タリスのモテット、編集しています。
ようやく形が見えてきました。
本当に凄い作業でした。多分私が今までやった仕事の中で一番きつかった。
卒論よりも修論よりも大変でした。
参加者の録音をパソコン上で編集していくという作業、音程もタイミングもなんなら音色でさえ編集できるのですが、全部手作業なんですよね。結局耳で聞きながら一つ一つ修正していく作業。
AIにやらせれば似たようなことはできるんだろうけど、でも同じようにはできないと思うのは、価値観を数値化できないということと、やってるうちに価値観が変わっていくし、偶然起こった事故とかをうまく利用してみたり、時々見落としたり、そういうことが結局人間らしいものを作っていくのではないかと思います。
それで思い出すのは先日藤井聡太が棋聖戦だったっけ?AIが6億手読んだところで突如として最善手として弾きだす31銀という手を20分で指したという話。
これすごいのは藤井聡太は20分で6億手読んだわけじゃないってとこです。
AIが6億手読まなければわからないことが藤井聡太は6億手読まなくてもわかるんです。
直感精読という加藤一二三九段が揮毫に書かれる言葉がありまして、これただの直感でもない。こういう手もありそうだなって浮かんだ手を読んでいくわけですが、AIのようにしらみつぶしに読んでいくわけではなく、直感で浮かんだ手を中心に読んでいくんです。
でまあ何が言いたいかというと、録音の編集もこれに似ているなということです。
聴いて、直感的にああこうしたほうがいいなってことを中心に検討していくんですね。
直感だけでもないし、何から何まで修正してしまうわけでわない。
非常に総合力の問われる作業です。
まあ一番問われるのは精神力と忍耐と根気なんですけどね(笑)
7月9日どうぞお楽しみに。
きっとすごいものができます。
第2回 “Remote” Ensemble Salicus Live
〈40声のモテット大発表スペシャル!〉
日時:7月9日(木)20時-21時
曲目:
●グレゴリオ聖歌「主の昇天の祝日のミサ固有唱」より奉納唱「ガリラヤの人々よ」
●ジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナ「教皇マルチェルスのミサ」より「サンクトゥス」
●トマス・タリス「あなた以外に希望を持ちません」
出演:Ensemble Salicus
鏑木綾 渡辺研一郎 佐藤拓 富本泰成 櫻井元希 谷本喜基
Salicus KammerchorのYou Tubeチャンネルでのライブ配信です。
この機会にぜひチャンネル登録を!!
https://www.youtube.com/channel/UCeWlQtnOnETy6Q2uZUVq4jA
今日はカテドラルに行ってました。
7月13日、カペラがカテドラルで無観客ライブ配信を行います。
今日はそのリハだったのですが、いつものようにクワイヤブックで歌えるはずもなく、ソシアルなディス箪笥を保ったまま歌います。
今まで考えたこともなかったような新しい演奏スタイル。
楽しみです。
ところで今回演奏するミサ〈パンジェ・リングワ〉はもととなった聖歌の影響で全曲にわたってミ・ファが強調されるミサです。
今日ふとこのミ・ファというシラブル、実によくできているなあと思いました。
階名で出てくるシ(ティ)や半音上昇の変化音もこのミに倣ってディとかフィのように母音がイ母音なんですね。
ヘクサコルドが使われていた時代はこの6音の音階組織ドレミファソラの中に半音は1か所しかなく、しかも母音がイなのがミだけなので、非常にわかりやすいんですね。
ミは固い音、ファは柔らかい音というような言い方をしますが、これはもうシラブルそのものに現れている。
前舌狭母音の緊張感のある倍音構成の母音と鼻音の組み合わせ。
そこからfaという広母音と無声摩擦子音という母音自体が薄くなりやすい子音を組み合わせる完ぺきさ。
ミの緊張感というのは、蝉の鳴き声を思い浮かべていただくとわかりやすいかと思います。
ミーンミンミンミンミン、ミーンミンミンミンミン、ミーンミンミンミンミン
もう勘弁してくれえって思いますよね。
これが、
ミーンミンミンミンふぁ~~~
とかだったらなんと見事な緊張と緩和!とか思うのでしょうか。
ほんとこのシラブルを考えた人凄い。天才。
というミファの印象的なミサです。
皆様ぜひ配信ご覧になってくださいね。