聞夕刊で紹介されました。

ーー・ーー・ーー・ーー山根明季子

山根さんは、先日リハーサルにおいでいただいた時も、「私テクスチャーオタクなんです!」と仰っていました。
とても無邪気で純粋で正直で、チャーミングな方でした。
またテクスチャーもさることながら、1つ1つの音の質感にも相当拘りがあるようでした。音から滲み出る自然な感情、ニュアンス、手触りのようなものを感じていただける作品なのではないかなと思います。
今回の作品はお名前コレクションNo.2ということで、人の名前がテーマになった曲です。

あまり詳しくは言えませんが、あなたのお名前が曲中に呼ばれるかも?!

山根明季子さんのホームページ↓

ーー・ーー・ーー・ーー
渋谷由香
渋谷作品には私は乗っていませんが、先日リハーサルを見学したところ、なかなかとんでもない曲でした。
いえ、サウンド自体はそれほど刺激的衝撃的な感じではないんです。
どちらかというと耳に優しく聴きやすい曲だと感じました。
ところがよくよく聴いてみると、こ、、これはエグい!

四分音のオンパレードです。

四分音というのは半音のさらに半分の音程で、例えばシとドの中間の音とかです。
私も湯浅譲二先生の作品やクセナキスの作品で四分音の作品を演奏しましたが、歌でこれを正確に表現するのはなかなかの重労働です。
四分音キーボード欲しいとマジで思います。
しかも私が演奏したクセナキスの「夜」のような曲であれば、ほとんどクラスターのような感じで、ミスがあっても多分普通の人には全く気付かれないと思いますが、今回の渋谷さんの作品のように、一見聴きやすい音の組み合わせ、つまりハモらないといかん曲の場合はミスったらすぐバレます(笑)
リハーサルも当然、超シビアにならざるを得ません。
凄い曲です。
聴いてる方としてはそんな苦労はわからない、美しい曲なんですけどね。
聴き手に伝わらない(伝わりづらい)工夫、という点では古楽、特にフランドルのポリフォニーやバッハの隠された数象徴なんかに通ずる部分があります。
もっとも四分音は、よく聴けばわかりますし、それが微細なニュアンスを表現しているのを感じ取ることができます。
微細な表現と言えばインド音楽。今朝見つけた動画を貼っておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=QKIEUIM4Wf4&feature=youtu.be最初はひょっとしたら退屈に感じるかもしれませんが、5分も聴いているとその異常なまでの繊細さ、旋律、細かい息遣いへの心配りに胸打たれます。

ーー・ーー・ーー・ーー

ヴォクスマーナ第35回定期では以上の2作品に加え、以前ヴォクスマーナが委嘱初演した2作品、大熊夏織さん、小出稚子さんの作品も演奏します。

委嘱した作品を1回きりにせず、再演しているところがヴォクスマーナの素敵なところの一つです。一体どれだけの作品が、1度演奏されたきり闇に葬り去られていることでしょう!

再演する作品は、再演されるだけあって、再演する価値のある作品です。
この2作品についてはまたいずれ・・・。

ーー・ーー・ーー・ーー

ヴォクスマーナ第35回定期演奏会
創団20周年シリーズVol.1 未来を担う女性作曲家

image

2016年7月29日(金)19:00開演 東京文化会館小ホール
渋谷由香(b.1981)
「黒い森から」 12声のための(委嘱新作・初演)  詩:佐峰 存
山根明季子(b.1982)
お名前コレクション No.02 (委嘱新作・初演)
小出稚子(b.1982)
春宵感懐 (2013委嘱作品・再演)  詩:中原中也
大熊夏織(b.1987)
空を泳ぐ(2015委嘱作品・再演)
指揮:西川竜太
チケット(全席自由)
一般:3,000円(当日3,500円)
学生:1,500円

高校生以下:1,000円

ーー・ーー・ーー・ーー

ヴォクスマーナは、活動を支援してくださる会員を募集しております!

会員について書いた記事はコチラ↓
http://ameblo.jp/carcass1031/entry-12177580471.html
(是非読んでください↑)

【定期賛助会員】
年額 1年3公演分
■会費
年間 一口 ¥20,000
■特典
各公演のチケット1枚 (座席指定) を贈呈
各公演のプログラムにご芳名を掲載
各公演のプログラムを贈呈
各公演のCDを贈呈
【新曲委嘱活動支持会員】
各公演ごと
■会費
第35回 一口 ¥10,000
■特典
公演のチケット1枚 (座席指定) を贈呈
公演のプログラムにご芳名を掲載
公演のプログラムを贈呈
委嘱新作の楽譜を贈呈
公演のCDを贈呈
こちらのページからお申し込みいただけます↓
http://vox-humana.wix.com/vox-humana

ーー・ーー・ーー・ーー
主宰団体Saclicus Kammerchorのホームページはコチラ
演奏動画はコチラ
特典充実!
――・――・――・――・――
櫻井元希へのお仕事のご依頼は以下のメールアドレスまで。
g.sakurai.office@gmail.com
発声・歌唱指導、合唱指導等承っています。
詳細はコチラをごらんください。
無料の音楽お悩み相談室についてはコチラ

ヴォクスマーナ「武士は食わねど…」

今日も朝からヴォクスマーナのリハーサルでした。

{98D4717E-77EE-4328-99B4-7C14C43DEBE8}

代表の初谷さんと小野さん

{3FD5F5AF-B241-4D36-94A5-C05F6B27937C}

テノールの清見さん。昨日お子さんが生まれたそうです。おめでとうございます!

{511B65CF-3E95-40BA-8273-D51045114111}

歌っているのは神谷さん。カンタータクラブの先輩でもあります。

ーー・ーー・ーー・ーー
ヴォクスマーナってとにかくすっごい練習するんですね。
やっぱりってる曲が大変だからしょうがないといえばしょうがないんですけど。
(更にいえばオリジナル楽譜を使って演奏するカペラも沢山練習が必要です)
コスパの悪い商売です(笑)
ちょっと練習すればできて、しかも演奏効果の高い曲なんて他にいくらでもあるのに。なぜ茨の道を行くのでしょうか(笑)
まぁ、それだけの価値があるから、としか言いようがないですね。
ヴォクスマーナなんて、みんなノーギャラです。ボランティアです。それどころか交通費も出ません。
14回練習があって、本番合わせると15回分の往復交通費をメンバー一人一人が負担しています。
往復1000円だとしても15000円持ち出しです。
そして本番当日を除いて、練習時間50時間。本番の拘束時間は6時間程ですので、56時間。
その時間時給1000円のバイトに充てられたとしたら56000円です。
つまりヴォクスマーナやらずにバイトしてれば、マイナス15000円がプラス56000円になったわけなので、ヴォクスマーナをやることによる経済的損失は71000円ということになります。
貧乏音楽家にとってはナカナカの額です。
しかもそれが今回の場合14人分です。
でもみんな、それだけの損失を被っても補って余りある価値をそこに見出してるから、やるんですよね。
ヴォクスマーナの魅力、それはなにより最先端キレッキレの現代音楽をやってるということです。
生まれたての新曲を、まだ誰も聞いたことのない音楽を、自分たちの手で形にする。
やりがいは凄いです。
20年にわたる活動の中で、委嘱初演した作品なんと83作品。
信じられない数だと思いませんか?
その全てがホームページにまとまっています。
こういう活動をやっているプロの声楽アンサンブルは、日本には他にありません。
ーー・ーー・ーー・ーー
武満徹がポップスかなんかの作曲家に、
「お前が舳先で水を切ってるから一等船室の俺たちがくつろげるんだ」
みたいなこと言われたらしいですけど、何その上から目線(笑)
武満でさえ50代まで翌月の生活費の心配をしていたそうです。
「何も買ってやれないから、今日から僕煙草やめるよ」
武満は対談集なんかも含め、著作の多い人で、遺した名言は数知れないんですが、その中で僕の一番好きな言葉です。
あと、
「夫婦喧嘩をしてるときには、楽譜をひとつも書けない」
も好き(笑)
そう、舳先で頑張ってる人は大抵貧乏です。
舳先にいるっていう矜持があるんで、武士は食わねど高楊枝でやってますけど、でも生活できなかったら活動できないんですよね。
歌なんか特に、体が資本ですから。
ーー・ーー・ーー・ーー
なので、もしこのブログを見て下さっている方で、こういう活動を応援してもいいよ!って方がいらっしゃったら、是非【定期賛助会員】、【新曲委嘱活動支持会員】になっていただきたいのです。
クラシックの演奏団体の場合、チケット収入だけで活動を維持するのは事実上不可能です。
皆様のお力が必要です。
定期賛助会員は年度単位なので、今お申し込みいただいても特典は来年度からになってしまいますが、新曲委嘱活動支持会員は公演ごとなので、今お申し込みいただくと、7/29の公演のチケット、プログラム、新曲2曲の楽譜、録音が特典となります。
全ての作品が出版されるわけではないので、楽譜を入手する機会というのはなかなか貴重です。
ご自宅でヴォクスマーナの演奏を楽譜を見ながらお楽しみいただけます。
(どこが間違ったとかもよくわかると思います(笑)(冷汗))
どうぞよろしくお願いいたします!
【定期賛助会員】
年額 1年3公演分
■会費
年間 一口 ¥20,000
■特典
各公演のチケット1枚 (座席指定) を贈呈
各公演のプログラムにご芳名を掲載
各公演のプログラムを贈呈
各公演のCDを贈呈
【新曲委嘱活動支持会員】
各公演ごと
■会費
第35回 一口 ¥10,000
■特典
公演のチケット1枚 (座席指定) を贈呈
公演のプログラムにご芳名を掲載
公演のプログラムを贈呈
委嘱新作の楽譜を贈呈
公演のCDを贈呈
こちらのページからお申し込みいただけます↓
ーー・ーー・ーー・ーー
公演詳細はこちら
ヴォクスマーナ第35回定期演奏
創団20周年シリーズVol.1 未来を担う女性作曲家

{C4B4B44E-57D2-4FB6-BFC3-26579D0E83BE}

2016年7月29日(金)19:00開演 東京文化会館小ホー

渋谷由香(b.1981)
「黒い森から」 12声のための(委嘱新作・初演)  詩:佐峰 存

山根明季子(b.1982)
お名前コレクション No.02 (委嘱新作・初演)

小出稚子(b.1982)
春宵感懐 (2013委嘱作品・再演)  詩:中原中也

大熊夏織(b.1987)
空を泳ぐ(2015委嘱作品・再演)

指揮:西川竜太

チケット(全席自由)
一般:3,000円(当日3,500円)
学生:1,500円
高校生以下:1,000円

ーー・ーー・ーー・ーー
主宰団体Saclicus Kammerchorのホームページはコチラ
演奏動画はコチラ
――・――・――・――・――
櫻井元希へのお仕事のご依頼は以下のメールアドレスまで。
g.sakurai.office@gmail.com
発声・歌唱指導、合唱指導等承っています。
詳細はコチラをごらんください。

カペラとヴォクスマーナ、ボイトレ

ここ最近、カペラとヴォクスマーナの時期が重なります。

振り幅が大きくて、生きてるなぁって感じします。
今朝は9時からヴォクスマーナ、13時からカペラでした。
そして夜は今日初めてのボイトレの方が2人!
どんな方をレッスンしても、1人として同じ声の人はいなくて、当たり前だけど、人体の神秘!感じます。
だからこそ合唱団でのボイトレは難しいんですが、、、。
それぞれ抱えている問題が違うのに、最大公約数的なことしか言えないのが辛い。
そしていろんな人がいるからいろんなことをやるけれど、そのどれに自分が当てはまるか、多分自分ではわからない方の方が多い。
だからほんとに声のことちゃんとやろうと思ったら、一人一人みるしかないです。
例え15分でもやる価値あると思う。
自分にどういう傾向があって、どういうエクササイズが必要か、だけでも伝えることができたらかなり合唱団自体のレベル向上になると思うんだけどなぁ。
ーー・ーー・ーー・ーー
ヴォクスマーナは今回テノールとして初めての本番です。
テノール沢山いるから声種変更したら呼ばれなくるかなぁと思っていましたが、ありがたいことに、テノールとして使っていただけることになりました。
ありがたやありがたや。
今回私は2曲にオンステします。
山根明季子(b.1982)
お名前コレクション No.02
小出稚子(b.1982)
春宵感懐 (2013委嘱作品・再演)
の2曲です。
金沢さんや初谷さんと同じパートというのがまだ全然慣れませんが、がんばります!
ーー・ーー・ーー・ーー
ヴォクスマーナ第35回定期演奏
創団20周年シリーズVol.1 未来を担う女性作曲家

{C4B4B44E-57D2-4FB6-BFC3-26579D0E83BE}

2016年7月29日(金)19:00開演 東京文化会館小ホー

渋谷由香(b.1981)
「黒い森から」 12声のための(委嘱新作・初演)  詩:佐峰 存

山根明季子(b.1982)
お名前コレクション No.02 (委嘱新作・初演)

小出稚子(b.1982)
春宵感懐 (2013委嘱作品・再演)  詩:中原中也

大熊夏織(b.1987)
空を泳ぐ(2015委嘱作品・再演)

指揮:西川竜太

チケット(全席自由)
一般:3,000円(当日3,500円)
学生:1,500円
高校生以下:1,000円

ーー・ーー・ーー・ーー
カペラは今度デュファイのスラファセやります。
言わずと知れた超名曲。
世俗曲を定旋律としたミサの最古のものとして、音楽史の授業で先生が1年に一度の口にする曲です。
デュファイが確立したとされる循環ミサの代表曲とも言われています。
相変わらずテノールと上2声の格差が凄いです。
{40057BE0-6FA4-4326-A674-885E86901F05}

みよ!この声部間格差!

上のパート(superius)が7段なのに対し、テノールは3段!しかもスッカスカ!スペリウスのギッチギチの音符が不憫に思えてくる、、、
しかもテノールの定旋律は全曲通じてずっとこれなので、ここさえ譜読みすれば、全曲の譜読み終了です。
テノールはこれを9回、いろんな速さでひたすら繰り返します。
それでこれだけ多様な音楽が生まれるわけですから、凄いですよね。
グロリア、クレドの上2声による長大なデュエットも聴きごたえ凄いです。
ーー・ーー・ーー・ーー
「スラファセパル」~デュファイの名作ミサ曲
{48F4664F-B0E7-45F3-B7DA-AEECB4392F56}
7月17日(日)午後4時 カトリック由比ガ浜教会
7月18日(月・祝)午後4時 小原記念聖堂(淀橋教会)【完売しました】
7月19日(火)午後7時 小原記念聖堂(淀橋教会)
superius 花井尚美 安邨尚美
contratenor 青木洋也 望月裕央
tenor 及川豊 渡辺研一郎
bassus 櫻井元希 花井哲郎 Maestro di Cappella=音楽監督チケット料金:4月22日発売[全自由席]
※会員優先席あり※学生券は、学生証を提示のうえお求めください
17日 前売:一般4,000円 ペア6,800円 当日:一般4,500円 学生:2,500円
19日 前売:一般4,500円 ペア7,800円 当日:一般5,000円 学生:2,500円

ーー・ーー・ーー・ーー
主宰団体Saclicus Kammerchorのホームページはコチラ
演奏動画はコチラ
――・――・――・――・――
櫻井元希へのお仕事のご依頼は以下のメールアドレスまで。
g.sakurai.office@gmail.com
発声・歌唱指導、合唱指導等承っています。
詳細はコチラをごらんください。

ヴォクスマーナ第34回定期演奏会終演

昨日ヴォクスマーナ第34回定期演奏会が終演致しました。

お越し下さった皆様、誠にありがとうございました。

(写真はちかよさんのフェイスブックから拝借いたしました)

今回のプログラムは、なんというか直球勝負な曲ばかりで、小道具一切なし、ただひたすらにアカペラの12声の作品で、非常にストイックであったと思います。

どの曲も難易度もさることながら、みっちりとすべての瞬間に妥協のない、集中力のすり減る素晴らしい作品だったと思います。

私はのっていませんでしたが、
山本裕之(b.1967)/ 水の音
はほんとにキチガイ(最大の賛辞)な曲で、「うわーまじかーーおわーーーやばっ、えーーー」っていう展開が連続する作品でした。
テキストは分解されていたものの、良く知られた芭蕉の句でしたので、今全体のどのあたりにいるのかが良くわかって、それによって構成を感じる手掛かりになり、ある意味では聴きやすい作品でした。

近藤 譲 (b.1947)/ 「薔薇の下のモテット」12人の声のための
は、震災の年にヴォクスマーナが委嘱初演した作品で、私がヴォクスマーナで演奏した作品の中でも5本の指に入る好きな曲です。
(ちなみに1位はクセナキスの「夜」です。)
https://www.youtube.com/watch?v=jESS3gP1GGE
薔薇の下のモテットは、超複雑ですが、構造は分かりやすく「ハミングのセクションと、歌詞をポリテクスト(同時に別の歌詞を歌う)の部分とに分かれていて、それを2回繰り返す」というものであったので、これも聴きやすかったのではないかと思います。
大体ハミングで和音を重ねるというのは手抜きっぽい感じになっちゃうんですが、これだけただのハミングの和音進行に意味を感じられる作品もないと思います。

渡辺俊哉(b.1974)/ 「影法師」12声のための
渡辺さんは、広大でお世話になった徳永崇先生のお仲間だそうで(終演後に知りました)、現在藝大の和声の先生をやっていて、後輩(日野ちゃん)が授業をとっていたそうです。
作品は非常に繊細で、なんというか、本当に書いてあることを全部正確に音にしないと、何が何だか分からなくなっちゃう系の作品でした。少しでも乱れがあると、あっという間に意味の連関が断ち切られてしまって、ただの音の連続になってしまうと感じました。
ほんと、この曲が一番消耗しました。繊細過ぎて、ワレモノ注意的な、取扱い注意的な、天地無用的な作品でした。
ふーーっ、疲れた!
そうそう、この曲のテキスト、谷川俊太郎の「影法師」素晴らしいテキストでした。ほんと、無駄な文字が一文字もない、文字で空間がピタッととまるような完全さを思わされました。さすが、脱帽。

木下正道(b.1969)/ 「中心 / 記念すべき谺」ヴォーカルアンサンブルのための
木下さんの作品は7月の「書物との絆II」に引き続き2回目でしたが、相当パワーアップしてる感じでした。
というのも、本人が仰っていたのですが、より長く、より難しく、をひとつの目標とされたそうで、それはそれは長く、そして難しい作品でした。
おそらく聞いていた方にはわりと耳に心地よい作品だったと思いますが、演奏している方は血を吐く思いでした(笑)

そしてアンコールピース
伊左治直(b.1968)/ 雪
いつもながらあったかいけどでも緩みの無い、筋の通った作品だと思いました。
ちょっと前衛音楽に対するアンチっていうか、逆の反骨精神みたいなものを感じるというか、このご時世、しかもヴォクスマーナのような超前衛音楽の団体に、調性音楽を書くという事自体がかなり挑戦的だと思います。
でも、音楽ってある種、人間ってこういうとこあるよね?ていうのを切り取った一側面という風にも捉えることが出来ると思うんですけど、だから前衛っていうのがあり得ると思うんですけど、つまり新しい価値観を提示するというか、こういう面も人間にはあるじゃない?っていう問いかけだと思うんです。
ただ、そういう面だけじゃないよね?こういう面も相変わらずあるよね?っていうのが伊佐治さんの曲だと思うんです。ほんとに勝手な僕個人の解釈ですが(笑)

伊佐治さんのアンコールピース、今回で1ダースだそうです。それら全てを再演する演奏会が10月12日にあります。こちらも要チェックです。

――・――・――・――

僕は普段古楽をやっていますが、古楽といわれる音楽だって、その当時は前衛だったんです。

それで、いわゆる古楽的アプローチというのは、
「僕らの側からじゃなくて、その当時の作曲家、演奏家、聴衆にとってその音楽がどういうものだったのかっていうとこから音楽を捉えようぜ」
って言う事だと思うんですけど、それってまさにヴォクスマーナが新作を初演する態度と同じだと思うんです。

今回も5人の作曲家の方々と2回ずつ、共にリハーサルをするという幸運に恵まれました。

例えばバッハ、彼はほとんど常に自作自演してましたので、まさに作曲家と演奏家とのリアルタイムでの共同作業だったわけです。

事情はヴォクスマーナと一緒ですね。

それで今回も、ここはピアノって書いてあるけど少し大きめで、とか、テンポこのくらいだけどもっと遅い方がいいか、いや、テンポって言うか雰囲気がもうちょいcom motoで、とかそういう話をしながら作り上げていったわけですが、当然そういうやりとりがバッハと演奏者の間でもあったはずなんですね。
それが例え書き留められていなかったとしても、いや、書き留められていないことの方が圧倒的に多いと思いますが、そういったちょっとしたニュアンスの変更があったはずなんです。

そのやりとりを想像しながらリハーサルしていくことが、いわゆる古楽といわれるジャンルの音楽を演奏する醍醐味でもあるんです。

パート譜に、あるパートにはadagio、あるパートにはlento、あるパートにはa battutaなどと書かれている場合があります。それはそのパートの人が書き込んだという事もありますし、そのパートの人の傾向を読んで、バッハがあらかじめ書いたという事もあります。
面白いですよね。

「こいつ走るからmolto adagioってかいとこ」っとか思われてるわけです。

それを鵜呑みにして、通低だけmolto adagioで!ほかのパートはただのadagio!ってことにはならないですよね。and so onなわけです。

長くなりましたが、そんなわけで、僕が古楽と現代音楽をやってるのはあながち筋が通ってないわけでもないんだよ、という弁明でした。

いや、ほんと、すごいことですよ。作曲家が生きて目の前にいるということは。
「何度バッハが生きてたらなー、ちょっと電話して聞けるのになー」
と思ったことか。
ほんと、こういう仕事ができるのはあり得ないくらい贅沢なことです。

お客さんにとってもそうですよ。
考えてもみてください。
コンサートでバッハが自分の曲解説してるんですよ!
「この曲はねーー構想に4か月かかったんですよ、実際書いたのは10日だったんですけどね。ハハハ。」
とかね。
ほんと、凄いですよね。

――・――・――・――・――
主宰団体Saclicus Kammerchorのホームページはコチラ
演奏動画はコチラ
――・――・――・――・――
櫻井元希へのお仕事のご依頼は以下のメールアドレスまで。
g.sakurai.office@gmail.com
発声・歌唱指導、合唱指導等承っています。
詳細はコチラをごらんください。