今後の展望

今月はサリクスの第10回定期演奏会があります。

今回はグレゴリオ聖歌だけの演奏会ということで、

「西洋音楽の原点にして頂点」

というキャッチコピーを今更思いついたのですが、チラシに載せればよかったですね。

いつもサレガマパダミサとかでは一人で歌ってるところ、より本来的にみんなで歌えるという喜びを感じております。

特にキリエとかで交唱して最後tuttiになるところとか、やっぱこれよねって感じがします。

私がやってるあまりにも現代人には難しすぎるグレゴリオ聖歌の歌い方をみんなにやってもらっているので、そういう意味では超ハードルは高くて、これまでの中でも最もチャレンジングな企画であると思っています。

もう4回リハしましたが、徐々にグレゴリオ聖歌になっていっています。あと5回のリハで更に素晴らしいものになると思います。

特殊発声を要求される現代曲よりも歌い手にかかる負荷は大きいのではないかと思ってますが、その分より多くの人に聴いていただきたいという思いも強いです。

これからのサリクスの行く先を示す羅針盤となる演奏会になりますので、皆様ぜひ会場にお越しください。


Salicus Kammerchor第10回定期演奏会

「モノフォニー→ポリフォニー」vol.1
グレゴリオ聖歌 〜キリスト教の単旋律聖歌〜

日時・会場:
2025年6月23日(月)19時開演 日本福音ルーテル東京教会
2025年6月29日(日)14時開演 千葉市美術館 さや堂ホール

​チケットお申し込み:
https://t.livepocket.jp/t/salicuskammerchor10th


斉唱団

この演奏会のプログラムにも書いたのですが、今回合唱って1曲もなくて、全部斉唱なんですね。

なので合唱団じゃなくて斉唱団だなあと思ったのですが、これに相当する訳語ってなんなんですかね。

いやあchorはchorな気がしますね。日本語でいうと合唱の定義って「複数の人が複数の声部に分かれて各々の声部を歌う声楽の演奏形態」らしいのですが、chorって斉唱しててもchorだと思うなあ。

それで思いついたのは、斉唱団作りたいなあってことで、グレゴリオ聖歌しか歌わない合唱団ってことですね。

日本斉唱団とかどうですかね。多分日本に他にないと思うので。


いろんな階名で歌おう合唱団

それとは別に、いろんな階名でそれぞれの階名が生み出した合唱曲を歌う合唱団も作りたくて、まあいろんなといってもヘクサコルド、ヘプタコルド、ファソラ法がメインで、サレガマ(厳密に言うと階名ではない)もちょっと触れるくらいになるかと思いますが、それでもかなり面白いんじゃないかと思います。

インド音楽にも合唱という概念は基本的にないので、これも斉唱になるかと思います。

コエダイの企画でいろんな階名で歌おうワークショップを以前やったのですが、それを継続的にやって、ゆくゆくは演奏会もやってみたいなあという感じです。

ヘクサコルドで産業革命以前の西洋音楽を、ヘプタコルドで産業革命以後の西洋音楽を、ファソラ法でシェイプノート聖歌(Sacred Harp)をやるという感じですが、レパートリーはやっぱりキリスト教音楽でまとめようかな。その方が比較がしやすいだろうし。

ローリゼンとかウィテカーとかやっちゃおうかなあ。

ほんとうの意味で、階名の力を世に発信していける団体になるのではないかしら。


ヘクサコルドWS

来月から東京講座は2周目、京都講座は3周目に入ります。

ちょうどキリのいいタイミングなので、新しく始めようと思っている方は今がベストなタイミングです。

両講座とも2つの旋法を比べてみようということで進めていきます。

京都講座はムタツィオありで第1第6旋法を比較、東京はムタツィオなしです。

京都講座は日程決まってますが、東京の方は今調整中なので、間に合えば調整からご参加ください。

京都講座のチラシ、有田さんが素敵なのを作ってくださっています↓

お申し込みはこちらから↓

東京の方は相変わらず簡単なチラシですみません。

お申し込みはこちらから↓

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSesWlDzbuyYFQ44zzTcYQnzdnmDrxID-PFWAcO1-l2P4PwDoQ/viewform

東京講座は3周目(多分来年春以降)からは初級、中級、上級に分けようかなと思っています。

ほんとに初歩の初歩、6つのシラブルと音程を結びつけて覚える、というところで躓いている人が多いように見受けられるので、毎月初級講座やったほうがいいなと思いました。

初級:ムタツィオなし J-POPをヘクサコルドで歌ってみよう
中級:ムタツィオあり 2声のポリフォニー
上級:教本にないグレゴリオ聖歌も 4声のポリフォニー

こんな感じかなあとぼんやり計画しております。

失伝した西洋の歌を再創造して、その文化を根付かせるという気の遠くなるような活動をしておりますが、道筋はもう観えてますので、応援いただけると嬉しいです。

この道をどのくらいの速度でいけるか、私が生きているうちにどこまで進めるか、皆様の応援にかかっていると言っても過言ではございませんのでどうぞよろしくお願いいたします。

旋法とヘクサコルド〜歌と音楽に対する感受性を養うために〜

という題名で本を書いています。

以前このブログでも大島俊樹さんの「階名唱(いわゆる「移動ド」唱)77のウォームアップ集 」を紹介させていただきましたが、これのヘクサコルド版を書かねばならんという使命に駆られたからです。

大島さんの本はマジでゼロから読譜を始める人にとっても、また固定ドから脱却したい人にとってもめちゃくちゃ優秀すぎるテキストなので、もう全ての音楽(特に西洋音楽)に関わる人に手にとっていただきたいです。私自身大島さんからまとめ買いして、現在までに89冊売ってます笑

この本はドレミを学ぶのにこの上ないテキストだと思うのですが、調性音楽を前提としたコンセプトで書かれているので、旋法(教会旋法)の音楽のドレミ(Ut Re Mi)が学べる同種の本があればいいなと思ったのですが、どうもなさそうなのです。

無いなら書いてしまえ。むしろそれがお前の役目だと私の中の私が私の尻を叩きまして、誰に頼まれるわけでもなく執筆中しておるわけです。

大島さんの本くらいコンパクトで手に取りやすく、取り組みやすい本にしたいと考えているのですが、3章だての2章の途中ですでに42ページ、大島さんの本が32ページですからもうちょっと長すぎる笑。

しかし調性音楽は長旋法と短旋法の2種類しかないのに対し、旋法(教会旋法)は8つあるので、4倍位の分量になる分には許容しようかと思っています。

それで、序文なんか後回しにすればいいのに序文を先に書いてしまって、我ながら暑苦しい文章が書けたので、ここに紹介しようと思います。

これを読んで、この本完成したら買いたいな!と思った方はぜひ私を励ましてください。

今のところ出版社からお声はかかっていないので、出版関係の方は今がチャンスです。

お誘いがなければキンコーズで印刷します笑。


序文

 声と歌とを分かつものはなにか、音と音楽を分かつものはなにか。学校でそれを教わった記憶はなく、おそらく「それはセンスであり、センスは教えることができない」ということで片付けられていたように思う。

 筆者はそうは思わない。少なくとも歌を歌うために、音楽を理解するための重要なヒントを先人は我々に遺している。その最も基礎にあるのが階名(ドレミ)である。残念ながら日本を含む一部の国では、この最重要の基礎が誤解されて教えられている。すなわち音名と階名が混同されて教えられているのである。そもそもグイド・ダレッツォが階名を紹介するはるか以前から音名は存在しており、もし音楽を理解するのに音名で充分であるならば、あえて階名など考え出されるまでもなかったはずである。本文中で詳述するように、調性音楽であるならば、長旋法と短旋法の二種類の音階とその構成音の特徴を経験すれば済むはずなのに、音名で音楽を捉えようとするならば、異名同音を含めた30種類(旋律短音階、和声短音階を含めると60種類)の音階とその構成音の特徴を覚えなければならないのである。

 レにはレの、ミにはミの感触がある。楽譜から読み取って歌う際に「この曲はGes-Durだから第2音はAsで、長調の第2音の感じというのはこんな感じだから」というのは本当に手間と時間がかかる上に頭による理解が先立って音楽を感じ取るのにまたひとつ段階が必要になる。階名唱に熟達すると「レはレとして聞こえてくるのでレのように歌う」ということがごく自然に行われる。「レのように歌おうとする」までもなく「レでないように歌うことのほうが難しい」と感じるようになるのである。

 それが自然と和声感、調性感を生むのであって、それらの実現のためには和声や調性を学ぶ必要はない。ただ、階名で歌えばいいのである。

 以上は調性音楽における7音による階名(ヘプタコルド)についての話であるが、調性音楽成立以前の音楽は(教会)旋法によっており、その時代には6音による階名(ヘクサコルド)が用いられていた。よく似たシステムに思えるが、実践してみるとその違いを明確に感じられることと思う。ヘクサコルドにはヘクサコルドでしか捉えることができない音楽の姿があり、バロック以前の音楽家は皆そのようにして音楽を捉えていたのである。

 ヨーハン・ゼバスティアン・バッハは「平均律クラヴィーア曲集」という名で本邦では知られている曲集の表紙に下記のように記した。

よく調律されたクラヴィーア あるいはすべての全音と半音、すなわち全ての長三度つまりUt Re Mi、また短三度つまりRe Mi Faによるプレリュードとフーガ

 ドレミではなくUt Re Mi、ラシドではなくRe Mi Faとあるので、バッハがヘクサコルドを意図していることは明らかである。バッハが用いたツールを使って、バッハの書いた音楽に取り組もうとすることは、ごくごく自然なことではないだろうか。

 バロック以前の音楽が演奏される機会はますます多くなり、古楽を専門とする演奏団体のみならず、一般の合唱団等のレパートリーとしても親しまれている。その基礎の基礎であるヘクサコルドを実践的に学ぶことのできる教本が必要とされていると考え、本書の執筆に至った。

 本書がバロック以前の音楽を演奏する人、また指導者にとって、音楽を味わう上でのひとつの手がかりを与えるものとなることを願ってやまない。

空前絶後のライブ配信

タリスのモテット、編集しています。

ようやく形が見えてきました。

本当に凄い作業でした。多分私が今までやった仕事の中で一番きつかった。

卒論よりも修論よりも大変でした。

参加者の録音をパソコン上で編集していくという作業、音程もタイミングもなんなら音色でさえ編集できるのですが、全部手作業なんですよね。結局耳で聞きながら一つ一つ修正していく作業。

AIにやらせれば似たようなことはできるんだろうけど、でも同じようにはできないと思うのは、価値観を数値化できないということと、やってるうちに価値観が変わっていくし、偶然起こった事故とかをうまく利用してみたり、時々見落としたり、そういうことが結局人間らしいものを作っていくのではないかと思います。

それで思い出すのは先日藤井聡太が棋聖戦だったっけ?AIが6億手読んだところで突如として最善手として弾きだす31銀という手を20分で指したという話。

これすごいのは藤井聡太は20分で6億手読んだわけじゃないってとこです。

AIが6億手読まなければわからないことが藤井聡太は6億手読まなくてもわかるんです。

直感精読という加藤一二三九段が揮毫に書かれる言葉がありまして、これただの直感でもない。こういう手もありそうだなって浮かんだ手を読んでいくわけですが、AIのようにしらみつぶしに読んでいくわけではなく、直感で浮かんだ手を中心に読んでいくんです。

でまあ何が言いたいかというと、録音の編集もこれに似ているなということです。

聴いて、直感的にああこうしたほうがいいなってことを中心に検討していくんですね。

直感だけでもないし、何から何まで修正してしまうわけでわない。

非常に総合力の問われる作業です。

まあ一番問われるのは精神力と忍耐と根気なんですけどね(笑)

7月9日どうぞお楽しみに。

きっとすごいものができます。

第2回 “Remote” Ensemble Salicus Live
〈40声のモテット大発表スペシャル!〉

日時:7月9日(木)20時-21時

曲目:
●グレゴリオ聖歌「主の昇天の祝日のミサ固有唱」より奉納唱「ガリラヤの人々よ」
●ジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナ「教皇マルチェルスのミサ」より「サンクトゥス」
●トマス・タリス「あなた以外に希望を持ちません」

出演:Ensemble Salicus

鏑木綾 渡辺研一郎 佐藤拓 富本泰成 櫻井元希 谷本喜基

Salicus KammerchorのYou Tubeチャンネルでのライブ配信です。
この機会にぜひチャンネル登録を!!
https://www.youtube.com/channel/UCeWlQtnOnETy6Q2uZUVq4jA


今日はカテドラルに行ってました。

7月13日、カペラがカテドラルで無観客ライブ配信を行います。

今日はそのリハだったのですが、いつものようにクワイヤブックで歌えるはずもなく、ソシアルなディス箪笥を保ったまま歌います。

今まで考えたこともなかったような新しい演奏スタイル。

楽しみです。

ところで今回演奏するミサ〈パンジェ・リングワ〉はもととなった聖歌の影響で全曲にわたってミ・ファが強調されるミサです。

今日ふとこのミ・ファというシラブル、実によくできているなあと思いました。

階名で出てくるシ(ティ)や半音上昇の変化音もこのミに倣ってディとかフィのように母音がイ母音なんですね。

ヘクサコルドが使われていた時代はこの6音の音階組織ドレミファソラの中に半音は1か所しかなく、しかも母音がイなのがミだけなので、非常にわかりやすいんですね。

ミは固い音、ファは柔らかい音というような言い方をしますが、これはもうシラブルそのものに現れている。

前舌狭母音の緊張感のある倍音構成の母音と鼻音の組み合わせ。

そこからfaという広母音と無声摩擦子音という母音自体が薄くなりやすい子音を組み合わせる完ぺきさ。

ミの緊張感というのは、蝉の鳴き声を思い浮かべていただくとわかりやすいかと思います。

ミーンミンミンミンミン、ミーンミンミンミンミン、ミーンミンミンミンミン

もう勘弁してくれえって思いますよね。

これが、

ミーンミンミンミンふぁ~~~

とかだったらなんと見事な緊張と緩和!とか思うのでしょうか。

ほんとこのシラブルを考えた人凄い。天才。

というミファの印象的なミサです。

皆様ぜひ配信ご覧になってくださいね。

https://www.facebook.com/events/743369583082081/