ハイパー能「菖蒲冠」|終演

少し時間が空いてしましましたが、6月4日に開催されました、ハイパー能「菖蒲冠」について振り返ろうと思います。

菖蒲冠の概要については、叔母桜井真樹子と撮った宣伝動画がありますので、よろしければご覧ください。

叔母との共演は2回目ですが、ハイパー能は初めて、吉松章さん、灰野敬二さんとの共演は初めて、地謡も初めてという初めてづくしの公演でした。

私もたいがいいろんな声で歌っておりますが、能の声は実は一番苦手といっていいほど苦手で、結構不安がありましたが、私が特に苦手なのはどうやら囃子方の声の方で、地謡の方はそうでもないということがわかりました。

そもそも叔母から「ポリフォニーと地謡ができる人」という発注で話があったのですが、「そんな人いません」で終わらないのが叔母の凄いところ。

よく考えてください。

1.新作能を

2.屋外(菖蒲園)で

3.灰野敬二を囃子方に

4.地謡がポリフォニーを歌い

5.テーマがLGBTで

6.心が女性の男性というシテ役を女性の叔母がやる

という頭のてっぺんから足の先までイカれた公演なのですから。

これ思いついても実現できませんよ普通。

制作のマリプラ、まりあさんもさぞ苦労されたことでしょう。

常人には思いつきもしないことですが、実現するのは超人です。心から尊敬します。

おかげさまで満員御礼で、全く得難い経験をさせていただきました。

満開の菖蒲。これだけ満開なのはこの数日くらいだったらしく、お世話している方がこの日に合うように育ててくれたのだそうです。本当に様々な方の努力によって奇跡的な舞台となりました。


今回初共演の灰野敬二さんは、言わずと知れたアンダーグラウンドの帝王なのですけれど、近年は私の父の作ったポリゴノーラという楽器を気に入ってくださって、よく演奏してくださっています。

楽器の特質を際の際まで見定め、製作者の意図を圧倒的に超える音を出しています。

凄すぎる。

今回灰野さんはハープ、フレームドラム、カンテレ、ポリゴノーラを演奏し、カンテレの時は歌も歌っていました。

中でもポリゴノーラの演奏は圧倒的で、もう完全に異世界。まさに能そのものという世界を作り出していました。

個人的に印象的だったのは灰野さんの歌で、これも灰野さんにしか作り出せない世界でした。

あれですね、最近流行りの呪術廻戦的にいうと、領域展開ですね笑


叔母のやっていることは凄すぎて常人には理解しがたいところがありますが、小1時間よくよく話を聞いてみるとおもろいやないかいと思えるようなことをやっています。

そういう意味で上記の宣伝動画を撮れたのはよかったと思っています。

40分という結構な長さになってしまいましたが、全部見ていただければ、叔母のやろうとしたことがわかっていただけるのではないかと思います。

叔母とは12月にグレゴリオ聖歌と声明のコンサートをやる予定です。

これからも注目して頂けると幸いです。

ノイズのライブに行ってきました

ノイズのライブに行ってきました

さる3/16、大久保水族館というライブハウスに、ノイズのライブを見に行ってきました。

https://www.facebook.com/events/617156565775235/

風人さんという、徳久さんの元生徒さんで、今ドイツを中心に活躍されているノイズ・パフォーマーが帰国されて、企画されたライブでした。

風人さんがドイツに行く直前に私一回Tokyo Voiz Choirという徳久さん主宰の団体の練習にお邪魔させていただいたことがありまして、そこで一度お会いしてました。

そこではじめて、アイケイイチさん、そして本業占星術師のノイズ・パフォーマー、一樹さんとも出会いました。

その時も風人さんのパフォーマンスは度肝抜くレベルで、その後の飲み会兼反省会での真面目っぷりとの対比がエグかったんですが、今回のパフォーマンスはもう完全に別の世界に行ってしまわれたのだなという感想でした。

一部を切り取りました。全体は15分くらいでした。

なんていうんでしょうね。もう開いた口が塞がらなかったです。

控えめに言って人生変わった。

それで、これ5組出演のオープニングアクトなんですよね。

トリでいいじゃんって感じでしたが、この後出演の並びを考えると、オープニングでよかったですね。一番刺激が強くてストイックなのを最初に置くというのが、もう、ぬるま湯で生きてんじゃねえよって言われてるかのようでもうシャキッとしました。

ド頭にこれをやるというのが一番効果的だったと思います。

これ小さなピックアップマイク(徳久さんいわく)を2個口に加えてやってるみたいなのですが、見た目イアホン加えてるみたいで、片方壊れたイアホンとかでやってみようかなあとか思いました。

声、というか口から出てる音だけでここまでできるのは本当に凄いです。

エフェクターなし、操作してるのはゲインとイコライザだけだそうです。

とにかく本当に丁寧に丁寧に自分の身体と向き合いながら、丁寧に丁寧に音を紡いでいってるのが印象的で、嘘を言わない覚悟みたいなものを感じました。


続いて肩書きにはviolinistと書いてあったRohcoさん。

後で聞いた話では、先日叔母が行った「ノイズ白拍子」に出演されていたようで、これまたご縁を感じました。

こちらの動画はTwitterにあがっていたものを引用させていただきました。

左手側にプリペアドヴァイオリン(?)右手側に弓が置いてあって、真ん中にミキサーと髭の生えたまな板みたいなのが置いてありました。

ヴァイオリンは主に手で擦ったり弾いたりしていて、弓はまな板の髭を弾くというそっちかーーいなスタイルでした。


続いて徳久さんとコバさんによるノイズボイスカラオケ。

今回は仕上がった内容でしたねーーかなりアイデアが練られた様子でした。

最高に笑えました。

こちらコバさんのTwitterから。

まずは挨拶代わりの春の小川デュエット。

ていうか、

「コバ何歌う?」

「じゃ春なんで春の小川で」

って流れでふたりとも歌い出すのおかしくない?笑

とにかくノイズボイスカラオケってカラオケのユルさとノイズの対比が肝なんですけど、今回は曲間のやり取りまでそのユルい流れがうまく続いててよかったです。

照明もまたミラーボール的なのがぴったりあってましたね。

続いて最近の曲が歌いたいという流れからBillie EilishのBad guy。

これも当たり前のようにデュエットなんですが、なんとミニマルノイズでした。

今までなぜこのスタイルなかったんだろうと思うくらい当たり前といえば当たり前のやり方なんだけど、めちゃめちゃ笑えました。

コバさんは吸気のキュルキュルドローンずっとやってるし、徳久さんはマイクを近づけたり遠ざけたりしながら「ギャイギャイギャイギャイ」みたいのずっとやっててもうなんか後半笑いが止まりませんでした。

右キュルキュル、左ギャイギャイ、真ん中ビリー・アイリッシュ。意味わかんねえ。

続いて軍歌で微音。やられましたね。まさか軍歌で微音とは。

微音っていうのはまあ聞こえるかどうかのギリギリの音量でやるノイズなんですけど、徳久さんはずっとイビキみたいな「ゴル、ググ、、」ってやってるし、コバさんはフルボイスシャウトのモーションでほぼ無音っていうこれもまた対比が見事で、素晴らしいアンサンブルでした。

バックで流れてる軍歌は音質が悪すぎてそれだけでノイズとして成立してるし。

ビジュアルの対比もやっぱり結構大事ですね。面白い。

それでここからの流れが非常に秀逸。

「腹減ったね。すみませんカレー2つくださーい」

からのカレー食いながらカルグラドローンしながら会話はカルグラのまましゃべるという。

カラオケとして流しているのはエル・システマのドキュメンタリー的な映像。

なんだこれ。

結構つらそうに食べながら声出して、むせたりしてるのほんと面白かった。

途中ビール追加したりね。

そして最後は徳久さんのYouTubeの動画を使ったやつ。

もうなにがなんだかわかりませんが、倍音漫談ですかね?倍音猥談?を流しながらホーミーやりながら、途中からその猥談動画と夏の終りのハーモニーのカラオケがオーバーラップしてきてその上普通に二人でカラオケで歌うというもうわけわからん。

普通にカラオケしてるのがもはやノイズに聞こえる。

畳み掛けのトランス。

ノイズボイスカラオケの奥深さを見せてもらいました。


最も意味のわからんノイズボイスカラオケの後は、biology of the futureという方。

めちゃめちゃちゃんとしてる笑

ギャップがエグい笑

Cの音をドローンにしてその倍音を操作しながら展開させていく、途中にふりかけみたいに他の要素も入れていきながら、おそらく20分くらいかな、C音はなり続ける。

これもかなりヤバかったですね。あーこれ気持ちいやつやーって感じで。

ヒーリング的な、口から涎出る的な。

sound cloudに音源があがってて、いくつか聴かせてもらいましたが、どれも素敵。初心者にもおすすめです。

作業音楽にぴったりかも。今こうして記事を書きながら聴いてますが、これ、いいですね。気持ちいい。

あ、ちなみにちょっと興味があってスペクトログラムで音をみてみました。

左側です。綺麗ですよね。とても。倍音のゆらぎと、基音の安定感と。

比較のために右側にノイズボイスのも載せてみました。これはこれで綺麗笑

基音がそもそもめちゃめちゃ高くて幅ひろい笑
多分徳久さんのリップハーシュだったと思います。

ほんと人生いろいろ、ノイズもいろいろですね。


さて、トリは山下哲史さん。

この方ほんとに素晴らしかった。

直球のノイズ。ユーモアと、ピュアさと、可愛らしさがありつつ、様式美と、構成感、偶然と必然の混交。

すごいちっちゃなターンテーブルに最初はレコードのせてスプーンでこっすったりなんかしてるんですが、それはもう前戯みたいなもんで、レコードがどっか飛んでっちゃってからがもうほんと素晴らしかった。

ドタバタ、叫び、悶え、八つ当たり、土下座、土下寝、地団駄。

なんだろう、やりたくてもできないこと全部やってくれたって感じなのかな。

これの素晴らしさを表現する言葉がない。

自分でも動画撮ってて、見返してみると、自分

「ま、祭り、、祭りだ、、」

って言ってるんですよね。語彙喪失。

ちょっとあれに近いかも。ビルとか橋とか古くなった建造物を爆破して解体するやつ。あれ、気持ちいいですよねなんか。ちょっとあれに近い。

それかシャーマン。現代における祈りの儀式。やっぱ祭りだな。うん。祭りだと思ったんだもん。

とんど焼きとか、キャンプファイヤーとか、なんかそんな感じ。


とにかくこのイベントはほんとに凄かった。

風人さんのテンプルにカチーンってくるノイズに始まり、怪しげなviolinist、ユルすぎ意味不明のノイズボイスカラオケ、ヒーリング系ドローン、祭り。

流れが完璧。これ以外の順番は考えられないほど。

それで翌日徳久さんが言ってたのは、こういうイベントにEnsemble Salicusとかでバッハ歌ってよって。ゾクゾクしますよね。たぶんね。あんまりいないんですよね。こういうアンダーグラウンドミュージックに本意気のリスペクトを持ってる古楽演奏家。みんな心の底では下に見てるでしょ。クラシックのほうが偉いって思ってるでしょ。なのに、同じ土俵で戦うの、怖いでしょ。

先日叔母とやった「ダヴィデの声明・如来のイムヌス」も相当アンダーグラウンドでハードコアでしたが、これからもジャパニーズネオアヴァンギャルドエクストリームプログレッシブブルータルミクスチャークロスオーバードゥームコアクラシカルミュージシャンとして、怖くてできないことをやっていこうと思った次第であります。


というわけでね。

話題のライブハウスでですね。

話題のコロナをね。

2本も飲んでやりましたよ。

ははは


昔ね。「私、普通の人が好き」ってふられたことがあったんですよ。

雷に打たれたような衝撃の後に、うん。なら、しょうがないね。って、めちゃめちゃ諦められたよね。

ピッグスクイール考

皆様こんにちは。
こちらはデスメタル関連の記事です。

生理的に無理!という方はご無理なさらずに戻るボタンなりウィンドウの×ボタンなりをクリーック!


先日昔好きだったSentencedというフィンランドのゴシックメタルバンド(初期はデスメタルバンド)を久しぶりに検索してみました。

Sentencedは2005年に解散してるはずなのですが、なぜか2015年発表というアルバムが引っ掛かりまして、おやっ再結成かしら?!

と思い聴いてみました。こちら↓

聴いてみたらデスメタルだもんで、まさかの原点回帰かいな?とも思いましたが、あまりにもテイストが違いすぎるので、検索してみると、このバンド、イギリスでできた新しいバンドみたいです。

伝説的なバンドとおんなじ名前って、それ、ええんかいな?

ちなみにフィンランドのSentencedはこんな感じのバンドです。↓

さてこのような偶然によってであったこのSentenced(UK)ですが、聴いてびっくり、上の動画の2:05あたりからのボーカルの歌唱法は、デス声による倍音唱法じゃあありませんか。
下のリンクからだと2:05から開始します。

あたくしもうとても驚いてしまいまして、しかもこのバンド、このデス倍音唱法をいわゆるサビで使うんですね。つまりサビに歌詞がない

そういう意味ではこれも先日衝撃を受けましたBillie EilishのBud Guyと共通してるんですね。
こちらはサビがインスト(シンセ音を楽器と言っていいのかわかりませんが)です。

なにこれこういうのはやってんの?もうサビに言葉はいらないの?というかSentenced(UK)はBillie Eilishの先駆けなの?とか興奮いたしまして、Facebookのノイズボイスカラオケのグループに投げたんですね。あ、Twitterにも投げました。

それでそのノイズボイスカラオケのグループで徳久さんから返信が来たのですが、曰く

「ピッグスクイールじゃん?」

・・・・あーーーそう・・・ね・・・そうか・・そうね・・・。

言われてみればテクニックとしてはピッグスクイールそのもの。

ピッグスクイールが何かということについてはいわおさんのブログをご覧ください。

http://falsechord.hatenablog.com/entry/2019/10/13/032011

ぬ?このブログ、私の誕生日に書かれてる。私への誕生日プレゼントかな(違

それで私が考えたのは、なぜ私がSentenced(UK)の音声をピッグスクイールだと思わずに、デス声による倍音唱法だと感じたのかということ。

というわけでYouTubeでpig squealを検索!いろいろ聴いてみました。

こうしていろいろ聴いてみると、pig squeelの使われ方にもほんとバリエーションがかなりあるんだなあということ。

動画もピッグスクイールだけでこの他に山のようにまとめがありました。

シャウト的なロングートーン、リズミックにアクセントを加えるもの、基音が高めのもの、低めのもの、なんかちょっとしゃべってるものもありますね。

ちなみに私が気に入ったのはこの人↓

なにこのポップなテクノチューン笑。おっちゃめーーー!

デスメタル界の岡崎体育かよ!笑

それでSentenced(UK)と何が違うのかというと、これらのほとんどはピッグスクイールを効果音的に使っているということです。

それに対しSentenced(UK)は明らかにピッグスクイールによって生成される倍音によって旋律を奏でています。

世の中にはね、二つのピッグスクイールがあるんですよ。

それはね、効果音的ピッグスクイールとね、旋律的ピッグスクイールなんですよ(ドヤ顔)


で倍音唱法でいうとですね、ホーメイを例にとると、舌を口蓋につけるものとつけないものとがございまして、

舌をつけるものをスグット

舌をつけないものをホーメイ(芸能としてのホーメイの中に、技術としてのホーメイがあるんですね。ヤヤコシイ)

というんですね。でピッグスクイールは舌をつけているのでスグット系なわけです。

またホーメイにはさらに

仮声帯が声帯と同じ周期で振動しているもの(ホーメイ、スグット)と

仮声帯が声帯の1/2の周期で振動しているもの(カルグラ)

があるわけですが、音印象として旋律的ピッグスクイールはカルグラの、舌付けって感じですよね。

仮声帯が 声帯の1/2の周期で振動しているもので、舌をつける技術はないのかというとあります。それが、 カンズップКаңзыпです。

というわけで旋律的ピッグスクイールはカンズップに似ているのですが、では何が違うのでしょう。

多分まだはっきりとはわかっていないと思いますが、おそらく、ピッグスクイールのもとになっているフォルスコードなりフライなりのガテラルは仮声帯か声帯かどちらか、あるいは両方が非周期振動をしていると考えられます。

ガテラルはカルグラの親戚

ピッグスクイールはカンズップの親戚

と、言えるかもしれません。

そして、Sentenced(UK)が他のヴォーカルのピッグスクイールと比べて音程感が強いのはひょっとすると声帯は周期振動、仮声帯は非周期振動しているのかもしれません。

そういうわけで私がSentenced(UK)を聴いて、これ倍音唱法じゃんって思ったのだと、考えたのでした。

おしまい。


本文と全然関係ありませんが(もちろん深いところではつながっていますが)、叔母とのコンサートが今週末です。

先日リハーサルしましたが、なかなか凄いです。

物凄く異質ですが、マッチしてるという感じです。

多分私たちにしかできない内容です。いろいろな意味で。

グレゴリオ聖歌と声明のコラボって割と見聞きしますけど、ここまでドラスティックにお互いの領分に切り込んだものはこれまでなかったでしょう。

そしてこれからもないかもしれません。

お席が残り14席となっております。

お申し込みはお早めに。

g.sakurai.office@gmail.com

――・――・――・――・――

Salicus Kammerchor

――・――・――・――・――

演奏会情報

次回演奏会は

5月の第6回定期演奏会です!

https://www.salicuskammerchor.com/concert

――・――・――・――・――

ウェブショップ始めました!

J. S. バッハのモテット全曲録音CDをはじめ、サリクスグッズをお買い求めいただけるウェブショップを開設しました!

https://salicus.thebase.in/ 

――・――・――・――・――

サリクス通信

サリクスの最新情報や、ここでしか読めない特集記事を配信しています。

http://www.salicuskammerchor.com/mail-magazine-1

――・――・――・――・――

櫻井元希へのお仕事・レッスンのご依頼ご相談、チケットのお求め等は以下のフォームよりお気軽にお問い合わせください。

ダヴィデの声明 如来のイムヌス

ダヴィデの声明 如来のイムヌス

叔母とヤバイ企画をやります。

私の演奏史上最も切れてる企画です。

グレゴリオ聖歌と声明を交互にやるだけならまだしも、グレゴリオ聖歌のテキスト(詩編23)の中国語版を声明風に新作したり、声明のテキストをラテン語訳してグレゴリオ聖歌風に新作して元の声明とポリフォニーしたりします。


セットリスト(予定)はこんな感じです↓

前半「ダヴィデの声明」

詩編第23編
1.”Dominus regit me” グレゴリオ聖歌(ラテン語)
2.モロッコ系の朗唱(ヘブライ語)
3.「主は私の羊飼い」グレゴリオ聖歌風に新作(日本語)4.声明風に新作(中国語)
5.「主はわれらの牧者」高田三郎(日本語)
6.声明風に新作(中古日本語)

後半「如来のイムヌス」

1.「如来妙」 声明(漢文)
2.「色」 グレゴリオ聖歌風に新作(ラテン語)
3.「講式 」声明(中古日本語)+ドローン(ラテン語)
4.「身」 グレゴリオ聖歌風に新作(ラテン語)+声明風ドローン(漢文)
5.「世」 声明(漢文)
6.「間無当等」(中唄)声明(漢文)+グレゴリオ聖歌風に新作(ラテン語)+詩編唱(ラテン語)


今絶賛作曲中なのですが、ほんとね、大変ですね。

ほんとにね、大変ですね。

これを生業にしてる人は本当にすごいなああ。と思っております。

私が自作した曲を披露するなんて機会はもう今後あるかどうかわかりませんので、もしご興味ある方はご連絡ください。

g.sakurai.office@gmail.com

チケットは作ってなくて、予約受付という形にしています。

――・――・――・――・――

Salicus Kammerchor

――・――・――・――・――

演奏会情報

次回演奏会は

5月の第6回定期演奏会です!

https://www.salicuskammerchor.com/concert

――・――・――・――・――

ウェブショップ始めました!

J. S. バッハのモテット全曲録音CDをはじめ、サリクスグッズをお買い求めいただけるウェブショップを開設しました!

https://salicus.thebase.in/ 

――・――・――・――・――

サリクス通信

サリクスの最新情報や、ここでしか読めない特集記事を配信しています。

http://www.salicuskammerchor.com/mail-magazine-1

――・――・――・――・――

櫻井元希へのお仕事・レッスンのご依頼ご相談、チケットのお求め等は以下のフォームよりお気軽にお問い合わせください。

桜井真樹子 「声明入門」に参加してきました

先日、コエダイr合唱団コブシ研究会プレゼンツ、桜井真樹子の「声明入門」に参加してきました。

これまで、光岡英稔先生のBUGAKU講習会に2回、寺原太郎さんのインド古典声楽、と参加してきまして、これが怒涛のインプット月間の最後です。

インド古典声楽の時もそうでしたが、やはり2時間は短かった。

真樹子さんて私の叔母なんですが、ほんともうビックリするぐらい頭が良いんですね。記憶力もずば抜けてるし、回転も速い。

もう全然こちらの思考が追いつかないんです笑

それでも得てきたことをまたここに書きまとめようと思います。

自分のためのメモという性質が強いので、必ずしも読みやすくはないかもしれません。

あらかじめご了承くださいませ。


天台宗大原声明

密教である天台宗は、インドの土着の神々を仏教の中に取り入れ、仏教讃歌の中で、その神々を呼ぶ。

円仁が天台声明の始祖で、これを大原流と称する。

声明には中曲、呂曲、律曲という3つの旋法があって、それぞれインド、中国、日本の5音をとったが、明治以降にまとめられた現在の声明では、呂旋法、律旋法、そしてそれらを行き来する中旋法が使われる。


鐘の音は君なり

声明は鐘の音を模すると言われる。鐘の音のうなりは神様の笑い声であると言われ、大変尊重される。仏教楽器が大抵金属なのは、そういう由来がある。

また色(白・赤・黄・青・黒)のなかで中心は黄色であり、ここから、全ての中心となる音が、黄鐘(おうしょう・こうしょう)と名付けられた。

これは9寸の律管の音の高さであり、現代で言うところのD音に近似する。

中国では9尺のDが黄鐘であったが、なぜか日本では6尺のA(近似値)が黄鐘と定められた。

これが前回のインド音楽入門とつながる大変興味深い話でした。

真樹子さんによると、男系の強い中国では男性の音域に合わせてDに中心音が定められていたが、女系の強かった日本では女性の音域に合わせて5度上のAに中心音が定められたのではないか、とのことでした。

まさしくインド古典声楽でも、男性はD周辺、女性はA周辺にサレガマパダニサのサの音が定められます。

ポップスのメソッドでも男性と女性の音域はおよそ5度ほど違うと言われますので、これも一致します。

教会旋法では、第一旋法の終止音をレと定め、支配音をラとしているということもこうした生理的な部分からくるものも大きいのかもしれません。

現代では中心音は長調の場合はド、短調の場合はラですよね。

合唱では、なぜかハ長調はハモりにくいなどと言ったりするのですが、原因の一端がここにあるのかも、と思いました。

男声合唱はD-Durがハモりやすくて、女声合唱はA-Durがハモりやすいとかあるのかな。

心当たりのある方、教えてくださーい。


声明の記譜法「博士」

声明の記譜法は博士と呼ばれるが、時代によって変遷している。

9世紀ごろの博士→「古博士」

平安末期より→「五音博士」

現代→「目安博士」

ここのところあまり詳しくは説明がなかったのですが、古博士というのが古ネウマみたいなもんかと思いながら聞いてました。

ただ古博士は「ふるはかせ」と読むので「こねうま」とは読み方が違いますね。

そもそも古ネウマと日本語で言うようになったのには古博士が念頭にあったのかもしれません。

時代もほぼ一緒、9世紀ですし、共通点を感じました。

この古博士はそもそもは中国語のアクセントを表したものだったようですが、遣唐使の廃止などで中国文化が日本に入ってこなくなって、中国語のアクセントがわかんなくなっちゃった。それで徐々に「旋律」を書き表す記譜法に変わっていったようです。

つまり音の高さを示すようになっていった。

これも譜線無しネウマから譜線ありネウマへの移行と共通します。


呂曲の旋律型

ユリ

微妙に下に音を揺らす。揺らすといってもビブラートのように高速ではなく、3秒下がって3秒上がるくらいの超スローペース。

そのスピードで、体感16セントくらいの変化なので、知らずに聴くとただのロングトーンに聞こえます。

西洋音楽に慣れていると、本当に微妙な音というのは脳が勝手に補正して、同じ音としてカテゴライズしてしまう。

感覚が鈍化してるんだと思います。

インド古典声楽にも、ミーンドという装飾がまさにこのユリでした。

ユリ上げ

こいつあまさにクィリスマ!

2回ユリをやって3回目で上の音に上がる。

しかしやはりタイム感がグレゴリオ聖歌のそれとは50倍くらい違う。

つまりユリ上げは、50倍に拡大したクィリスマ、と言えるでしょうか。

アサ下り

上がった音の切れ側で「っ」みたいな感じで音を取って、すぐ下の音でまた歌い出す。なんとも文字では説明のしづらい旋律型。

これは類似の歌い方を思いつきませんでした。

ソリ

ユリを拡大したような音型。上がって下がって上がる。グレゴリオ聖歌でいうとトルクルスフレクススに近いけれど、音はずっと滑らかで、折り返しなく繋ぐような感じでした。

マクリ

上に回転するような感じで上がって、上がるときに抜いて、また降りてくる。やってることはトルクルスに近いが、それよりはインドのガマックという装飾法に近い感じ。

ここまでの音型は皆上がるときに下の音を押すようにして、上がったときに抜く。

この感覚は現代の邦楽には残っていないため、できない方が多いそうです。どうしても上の方が強くなってしまう。

これはまさにペスの感覚。下の方に緊張感があって、上の音でスっと抜ける。そしてこの抜けた音の方が大事という、現代の感覚からの逆転現象まで一緒。現代では音が高ければ強いということが多いため、なかなかこのスっと抜ける感覚を身につけるのが難しい。

イロ回し

ここで初めて上の方が強いという旋律型がくる。

イロというのがそれで、これはまさにまごうかたきトリストロファ!

少し勢いをつけて上から素早く引っかけるような感じです。

イロ回しは、イロの前後にマクリとマワシがあるもの。

マワシは下がって(押す)上がる(抜く)って感じ。

というところで真樹子さんによるデモンストレーションを博士を見ながら聞いたのですが、マジでどこやってるかわからねえ。「今、どこやってんすか、あ、まだ「う」のとこですか」って感じでした。


律曲の旋律型

呂曲と律曲って、音階だけじゃなくて、性格が全然違うようで、そのあたりはインド音楽におけるラーガに少し近いかと思いました。

呂曲は鐘の音、律曲はもう少し歌寄りなのだそうです。

ヲル

アサ下りにちょっと似てる感じですが、アサ下りのように上がってって下がるんではなくて、同じ音を伸ばしてから下に降りる。で降りるときにアサ下りのときみたいに「っ」みたいな感じで1回切れる感じ。

律ユリ

これユリなん?って感じでした。ヲルのあとに、アサ下りを2回やってるようにしか聞こえない。

同じユリでも呂と律ではこんなに変わってしまうんですね。

律ソリ

ソリの途中でアサ下りのような音の切れを伴う感じ。上がっていく途中に装飾的な歌い方があるという意味ではサリクスに近いような気もする、という感じです。ただ、アサ下りの「っ」のような音の切り方をグレゴリオ聖歌で試したことがないので、ひょっとすると新たな可能性かもしれません。


というところで呂と律が交互に現れる、中曲の声明を聞きました。呂が鐘で律が歌ってのが、なんっとなくわかりました。

今回はこのあたりで時間切れだったのですが、果てしなさすぎて、わかんないことがいっぱいあるよーって感じでした。

いや、ちゃんとやろうと思ったらやっぱ稽古に通わねばならんのですよね。入門編でなんやわかった気になってはあかん。

しかし西洋音楽、インド古典声楽、そして声明と、興味深い共通点がいくつも見出せて、大変実り多い機会となりました。

それぞれかなり個性的で、インドは言葉を尊重しないどちらかというと純音楽に近い感じ、声明は鐘の音を模するというもう途方も無い価値観の違いを思い知ると同時に、同じ、人間の声を使った芸術ということで、確実につながっている部分があるなということを感じました。

今月と先月でインプットしたことを消化し、自分のものにしていきたいと思います。

また気づきがあったらここに書いていくので、すっごい暇だったらまたお付き合いくださいませ。

――・――・――・――・――

Salicus Kammerchor

――・――・――・――・――

公演情報

次回は第5回定期演奏会

J. S. バッハのモテット全曲演奏会です!

http://www.salicuskammerchor.com/concert

――・――・――・――・――

CD・DVD発売中!

Ensemble SalicusのレクチャーコンサートライブCD

昨年10月に開催されたLa Musica CollanaとのジョイントコンサートのライブCD

第2回定期演奏会のライブDVD

をウェブ販売しております!

http://www.salicuskammerchor.com/goods

――・――・――・――・――

サリクス通信

サリクスの最新情報や、ここでしか読めない特集記事を配信しています。

http://www.salicuskammerchor.com/mail-magazine-1

――・――・――・――・――

櫻井元希へのお仕事のご依頼、チケットのお求め等は以下のフォームよりお気軽にお問い合わせください。