なんだか凄い経験をしました。
月別アーカイブ: 8月 2016
モダン?いやモダンっていうか・・・
「古楽」に対置した時の「モダン」というのは多分古典派以降の音楽になるんでしょうが、「古楽」も「モダン」も甚だ定義の曖昧な言葉です。
古典派やロマン派の音楽も「ピリオド楽器」(作曲当時演奏されていた楽器を再現したもの、いわゆる古楽器)で、「ピリオド奏法」(その当時の演奏法を再現した者いわゆる古楽奏法)で演奏する場合、印象はかなり「古楽」的になります。「古楽」「モダン」という言葉を使う場合、それが時代を指すのか、楽器を指すのか、奏法を指すのか注意しなければなりません。
僕は普段、いわゆる「モダン」ものを演奏することはほとんどありませんが、例えばカンタータクラブでは、「古楽」にジャンル分けされる作品を、「モダン楽器」を含むオーケストラで、「ピリオド奏法」で演奏しています。
だがしかし!この度モダンをも遥かに飛び越した超コンテンポラリー!演奏する作品の作曲家全員生きてる!4曲中2曲新曲!
という演奏会に出ます。
7月25日(土)14:30開演
ヴォクスマーナホームページチラシに僕の名前はありませんが、急きょ参加することとなりました。
ヴォクスマーナに初めて参加したのは学部の頃だったと思うので、3・4年前からかと思います。このところご無沙汰でしたが、久しぶりに戻ってみると、同級生の根津がいました(笑)。
(根津はこの3か月ほどで20キロ痩せたそうです!)
ヴォクスマーナは、12人12声の、現代音楽専門の声楽アンサンブルです。
邦人作曲家への委嘱初演を軸に、もう20年も活動を続けています。
20年て凄いですよね。僕が8歳の頃からということですから。
今回演奏するのは以下の4曲、
福井とも子(b.1960)/ Let’s dance(2013委嘱作品・再演)
どれも超個性的、超刺激的な曲ばかりです。
特に松井永太郎さんの歌うバス2の非常に自由な旋律線は聴きどころです。全編無調で、部分的にかなりカオスな響きの場所もありますが、終結部での全声部によるEs-durの和音は、それまでの部分との対比によって、ぞっとするほど美しい響きになっています。★森田泰之進(b.1969)/ 「The Speediest」 for mixed choir (委嘱新作・初演)
新作(しんさくと打つと「真作」と変換する私のパソコン、そりゃそうだよな)なので、あまりネタバレするのも良くないと思いますので、すごーくぼんやりと書いておきます。
えーーっとですね、凄く良く出来ていて、ものすごく画期的かもしれない書き方をされていますが、あまり他の作曲家の方には真似してほしくない書き方をされております・・・(笑)。
えーー超難しいです!あと酔います!あーーあと当日は首のコンディションを整えたいと思います。
こちらも初演作品です。今日金沢さんのソロが追加になりました(笑)。かなり素敵なソロです。うらやましい!
ものすごく繊細な作品で、響きの綾が金色の織物のように揺らめいているその衣擦れに耳を澄ますような音楽だと思います。
もととなっているのはLassusの同名シャンソンで、曲の途中で原曲が現れるのですが、その現れ方が見事で、16世紀の音楽にも関わらず、なぜか何の違和感もなく、滑り込むようにその世界へと移り変わっていきます。原曲はこちら
Sussanne un jour / Lassus
ちなみにこの曲はLassus自身によって、ミサ曲にも編曲されています。
Missa “Sussanne un jour” / Lassus
今回演奏する曲目の中では、この曲が最も音響的インパクトがあると思います。
打楽器と、発泡スチロールを用います。最後に少し踊ります笑。どの曲も本当に面白い曲ですので、是非聴きにいらしてください!
海の日と言えば?
今年も皆さん待ちに待った海の日がやってきます!
海の日と言えばカペラ!恒例ですよね!
そうですね!(オーディエンス)
カペラはだいたい1月の成人の日、7月の海の日、10月の平日の年3回の定期公演を行っています。
カペラを聴かないと年が明けた気がしないし、カペラを聴かないと夏が来た気がしませんよね?
そうですね!(オーディエンス)
今回の定期公演は、「サルヴェの祈り」という事で、聖母の祈りの集いを再現するような形でプログラムが組まれています。
演奏会詳細はコチラ
といっても実はこのサルヴェの祈り自体は演奏会の3分の1くらいの長さで、演奏会の大半を占めるのは、前半の晩課です。
カペラは通常典礼形式で演奏会を行っていますが、僕が参加してからは、ミサ形式ばかりで、晩課の形式は初めてです。
いつものミサ通常文主体のお決まりのテキストではないので、沢山のテキストに若干苦労しております。
だがしかし!先日のコントラポントで演奏しましたヴェスプロは、まさにこの晩課形式でございまして、テキストが共通する部分が凄く多いんですね!助かった!
こうして、時代と地域は違うけれども、同じ聖母の晩課という形式で一貫性をもってプログラミングをするというのも、花井先生のこだわりだと思います。(ちなみに9月のアラミレも晩課です)
晩課というのは、主にアンティフォナ、賛歌、マニフィカトで構成されています。
このうちアンティフォナは、詩編唱をはさんで二回歌われる決まりになっているのですが、その二回目のアンティフォナを省略し(省略しなかったという説もあり)その代りに別のモテット等を演奏するという習慣があったそうです。
つまり、通常
アンティフォナ→詩編唱→アンティフォナ
となるところを、
アンティフォナ→詩編唱→アンティフォナ代用モテット
という具合です。
このアンティフォナ代用モテットのことを、メンバーの間ではアンティフォナ大王と呼んで、これ「何番目の大王だっけ?」「第二大王だよ。」
などと使っています。著作権等ございませんので、皆さんも是非お気軽にお使いください。
街中で「ヴェスプロの第3大王やばくなーい?」「いやこないだのカペラのゴンベールの第4大王のがやばくなくなくなーい?」などという会話が営まれることを願ってやみません。
先日のモンテヴェルディの場合、この流れがどのようになっていたかというと、
アンティフォナ(グレゴリオ聖歌)→詩編唱(モンテヴェルディ作曲のポリフォニー)→大王(モンテヴェルディ作曲の小編成のアンサンブルやソナタ)
という具合でした。
今回は、
アンティフォナ(グレゴリオ聖歌)→詩編唱(単声)→大王(ゴンベールのモテット)
という事になっています。
大王がアンティフォナと同じ歌詞のものもありますし、こちらのほうがよりシンプルで、元の形に近いと言えると思います。
同じ聖母の晩課でも、かなり振れ幅のある両作品と言えると思います。
また今回はいつもの8人編成に加え、3人の新しいメンバーも一緒に演奏します。
鏑木綾
渡辺研一郎
富本泰成
新しいと言っても、関係者にとってはおなじみの3人ですね(笑)
3人ともサリクスのメンバーですし、コントラポントのメンバーでもあります。
サリクスカンマーコアのホームページ
コントラポントのホームページ
かぶちゃんはサリクスでも圧巻のモンテヴェルディのソロを聴かせてくれました。
けんぼーはただの天才。
トミーは藝大の同期で、ずっと苦楽を共にしてきた仲間です。
3人ともほんといつもお世話になってます。
カペラではこの3人をまとめて新人、もとの8人を旧人と呼んでいます(笑)。
今回個人的に一番聴きどころだと思っているのは、この新人のグレゴリオ聖歌と、旧人のポリフォニーによる交唱です。
交唱は賛歌Ave maris stellaと、Magnificatで聴けます。両方とも、最後は5声となって、13人でポリフォニーを歌います。
いいですよーーじんわりきますよーー。
(なにより交唱楽ですよーー)
だいたいいつも、マニフィカトやるときは、単声もポリフォニーも自前でやんなきゃいけないので、結局ずっと歌ってることになるので結構大変なんですね。しかし交唱なんだから交互に歌うのがやっぱり本来だよなーーと今回つくづく思いました。
この3人が加わるのは、いつもより声部数が多いからなのですが、これも時代による音楽の変遷を感じさせてくれます。
いつもカペラが演奏しているジョスカンデプレなんかは、4声が基本で、声部数が増えることはほとんどありませんが、ポストジョスカン世代になると、5声6声7声平気で出てきます。
これ6月1日のブログなんですね。もうひと月半前なんですね。そうなんです。一つの演奏会を実現するにはほんとに沢山の時間と労力が必要なんです。
えーと音楽の変遷の話でした。音楽の中身としては、ジョスカンが確立したとされる通模倣様式をさらに徹底させた感じで、もうひたすらにもほうもほうもほうもほうもほう!です。
ひとつテーマが聞こえたらしばらくそのテーマを追っていれば、初めて聴く曲であっても、その構造がはっきりと聞き取れます。
そういった意味で、よりキャッチ-でわかりやすいと思います。ルネサンス音楽初心者の方も是非!入り口としてもお勧めです。
しかし、5声―7声で模倣を徹底していくと、あちこちでチラリホラリとほころびが見えてくるんですね。これを「模倣の限界!」と千代の富士風に表現します。
後発のテーマの音高関係を保とうとすると、前のパートと音がぶつかっちゃうんですよね。どうしようもなく。それがまた、味がある。愛おしい。ああ、愛すべきほころび。
千代の富士の去り際が美しかったように、模倣にも限界があるから美しいのかもしれませんね。
はい。妄想でした。
ええ、
海の日と言えばカペラ!カペラといえば海の日!
Ave maris stella(めでたし海の星)を聴かなくっちゃ!
実家に帰らせて頂きま
した。
クラシック以外の話2
民族音楽系でひとつあげ忘れました。
フラメンコです。僕は昔からスペインが好きなのですが(特に食べ物が好き)、音楽の分野でも、暗くて強くて官能的なフラメンコが大好きです。
歌はこんな感じ
Camarón de la isla ( tangos de la sultana)
前回のブログで、ポップスの人を一人しか挙げませんでしたが、大変な人を忘れていたことに気づきました。
この人に出会ったのは、永瀬正敏が主演するドラマ、「私立探偵濱マイク」においてでした。
このドラマの最終話に、Sionが役者として出ていたのです。
それはそれは印象的な演技をしていて、なんだこの人見たこのないけど凄い演技(そして凄い声)だなあ、と思っていたら、エンディングでマイク(永瀬正敏)がB(Sion)の骨を横浜の散骨するシーンで彼の曲が流れてそれで、ああこの人歌手やったんやなって。
検索したらそのシーンそのものが出てきました。
そうそう、このドラマでは中島美嘉がマイクの妹役で、それはそれは可愛かったんだった。
あとSionが好きな歌手という事で聴いたのが、Tom Waits
Tom Waits Waltzing Matilda
胸がいっぱいになりますね。こういう歌い手になりたい。
ここらでキンクリもいっときましょう。
King Crimson – Epitaph
なんだかよく考えたら、これまで紹介したものって、高校の時に出会ったものばかりだな。三つ子の魂なんとやら。
次のも高校のときに出会ったものです。この頃僕は寝る時にタイマーをかけて音楽を聴いていたのですが、これはほんとに良く聴いて寝ました。
Carcass – Incarnated Solvent Abuse
黒い袋でびよーんってほんとキュートですよね。
結成時のメンバーは全員ベジタリアンだったそうです。確か。
このバンドの日本語版を担当した翻訳者がなかなかユニークな人で、内容と全く関係ない邦題「内臓大爆破」「硫酸どろどろなんでも溶かす」などを付けたことでも有名です。
ぜんぜんうまくないし、ライブなんかテンポも定まらなくて(ドラムが輪をかけて下手)、下手過ぎて気持ち悪くなるくらいだけど、こんな演奏他では聞けないって演奏です。もう最高です。
ファースト、セカンドアルバムの時は3ピースだったんだけど、ドラム、ベース、ギターの3人が3人ともヴォーカルっていう超カッコいい編成でした(笑)。
次、今度のは上手いです(笑)。ブルータリティが行きすぎている感が否めませんが。
CEPHALIC CARNAGE – “Endless Cycle of Violence”
もううまいって言うか、超絶技巧過ぎて鼻血でそう。
このヴォーカルの人も凄くて、ほんとにいろんな声が出せるんですね。
そうそう、いわゆるデス声と呼ばれるディストーション・ヴォイスですが、その種類は意外なほど豊富です。僕は2-3種類しかできませんが、これも検索すると、お手軽なサンプルがひっかかりました。
Top 10 IMMENSE Death Metal Vocalists!!
あともう一つ紹介したいのは、ブラックメタルです。
Gorgoroth – Revelation Of Doom
もうあれですよね、とにかくスネアの音!なんか棒的なもので、板的なものを叩いてる音がしてますね。
ほんと凄いです。
ブラックメタルというと、どうしても派手なメイクに目がいきがちですが、このメイクは、その目の奥にあるナニカを伝えたいがためなのではないかなあと思います。
この瞳は音楽以上に雄弁です。
なんか古楽好きにはメタル好きが多いみたいですね。
なんででしょうかね。端っこのものが好きなんでしょうか。
肉体的にも精神的にも限界に挑戦している感じがいいですよね。
音楽史の両端というか。これはもう現代の生み出した人間の膿というか、一番見たくない汚いところをさらけだして、これが人間なんだ!人間なんだ!って言ってるみたいなんです。
「人間なんだ」と言えば、同じことを強く感じるクラシックの歌手が二人います。
Hermann PreyとFritz Wunderlichです。ベタですが。
https://www.youtube.com/watch?v=lVNrgob0L2w
Fritz WUNDERLICH. Adelaide.
なんだか、世界って、人間って、美しかったんだなって思いますよね。
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