なぜヘクサコルドでなければならないのか

動画を撮りました。

ワークショップでいつも話している内容ですが、こういう動画がYou Tube上にある価値はあるかなと思って撮りました。

ますますヘクサコルドが広まりますように!

もう私は必死です。血眼です。本当にこれ(ヘクサコルドの周知)を人生かけてやらなければならないと思ってます。

なぜか。私はアンサンブルがしたいからです。

1人で演奏するならこれを共有するまでもありません。自分だけわかってればいいからです。

でも私はアンサンブルがしたいので、私とアンサンブルする人がこの前提を共有してないと困るんです。

この前提(ヘクサコルド)を共有していれば、リハーサル時間は5分の1くらいに短縮できると思います。

逆にこれを共有していないと、リハーサルの限られた時間内で私がやりたいことを共有するのは不可能です。

だから私はやらなければならないのです。私自身のために。私がいい演奏をするために。

とはいえ半分くらいは諦めてます。この前提を共有した音楽家や音楽愛好家をある程度の数にするためには、人生は短すぎます。

500年後くらいに学習指導要領に「ヘクサコルド」という文字が載ったらいいなあというくらいの緩さで頑張っていこうと思っています。

実際ヘプタコルド(いわゆるドレミ)よりもヘクサコルドを先に学んだほうが絶対いいです。なぜならヘプタコルドはヘクサコルドから生まれたからです。ここには明確な先後があります。

まあ夢物語は置いておくとして(2523年の人!このブログ見てる!?!?)、現実的にはこれを教えられる人を増やさないといけないと思っています。

音楽家の方は是非ともそういう気概で取り組んでいただきたいなと思います。

そして愛好家の方は、ヘクサコルドを知った耳で、音楽家の演奏を聴いていただきたい。

「今日のバスの低い方のミはちょっと柔らかすぎやしませんか?」とか、「いやーテノールの高い方はみんなラみたいでしたな〜」とか言ってください。

文化はそのようにして育っていくのだと思います。

と、いうわけで、すでにたくさんの方にご参加いただいておりますワークショップですが、ますます多くの方に受講していただきたいなと熱烈希望しております!

第3回を下記の要領で開催いたしますので、ぜひともお申し込みください!

60名ほどで予定調整をした結果今回も11回にわけての開催となっております。チャンスは11回もあります!ぜひ!

お申し込みはコチラから↓
https://forms.gle/QCmgMB7zWtSg5fN37


私のワークショップを受けた方で、言わんとすることはわかるけど、結局どういう演奏になるんだい?って思ってる方きっとたくさんいると思います。

そういう方は是非こちらのコンサートにお越し下さい。

私もまだまだ道半ばでございますが、ビジョンは示せると思います。

お席に限りがございますので、お申し込みはお早めに↓

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdloXZzCnlSCq5sT2HqsBsCM6Cg4BEkJj5gfc24hYIOPcR1dg/viewform?usp=send_form

TOKYOジョスカン・フェスティバル2021

いよいよ今週末に迫りました。

今年没後500年を迎えるジョスカン・デ・プレを記念したお祭り。ジョスカン・フェスティバルです。

22日(金)にカテドラルでカペラの公演、23日(土)は大森福興教会でワークショップ、フリンジコンサート、Ensemble Salicusの公演、24日(日)はシンポジウムが開催されます。

準備がほんと大変( ´∀` )

私は22日のカペラ、23日のEnsemble Salicusに加え、フリンジコンサートではアラミレで出演します。

2日でモテットを18曲、レクイエム全曲、ミサの2楽章を歌います。

これは未だかつてないです。同一プログラム複数公演はよくありますが、違うプログラムでフルサイズのコンサート2つ+アルファ。しかも全部フランドルポリフォニー。計量記譜の過剰摂取です。

リハーサルもそれぞれに伴ってあるわけで、ここ最近ほぼ毎日ポリフォニー歌ってます。

こんな幸せなことないですよねえ。こんな風にして一生過ごしていたいですね。

とはいえ、昨日ひっさしぶりにバッハのカンタータのリハーサルに行ったら、やっぱバッハえええ!ってなりましたけどね笑


ヴォーカル・アンサンブル カペラ定期公演
ジョスカン・デ・プレ没後500年記念演奏会3
ヴィヴァ・ジョスカン!

カペラの公演はオールジョスカンプログラム、モテットを13曲演奏します。

10名で4-6声のモテットを歌います。声部が増減するのでそれぞれ降り番があったりするのですが、私は全乗りです。いつものようにいろんなパートを歌います。ソリもたくさんあります。ありがたいことです。

今回のプログラムの中で一番気に入っているフレーズがこちら

6声の壮大なモテットMiserereの一部分です。

単なる順次進行の下降形なんですけどね、痺れますよ、ちびりますよ。もうミラクルモーメント。

この3秒だけでもこの演奏会に来る価値があります。マジで。

2021年
10月22日(金)午後7時15分開演(午後6時15分開場)
※開演20 分前より音楽監督の花井哲郎による説明があります
東京カテドラル聖マリア大聖堂

https://www.cappellajp.com/concert


《Ensemble Salicus(アンサンブル・サリクス)コンサート》
ジョスカン追悼 ~ ジョスカン・デ・プレの死を悼む名曲たち

Ensemble Salicusの方は、目先を変えて、ジョスカンの死に際して作曲された作品を演奏します。没後500年の記念なので。

リシャフォールのレクイエム、アッペンゼラー、ゴンベール、フィンダース、そしてジョスカン自身によるモテットを演奏します。

もうそれは尊敬する大先生の死に際して作曲したものですから、それはそれは気合が入ってます。演奏する方も相当気合がいります。

これでもかと自らの持てるものすべてをぶつけてきます。ヘヴィです。

各所に散りばめられたジョスカンへのオマージュ、ジョスカンの技法に対するリスペクトからくる複雑な対位法。こちらもそれ相応の構えで臨まねばなりません。

最大7声を最大7人で歌います。

カペラより人数は少ないですが声部は多いです笑

完全OVPPの自在さとスリルをご堪能いただけるかと思います。

2021年10月23日(土) 午後6時開演(会場午後5時45分)
大森福興教会

https://choruscompany.com/seminar/tjf2021d/


フリンジコンサート

フリンジって今回初めて聞く単語なんですが、ファッション用語だそうです。

フリンジとは、ふさ飾りのことです。マフラーやストールの端、服やカーテンなどの端に用いられることが多い素材です。またアクセサリーなどにも使われ、秋冬のトレンドアイテムとなっています。ウエスタン、フォークロア、ヒッピー、ボヘミアンなどのスタイルが好きな方にはおすすめの素材です。

引用:https://fashion.dmkt-sp.jp/static/cont/id_FSWD5031

いや、わかんねえ。フリンジコンサートってなんなんだろう。とりあえず今回の内容としては、アマチュアグループが集まって、それぞれジョスカンのミサの一部やモテットを演奏します。

私が参加するのはヴォーカル・アンサンブル アラミレで、このグループでは多分5年くらいアンサンブルリーダーという形でお世話になっております。

コロナの影響で2回演奏会がとんでしまったので、今回2年ぶりの本番ということになります。Missa GaudeamusからSanctusとAgnusを演奏します。

アラミレはコロナ禍でも練習を途切れさせずにオンラインに切り替えて続けてきたグループで、最近本当にその成果が如実に現れてきています。

こちらもどうぞご注目ください。

日時 2021年10月23日(土) 午後1時~4時(開場午後12時45分)
会場 大森福興教会

私が参加しない、ワークショップ、シンポジウムも滅多にない内容です。あ、そういえばワークショップには音源を提供しました。私の録音が流れると思います。

以下のサイトに関連イベントがまとまっていますので、是非ご覧ください。

http://fonsfloris.com/josquin500/

改めてリモート合唱を考える

改めてリモート合唱を考える

4月から始めたリモートアンサンブル、リモート合唱について、少し振り返る時期が来たような気がしています。

アマチュア合唱団の練習手段として、アマ・プロ合唱団の作品発表の機会として、様々な形で関わり、また他の方の話も聞き、作品にも触れてきました。

いずれにしても、最近思うのは、リモート合唱はリアル合唱の代替、廉価版、バッタモン、っていうのは違うんじゃないかなということ。

リモート合唱にはリモート合唱のロマンがあって、それはリアル合唱にはない。

違う種類の感動がある。

なんか、焦がれというか、そういう種類の。

リモート合唱で得るものが沢山あって、リアルの合唱にそれを活かそうっていうのも、もちろんあるけど、それって現代曲歌えるようになるためにルネサンスポリフォニーを利用するようなもんで、あるいはルネポリ歌うためにグレゴリオ聖歌を勉強するようなもんで。

それそのものの価値はまた別のところにある。

リモート合唱をリアル合唱のためのつなぎ、練習台、と考えるのはどうももったいないような気がする。

リモート合唱やった時のなんとも言えない何かを、気のせいだと思って、なかったことにする。ワクチンや治療薬が流通するようになったらみんなそうするのだろうか。

それとも、このなんとも言えない何かは、リアル合唱の中にもあったのだろうか。

5月末だか6月頭だかに、2ヶ月ぶりに電車に乗った時、電車って、こんなにワクワクする乗り物だったのか!って驚きました。

うわ、揺れる、動く、走る、はやーいって感動しました。

でもそれって、もともと電車に乗るっていうアクティビティの中に含まれていたものですよね。

そういう類のものなのだろうか、リモート合唱にある、なんとも言えない何かは、リアル合唱にもともとあったけれど、気がつけなくなっていたものなのだろうか。


また私たちが主にやっている音楽がいわゆる古楽と呼ばれる音楽ジャンルであるということもなかなか面白い。

“Remote” Ensemble Salicusでやってることが古楽なのか否か。

まずそれは古楽をどう定義しているかによります。

私としては「古楽」って1750年以前に作曲された音楽ってそのぐらいのことでいいのではないかと思ってます。

「古楽的」というとまた話が違ってきて、これは非常〜に曖昧かつキナ臭い言葉だから基本的には使わないし、使うときは「いわゆる古楽的」という使い方をしてます。

それはつまり作曲当時の演奏習慣を知ること(再現することではない)であったり、あたれる限り作曲者に近い資料にあたったりすることであったりするわけですが、それって別に1750年以前の音楽に限ったことではない。だからいわゆる古楽演奏家が古典派やロマン派の音楽を「古楽的アプローチ」と称して演奏するのが全然ありなの。

だけどそれって普通のことじゃない?

どんな音楽やるにしても、作曲者の意図を知ろうとすることは、単に音楽対して誠実であるかどうかという問題で。

まして古楽器で演奏することを「古楽的」だと勘違いしてる人もいるくらいだけど、それはそれで別の言い方がある。

「古楽器使用」

だから”Rmote” Ensemble Salicusにしてもなんにしても、与えられた条件で音楽に対して誠実に演奏しましょう。というのは誠実な音楽家であれば一緒ですよね。どんなジャンルの、どんな時代の、どんな地域の音楽であっても。

怪我の功名ってこともあって、先日関ジャムで宮本浩次さんが言ってたみたいに、不自由な、ネガティブなシチュエーションからすっげえ作品ができたりするんですよね。

それを面白がることができるか、今までと違うことを受け入れられるかどうか。

私は何か小さなもの、小さなことを、見過ごさないようにしたいと思ってます。目に見えないくらい小さくて、一瞬で過ぎ去って忘れてしまうようなこと。

人生を刷新するような出来事というのは、いつだってとても小さなことなのです。


11月には本当に久しぶりにSalicus Kammerchorとしてリアルの演奏会を開催します。

2011年3月、僕はもう二度と関東には戻ってこれないと思ってました。もう二度と、仲間たちと、バッハを演奏することはないだろうと、思ってました。

けどそうはならなかった。5月に再開して、カンタータを演奏したときのことを僕は一生忘れられないと思う。

その時から、今日が最後の日だと思いながら生きるという思いがより強くなったと思います。

毎日、もう二度と会えないかもしれないと思って「いってらっしゃい、いってきます」と言ってます。今も。

今回また別の形で私たちの日常が奪われて、311の時から今まで生きてきた自分が試されてるなと思いました。

あの時、自分はまだ海のようには生きられないと思いました。海容エチカってやつですね。

今の自分はどうだろう。あの時よりはましだろうか。

試される日々はまだ続いていますが、11月のカンタータ公演は一つの試金石になると思っています。

神様からの中間テスト。

あなたはいままでどんなに生きてきましたか?

こんなに生きてきましたよと、言えるような演奏をしようと思います。

https://www.salicuskammerchor.com/concert

エマルシオンワークショップ|終了

エマルシオンワークショップ|終了

昨日、emulsionの3連続ワークショップの3回目、グレゴリオ聖歌とフランドル・ポリフォニーのワークショップが終了いたしました。

ご参加くださいました皆様、誠にありがとうございました。

今回受講者が約60名ということで、普段のサリクスのワークショップに比べかなり大規模で、初めてパワーポイントのスライドを使いました。

実は今までパワポの使用を極力避けて通ってきたところがありまして、今回ほんと物心ついてから触るの初めてという感じで、新鮮で面白かったです。

個人的にフランドル・ポリフォニーと全く無関係のテンプレの扉がお気に入り。

今回制限時間が2時間で、その間でグレゴリオ聖歌とフランドル・ポリフォニーと更にミニコンサートまであったので、私の持ち時間は40分でした。
その意味でもパワポ使って時短でお話しできてよかったかなと思います。

サリクスのワークショップはほぼ古楽のファンの方が来てくださるのですが、今回の受講生の方は、合唱の方がほとんどだったと思うので、古い音楽の魅力に触れる機会になったとしたらうれしいです。

今回取り上げた作品が、ジョスカン・デ・プレのミサ〈フェラーラ公エルコレ〉のサンクトゥスの2つ目の部分、”Pleni sunt caeli”だったので、昨年カペラで作った動画を少しお見せして、クワイヤブックでの演奏のイメージをつかんでいただきました。

参加してくださった方々にリンク送れたりすればよかったですが、できなかったのでここに貼っておきます。

カペラの公演はちょうど来週なので、興味を持ってくださった方はぜひ15日にカテドラルにお越しください。
http://www.cappellajp.com/


また、グレゴリオ聖歌の動画も見たみたいという方もいらっしゃいましたので、Ensemble Salicusで演奏した動画も貼っておきます。

特殊ネウマの歌い方、このころからちょっと変わってるからまた動画作りたいなあ。

今回興味持ってくださったかたが古楽院やサリクスのワークショップに来てくださったらとてーも嬉しいです。

フォンスフローリス古楽院→http://www.fonsfloris.com/k/2020tokyo.html

サリクスワークショップ→ https://www.salicuskammerchor.com/workshop

さらには合唱団エレウシスの仲間が増えるともーっと嬉しいです。

合唱団エレウシス→https://00m.in/tpMkr


さて、エマルシオンの演奏会は来月2月6日の二郎の日です。

信じられないほど盛りだくさんなプログラムです。

沢山の皆様のご来場をお待ちしております。

――・――・――・――・――

Salicus Kammerchor

――・――・――・――・――

J. S. バッハのモテット全曲録音CD完成!

ウェブ販売を行っております!

https://salicus.thebase.in/

――・――・――・――・――

演奏会情報

次回演奏会は

https://www.salicuskammerchor.com/concert

――・――・――・――・――

サリクス通信

サリクスの最新情報や、ここでしか読めない特集記事を配信しています。

http://www.salicuskammerchor.com/mail-magazine-1

――・――・――・――・――

櫻井元希へのお仕事・レッスンのご依頼ご相談、チケットのお求め等は以下のフォームよりお気軽にお問い合わせください。

ヴォクスマーナ第34回定期演奏会終演

昨日ヴォクスマーナ第34回定期演奏会が終演致しました。

お越し下さった皆様、誠にありがとうございました。

(写真はちかよさんのフェイスブックから拝借いたしました)

今回のプログラムは、なんというか直球勝負な曲ばかりで、小道具一切なし、ただひたすらにアカペラの12声の作品で、非常にストイックであったと思います。

どの曲も難易度もさることながら、みっちりとすべての瞬間に妥協のない、集中力のすり減る素晴らしい作品だったと思います。

私はのっていませんでしたが、
山本裕之(b.1967)/ 水の音
はほんとにキチガイ(最大の賛辞)な曲で、「うわーまじかーーおわーーーやばっ、えーーー」っていう展開が連続する作品でした。
テキストは分解されていたものの、良く知られた芭蕉の句でしたので、今全体のどのあたりにいるのかが良くわかって、それによって構成を感じる手掛かりになり、ある意味では聴きやすい作品でした。

近藤 譲 (b.1947)/ 「薔薇の下のモテット」12人の声のための
は、震災の年にヴォクスマーナが委嘱初演した作品で、私がヴォクスマーナで演奏した作品の中でも5本の指に入る好きな曲です。
(ちなみに1位はクセナキスの「夜」です。)
https://www.youtube.com/watch?v=jESS3gP1GGE
薔薇の下のモテットは、超複雑ですが、構造は分かりやすく「ハミングのセクションと、歌詞をポリテクスト(同時に別の歌詞を歌う)の部分とに分かれていて、それを2回繰り返す」というものであったので、これも聴きやすかったのではないかと思います。
大体ハミングで和音を重ねるというのは手抜きっぽい感じになっちゃうんですが、これだけただのハミングの和音進行に意味を感じられる作品もないと思います。

渡辺俊哉(b.1974)/ 「影法師」12声のための
渡辺さんは、広大でお世話になった徳永崇先生のお仲間だそうで(終演後に知りました)、現在藝大の和声の先生をやっていて、後輩(日野ちゃん)が授業をとっていたそうです。
作品は非常に繊細で、なんというか、本当に書いてあることを全部正確に音にしないと、何が何だか分からなくなっちゃう系の作品でした。少しでも乱れがあると、あっという間に意味の連関が断ち切られてしまって、ただの音の連続になってしまうと感じました。
ほんと、この曲が一番消耗しました。繊細過ぎて、ワレモノ注意的な、取扱い注意的な、天地無用的な作品でした。
ふーーっ、疲れた!
そうそう、この曲のテキスト、谷川俊太郎の「影法師」素晴らしいテキストでした。ほんと、無駄な文字が一文字もない、文字で空間がピタッととまるような完全さを思わされました。さすが、脱帽。

木下正道(b.1969)/ 「中心 / 記念すべき谺」ヴォーカルアンサンブルのための
木下さんの作品は7月の「書物との絆II」に引き続き2回目でしたが、相当パワーアップしてる感じでした。
というのも、本人が仰っていたのですが、より長く、より難しく、をひとつの目標とされたそうで、それはそれは長く、そして難しい作品でした。
おそらく聞いていた方にはわりと耳に心地よい作品だったと思いますが、演奏している方は血を吐く思いでした(笑)

そしてアンコールピース
伊左治直(b.1968)/ 雪
いつもながらあったかいけどでも緩みの無い、筋の通った作品だと思いました。
ちょっと前衛音楽に対するアンチっていうか、逆の反骨精神みたいなものを感じるというか、このご時世、しかもヴォクスマーナのような超前衛音楽の団体に、調性音楽を書くという事自体がかなり挑戦的だと思います。
でも、音楽ってある種、人間ってこういうとこあるよね?ていうのを切り取った一側面という風にも捉えることが出来ると思うんですけど、だから前衛っていうのがあり得ると思うんですけど、つまり新しい価値観を提示するというか、こういう面も人間にはあるじゃない?っていう問いかけだと思うんです。
ただ、そういう面だけじゃないよね?こういう面も相変わらずあるよね?っていうのが伊佐治さんの曲だと思うんです。ほんとに勝手な僕個人の解釈ですが(笑)

伊佐治さんのアンコールピース、今回で1ダースだそうです。それら全てを再演する演奏会が10月12日にあります。こちらも要チェックです。

――・――・――・――

僕は普段古楽をやっていますが、古楽といわれる音楽だって、その当時は前衛だったんです。

それで、いわゆる古楽的アプローチというのは、
「僕らの側からじゃなくて、その当時の作曲家、演奏家、聴衆にとってその音楽がどういうものだったのかっていうとこから音楽を捉えようぜ」
って言う事だと思うんですけど、それってまさにヴォクスマーナが新作を初演する態度と同じだと思うんです。

今回も5人の作曲家の方々と2回ずつ、共にリハーサルをするという幸運に恵まれました。

例えばバッハ、彼はほとんど常に自作自演してましたので、まさに作曲家と演奏家とのリアルタイムでの共同作業だったわけです。

事情はヴォクスマーナと一緒ですね。

それで今回も、ここはピアノって書いてあるけど少し大きめで、とか、テンポこのくらいだけどもっと遅い方がいいか、いや、テンポって言うか雰囲気がもうちょいcom motoで、とかそういう話をしながら作り上げていったわけですが、当然そういうやりとりがバッハと演奏者の間でもあったはずなんですね。
それが例え書き留められていなかったとしても、いや、書き留められていないことの方が圧倒的に多いと思いますが、そういったちょっとしたニュアンスの変更があったはずなんです。

そのやりとりを想像しながらリハーサルしていくことが、いわゆる古楽といわれるジャンルの音楽を演奏する醍醐味でもあるんです。

パート譜に、あるパートにはadagio、あるパートにはlento、あるパートにはa battutaなどと書かれている場合があります。それはそのパートの人が書き込んだという事もありますし、そのパートの人の傾向を読んで、バッハがあらかじめ書いたという事もあります。
面白いですよね。

「こいつ走るからmolto adagioってかいとこ」っとか思われてるわけです。

それを鵜呑みにして、通低だけmolto adagioで!ほかのパートはただのadagio!ってことにはならないですよね。and so onなわけです。

長くなりましたが、そんなわけで、僕が古楽と現代音楽をやってるのはあながち筋が通ってないわけでもないんだよ、という弁明でした。

いや、ほんと、すごいことですよ。作曲家が生きて目の前にいるということは。
「何度バッハが生きてたらなー、ちょっと電話して聞けるのになー」
と思ったことか。
ほんと、こういう仕事ができるのはあり得ないくらい贅沢なことです。

お客さんにとってもそうですよ。
考えてもみてください。
コンサートでバッハが自分の曲解説してるんですよ!
「この曲はねーー構想に4か月かかったんですよ、実際書いたのは10日だったんですけどね。ハハハ。」
とかね。
ほんと、凄いですよね。

――・――・――・――・――
主宰団体Saclicus Kammerchorのホームページはコチラ
演奏動画はコチラ
――・――・――・――・――
櫻井元希へのお仕事のご依頼は以下のメールアドレスまで。
g.sakurai.office@gmail.com
発声・歌唱指導、合唱指導等承っています。
詳細はコチラをごらんください。