ピッグスクイール考

皆様こんにちは。
こちらはデスメタル関連の記事です。

生理的に無理!という方はご無理なさらずに戻るボタンなりウィンドウの×ボタンなりをクリーック!


先日昔好きだったSentencedというフィンランドのゴシックメタルバンド(初期はデスメタルバンド)を久しぶりに検索してみました。

Sentencedは2005年に解散してるはずなのですが、なぜか2015年発表というアルバムが引っ掛かりまして、おやっ再結成かしら?!

と思い聴いてみました。こちら↓

聴いてみたらデスメタルだもんで、まさかの原点回帰かいな?とも思いましたが、あまりにもテイストが違いすぎるので、検索してみると、このバンド、イギリスでできた新しいバンドみたいです。

伝説的なバンドとおんなじ名前って、それ、ええんかいな?

ちなみにフィンランドのSentencedはこんな感じのバンドです。↓

さてこのような偶然によってであったこのSentenced(UK)ですが、聴いてびっくり、上の動画の2:05あたりからのボーカルの歌唱法は、デス声による倍音唱法じゃあありませんか。
下のリンクからだと2:05から開始します。

あたくしもうとても驚いてしまいまして、しかもこのバンド、このデス倍音唱法をいわゆるサビで使うんですね。つまりサビに歌詞がない

そういう意味ではこれも先日衝撃を受けましたBillie EilishのBud Guyと共通してるんですね。
こちらはサビがインスト(シンセ音を楽器と言っていいのかわかりませんが)です。

なにこれこういうのはやってんの?もうサビに言葉はいらないの?というかSentenced(UK)はBillie Eilishの先駆けなの?とか興奮いたしまして、Facebookのノイズボイスカラオケのグループに投げたんですね。あ、Twitterにも投げました。

それでそのノイズボイスカラオケのグループで徳久さんから返信が来たのですが、曰く

「ピッグスクイールじゃん?」

・・・・あーーーそう・・・ね・・・そうか・・そうね・・・。

言われてみればテクニックとしてはピッグスクイールそのもの。

ピッグスクイールが何かということについてはいわおさんのブログをご覧ください。

http://falsechord.hatenablog.com/entry/2019/10/13/032011

ぬ?このブログ、私の誕生日に書かれてる。私への誕生日プレゼントかな(違

それで私が考えたのは、なぜ私がSentenced(UK)の音声をピッグスクイールだと思わずに、デス声による倍音唱法だと感じたのかということ。

というわけでYouTubeでpig squealを検索!いろいろ聴いてみました。

こうしていろいろ聴いてみると、pig squeelの使われ方にもほんとバリエーションがかなりあるんだなあということ。

動画もピッグスクイールだけでこの他に山のようにまとめがありました。

シャウト的なロングートーン、リズミックにアクセントを加えるもの、基音が高めのもの、低めのもの、なんかちょっとしゃべってるものもありますね。

ちなみに私が気に入ったのはこの人↓

なにこのポップなテクノチューン笑。おっちゃめーーー!

デスメタル界の岡崎体育かよ!笑

それでSentenced(UK)と何が違うのかというと、これらのほとんどはピッグスクイールを効果音的に使っているということです。

それに対しSentenced(UK)は明らかにピッグスクイールによって生成される倍音によって旋律を奏でています。

世の中にはね、二つのピッグスクイールがあるんですよ。

それはね、効果音的ピッグスクイールとね、旋律的ピッグスクイールなんですよ(ドヤ顔)


で倍音唱法でいうとですね、ホーメイを例にとると、舌を口蓋につけるものとつけないものとがございまして、

舌をつけるものをスグット

舌をつけないものをホーメイ(芸能としてのホーメイの中に、技術としてのホーメイがあるんですね。ヤヤコシイ)

というんですね。でピッグスクイールは舌をつけているのでスグット系なわけです。

またホーメイにはさらに

仮声帯が声帯と同じ周期で振動しているもの(ホーメイ、スグット)と

仮声帯が声帯の1/2の周期で振動しているもの(カルグラ)

があるわけですが、音印象として旋律的ピッグスクイールはカルグラの、舌付けって感じですよね。

仮声帯が 声帯の1/2の周期で振動しているもので、舌をつける技術はないのかというとあります。それが、 カンズップКаңзыпです。

というわけで旋律的ピッグスクイールはカンズップに似ているのですが、では何が違うのでしょう。

多分まだはっきりとはわかっていないと思いますが、おそらく、ピッグスクイールのもとになっているフォルスコードなりフライなりのガテラルは仮声帯か声帯かどちらか、あるいは両方が非周期振動をしていると考えられます。

ガテラルはカルグラの親戚

ピッグスクイールはカンズップの親戚

と、言えるかもしれません。

そして、Sentenced(UK)が他のヴォーカルのピッグスクイールと比べて音程感が強いのはひょっとすると声帯は周期振動、仮声帯は非周期振動しているのかもしれません。

そういうわけで私がSentenced(UK)を聴いて、これ倍音唱法じゃんって思ったのだと、考えたのでした。

おしまい。


本文と全然関係ありませんが(もちろん深いところではつながっていますが)、叔母とのコンサートが今週末です。

先日リハーサルしましたが、なかなか凄いです。

物凄く異質ですが、マッチしてるという感じです。

多分私たちにしかできない内容です。いろいろな意味で。

グレゴリオ聖歌と声明のコラボって割と見聞きしますけど、ここまでドラスティックにお互いの領分に切り込んだものはこれまでなかったでしょう。

そしてこれからもないかもしれません。

お席が残り14席となっております。

お申し込みはお早めに。

g.sakurai.office@gmail.com

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ダヴィデの声明 如来のイムヌス

ダヴィデの声明 如来のイムヌス

叔母とヤバイ企画をやります。

私の演奏史上最も切れてる企画です。

グレゴリオ聖歌と声明を交互にやるだけならまだしも、グレゴリオ聖歌のテキスト(詩編23)の中国語版を声明風に新作したり、声明のテキストをラテン語訳してグレゴリオ聖歌風に新作して元の声明とポリフォニーしたりします。


セットリスト(予定)はこんな感じです↓

前半「ダヴィデの声明」

詩編第23編
1.”Dominus regit me” グレゴリオ聖歌(ラテン語)
2.モロッコ系の朗唱(ヘブライ語)
3.「主は私の羊飼い」グレゴリオ聖歌風に新作(日本語)4.声明風に新作(中国語)
5.「主はわれらの牧者」高田三郎(日本語)
6.声明風に新作(中古日本語)

後半「如来のイムヌス」

1.「如来妙」 声明(漢文)
2.「色」 グレゴリオ聖歌風に新作(ラテン語)
3.「講式 」声明(中古日本語)+ドローン(ラテン語)
4.「身」 グレゴリオ聖歌風に新作(ラテン語)+声明風ドローン(漢文)
5.「世」 声明(漢文)
6.「間無当等」(中唄)声明(漢文)+グレゴリオ聖歌風に新作(ラテン語)+詩編唱(ラテン語)


今絶賛作曲中なのですが、ほんとね、大変ですね。

ほんとにね、大変ですね。

これを生業にしてる人は本当にすごいなああ。と思っております。

私が自作した曲を披露するなんて機会はもう今後あるかどうかわかりませんので、もしご興味ある方はご連絡ください。

g.sakurai.office@gmail.com

チケットは作ってなくて、予約受付という形にしています。

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桜井真樹子 「声明入門」に参加してきました

先日、コエダイr合唱団コブシ研究会プレゼンツ、桜井真樹子の「声明入門」に参加してきました。

これまで、光岡英稔先生のBUGAKU講習会に2回、寺原太郎さんのインド古典声楽、と参加してきまして、これが怒涛のインプット月間の最後です。

インド古典声楽の時もそうでしたが、やはり2時間は短かった。

真樹子さんて私の叔母なんですが、ほんともうビックリするぐらい頭が良いんですね。記憶力もずば抜けてるし、回転も速い。

もう全然こちらの思考が追いつかないんです笑

それでも得てきたことをまたここに書きまとめようと思います。

自分のためのメモという性質が強いので、必ずしも読みやすくはないかもしれません。

あらかじめご了承くださいませ。


天台宗大原声明

密教である天台宗は、インドの土着の神々を仏教の中に取り入れ、仏教讃歌の中で、その神々を呼ぶ。

円仁が天台声明の始祖で、これを大原流と称する。

声明には中曲、呂曲、律曲という3つの旋法があって、それぞれインド、中国、日本の5音をとったが、明治以降にまとめられた現在の声明では、呂旋法、律旋法、そしてそれらを行き来する中旋法が使われる。


鐘の音は君なり

声明は鐘の音を模すると言われる。鐘の音のうなりは神様の笑い声であると言われ、大変尊重される。仏教楽器が大抵金属なのは、そういう由来がある。

また色(白・赤・黄・青・黒)のなかで中心は黄色であり、ここから、全ての中心となる音が、黄鐘(おうしょう・こうしょう)と名付けられた。

これは9寸の律管の音の高さであり、現代で言うところのD音に近似する。

中国では9尺のDが黄鐘であったが、なぜか日本では6尺のA(近似値)が黄鐘と定められた。

これが前回のインド音楽入門とつながる大変興味深い話でした。

真樹子さんによると、男系の強い中国では男性の音域に合わせてDに中心音が定められていたが、女系の強かった日本では女性の音域に合わせて5度上のAに中心音が定められたのではないか、とのことでした。

まさしくインド古典声楽でも、男性はD周辺、女性はA周辺にサレガマパダニサのサの音が定められます。

ポップスのメソッドでも男性と女性の音域はおよそ5度ほど違うと言われますので、これも一致します。

教会旋法では、第一旋法の終止音をレと定め、支配音をラとしているということもこうした生理的な部分からくるものも大きいのかもしれません。

現代では中心音は長調の場合はド、短調の場合はラですよね。

合唱では、なぜかハ長調はハモりにくいなどと言ったりするのですが、原因の一端がここにあるのかも、と思いました。

男声合唱はD-Durがハモりやすくて、女声合唱はA-Durがハモりやすいとかあるのかな。

心当たりのある方、教えてくださーい。


声明の記譜法「博士」

声明の記譜法は博士と呼ばれるが、時代によって変遷している。

9世紀ごろの博士→「古博士」

平安末期より→「五音博士」

現代→「目安博士」

ここのところあまり詳しくは説明がなかったのですが、古博士というのが古ネウマみたいなもんかと思いながら聞いてました。

ただ古博士は「ふるはかせ」と読むので「こねうま」とは読み方が違いますね。

そもそも古ネウマと日本語で言うようになったのには古博士が念頭にあったのかもしれません。

時代もほぼ一緒、9世紀ですし、共通点を感じました。

この古博士はそもそもは中国語のアクセントを表したものだったようですが、遣唐使の廃止などで中国文化が日本に入ってこなくなって、中国語のアクセントがわかんなくなっちゃった。それで徐々に「旋律」を書き表す記譜法に変わっていったようです。

つまり音の高さを示すようになっていった。

これも譜線無しネウマから譜線ありネウマへの移行と共通します。


呂曲の旋律型

ユリ

微妙に下に音を揺らす。揺らすといってもビブラートのように高速ではなく、3秒下がって3秒上がるくらいの超スローペース。

そのスピードで、体感16セントくらいの変化なので、知らずに聴くとただのロングトーンに聞こえます。

西洋音楽に慣れていると、本当に微妙な音というのは脳が勝手に補正して、同じ音としてカテゴライズしてしまう。

感覚が鈍化してるんだと思います。

インド古典声楽にも、ミーンドという装飾がまさにこのユリでした。

ユリ上げ

こいつあまさにクィリスマ!

2回ユリをやって3回目で上の音に上がる。

しかしやはりタイム感がグレゴリオ聖歌のそれとは50倍くらい違う。

つまりユリ上げは、50倍に拡大したクィリスマ、と言えるでしょうか。

アサ下り

上がった音の切れ側で「っ」みたいな感じで音を取って、すぐ下の音でまた歌い出す。なんとも文字では説明のしづらい旋律型。

これは類似の歌い方を思いつきませんでした。

ソリ

ユリを拡大したような音型。上がって下がって上がる。グレゴリオ聖歌でいうとトルクルスフレクススに近いけれど、音はずっと滑らかで、折り返しなく繋ぐような感じでした。

マクリ

上に回転するような感じで上がって、上がるときに抜いて、また降りてくる。やってることはトルクルスに近いが、それよりはインドのガマックという装飾法に近い感じ。

ここまでの音型は皆上がるときに下の音を押すようにして、上がったときに抜く。

この感覚は現代の邦楽には残っていないため、できない方が多いそうです。どうしても上の方が強くなってしまう。

これはまさにペスの感覚。下の方に緊張感があって、上の音でスっと抜ける。そしてこの抜けた音の方が大事という、現代の感覚からの逆転現象まで一緒。現代では音が高ければ強いということが多いため、なかなかこのスっと抜ける感覚を身につけるのが難しい。

イロ回し

ここで初めて上の方が強いという旋律型がくる。

イロというのがそれで、これはまさにまごうかたきトリストロファ!

少し勢いをつけて上から素早く引っかけるような感じです。

イロ回しは、イロの前後にマクリとマワシがあるもの。

マワシは下がって(押す)上がる(抜く)って感じ。

というところで真樹子さんによるデモンストレーションを博士を見ながら聞いたのですが、マジでどこやってるかわからねえ。「今、どこやってんすか、あ、まだ「う」のとこですか」って感じでした。


律曲の旋律型

呂曲と律曲って、音階だけじゃなくて、性格が全然違うようで、そのあたりはインド音楽におけるラーガに少し近いかと思いました。

呂曲は鐘の音、律曲はもう少し歌寄りなのだそうです。

ヲル

アサ下りにちょっと似てる感じですが、アサ下りのように上がってって下がるんではなくて、同じ音を伸ばしてから下に降りる。で降りるときにアサ下りのときみたいに「っ」みたいな感じで1回切れる感じ。

律ユリ

これユリなん?って感じでした。ヲルのあとに、アサ下りを2回やってるようにしか聞こえない。

同じユリでも呂と律ではこんなに変わってしまうんですね。

律ソリ

ソリの途中でアサ下りのような音の切れを伴う感じ。上がっていく途中に装飾的な歌い方があるという意味ではサリクスに近いような気もする、という感じです。ただ、アサ下りの「っ」のような音の切り方をグレゴリオ聖歌で試したことがないので、ひょっとすると新たな可能性かもしれません。


というところで呂と律が交互に現れる、中曲の声明を聞きました。呂が鐘で律が歌ってのが、なんっとなくわかりました。

今回はこのあたりで時間切れだったのですが、果てしなさすぎて、わかんないことがいっぱいあるよーって感じでした。

いや、ちゃんとやろうと思ったらやっぱ稽古に通わねばならんのですよね。入門編でなんやわかった気になってはあかん。

しかし西洋音楽、インド古典声楽、そして声明と、興味深い共通点がいくつも見出せて、大変実り多い機会となりました。

それぞれかなり個性的で、インドは言葉を尊重しないどちらかというと純音楽に近い感じ、声明は鐘の音を模するというもう途方も無い価値観の違いを思い知ると同時に、同じ、人間の声を使った芸術ということで、確実につながっている部分があるなということを感じました。

今月と先月でインプットしたことを消化し、自分のものにしていきたいと思います。

また気づきがあったらここに書いていくので、すっごい暇だったらまたお付き合いくださいませ。

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八咫烏×八重桜×柳嶋耕太終演→イケダギャラリー東京「小池隆英展」

ベランダのプランターに思いつきで植えたマンゴーの種から芽が出ました。

311以来何も植えてなくて荒れ放題だったプランターに異国情緒あふれる芽が出てきてテンションが上りました。


一昨日は実に刺激的な一日でした。

まず昼間は八咫烏×八重桜×柳嶋耕太のジョイントコンサートでした。

ご来場下さいました皆様、誠にありがとうございました。

今回初めてトップテナーということでプレッシャーも大きかったのですが、相方がトミーなので安心でした。声の区別がつかないくらいブレンドしていたというお客様からのお言葉をいただけてホッとしています。

八咫烏のステージは、個人的にはあの5倍位ハジけたいと思っていましたが、そこのところは今後の課題といたしまして、精進いたします。

合同ステージは本番が一番良かったと思います。柳嶋さんの指揮に導かれて音楽が引き出されていました。ただ指揮者と歌い手の関係が普通の合唱団とのそれに近く、私個人としては、アンサンブル的に一人ひとりの音楽がバチバチぶつかりあうような音楽がしたかったかなと、反省しております。つまりそれまでのステージに比べ、歌い手が受け身になりがちだったのではないかと。これも今後の課題としたいと思います。

とは言うものの八咫烏も八重桜も毎回演奏会ごとに成長を感じられます。確実に毎回、前回よりもステップアップしていっていると実感できます。中で歌っていてそう思います。

アンサンブルのレベルアップは個人のスキルアップにかかっている部分が大きいので、今後より一層努力をしていきたいと決意を新たにいたしました。

今回も平舘平さんが素敵な写真をたくさん撮ってくださいました。

私の足の曲がり方が気持ち悪い・・・笑


演奏会の打ち上げを1時間で切り上げて(すごい勢いで食べた)大井競馬場前駅近くのイケダギャラリー東京で行われたブルードレスプレゼンツのイベントに行きました。

ブルードレス→http://www.bluesdress.com/

たまたま本番の日と重なってしまって、泣く泣く打ち上げを切り上げたのですが、それを補って余りある刺激的なイベントでした。

小池隆英さんという抽象画の方をイケダギャラリーは以前よりかなり力を入れて紹介されているようで、今回はその旧作、近作を集めた展覧会でした。

そして作家さんご本人をお招きして、自ら作品についてお話しいただくという滅多にない機会で、大変興味深いお話が聞けました。

この感覚は現代音楽のリハーサルで、作曲家をお招きしてお話を伺うという感覚に近かったです。そういうときも思うのですが、普段古楽をやっている身からすると本当に贅沢なことで、いわばジョスカンやバッハに、これってどういうこと?とか聞けるということなので、ほんと最高です。

ただ作品を見ているだけでは絶対にわからない、作品のおもしろさや、何を考えながら描き進めていったかなどのお話を聞けたのですが、お話を伺いながら、例えば演奏会プログラムの解説やMC、ブログやなんかで音楽の情報を発信するということについても考えさせられるものがありました。

人間ってほんと単純なもので「ここはこうやりました。こういうことです」と言われると、ほんとにそういうふうに受け取ってしまうんですよね。

初めに10分くらいざっと作品を見させていただいてから、解説のコーナーになったのですが、解説を聞いてからもう一度同じ絵を見ると、まったく違うように見えてしまうのです。

これは「良し悪し」だな。と思いました。

こういう技法で、こういうことをやってみようと思って描きました。と言われると、相当意識していても、「そこ」を見てしまうんです。

それで、なんかわかった気になっちゃう。

でもそれって作品のほんの一側面であって、言葉に出来ない精神的な世界の広がりを矮小化してしまいかねないな。と。

大体より核心的なことって、言葉には出来ないところにあるのだから。

逆に解説を聞くことで、「うわーそんなことになってるんだ!面白い!」って思ってそこから作品を見る目が変わったり、それまでの自分にはなかった価値観に触れられたり、素晴らしい面ももちろんあって。

核心的なことって、言葉の意味そのものからよりも、それを話している人から出るなにがしかのエネルギーから感じ取るものなんですよね。だから解説を聞いている方も、言葉の意味内容そのものを聞くということもさることながら、同時にその人から溢れ出る、滲み出すそのなにがしかを感じ取ろうとしなきゃいけない。

むしろそっちのほうが大事。話の内容は実は二の次だったりする。極端な話、「あー」とか「うー」でもいいんです。「この作品はですね、うーー、あーーー、えーー」「ありがとうございます。伝わりました」でいいのです。

言葉を発する方としては、何を言うにしても、その言葉からに滲み出るなにがしかを感じてもらえるような喋り方をしなければ、言葉の内容がどんなに正しくても、聞き手に核心的なことを伝えることはできないのだと思いました。

それって書き言葉でももちろんあって、僕が一番それを感じたのはこのブログでもなんども紹介している、古東哲明先生の本です。

最初読んだときは、はっきり言って半分も意味わかりませんでした。でもね、物凄く感動したんです。これは凄い。なんだかよくわからんが凄い。絶対凄い。この人の言ってることがわかるようになりたい!そう思ったんですね。

もうそれはそれは凄いですよ。文章から出てくるエネルギーたるや。それまで感じたことのないエネルギー量でした。

というわけで、そんな文章が書けるようにならなければ、いつまでたっても発信するものが「情報」で終ってしまう。

そんな文章が書けるようになりたいと思います。(これを読んでくださっている皆様にはどれだけ伝わっているでしょうか)

MCなんかもそうで、予め内容を決めて、それを喋ったほうが絶対わかりやすいし、評判もいいんですが、情報量は少なくとも、そのなにがしかが伝わるようなやり方のほうがいいのではないかと思うようになりました。しかし、本当に難しいです。つまんないって思ってそもそも聞くのをやめてしまうような話でもいかんし。


個人的に小池さんに質問することも出来たので、ちょっと思い切って失礼なことを聞いてみました。

「小池さんの一番の武器ってなんですか?」

失礼ですよね笑。わかってます。

小池さんは「色」に執着があって、どちらかというとそれに対しては苦手意識を持っていたし、今も持っているそうです。しかもそこにこだわりを持っていてもにわかには評価されない。まず線とか、形とか、デッサン力的なところが評価の対象になるので、色なんかこだわってても評価されない。でもだからこそそこにこだわっている人がいなかったのだそうです。自分はそこにこだわり続けたことが武器になっているのではないか。そういうお話が聞けました。

凄くよくわかります。なんか色んな人をディスりまくることになりそうなのであまり詳しくは語れませんが、芸大在学当時、やはり評価されるのは「声の大きい人」でした。というかまずそこをクリアしないと評価の対象にさえ入らない。そういう感じでした。だから、どんなに繊細に言葉の抑揚、旋律の息遣い、音楽のカラーや雰囲気などに強いこだわりがあっても、それが評価はされることはないんですね。

非常に重なる部分がありました。

小池さんにはあと2つ質問したいことがあったのですが残念ながら今回は時間切れ。またの機会があるかどうかわかりませんが、温めておきたいと思います。


今回主な参加者はブルードレスの顧客だったのですが、櫻井家の最先端アンダーグラウンダーである叔母をぜひ長坂さんに紹介したくて、妻と3人で参加させていただきました。

叔母と話しているとほんと話題が尽きないので(このコミュ障の私が)いつも蕨駅まだ話が終わらずにさようならになります。

昨日も、抽象画は即興に似てる、グレゴリオ聖歌の即興性という話から、結局「シャーマンは孤独だ」というところで駅についてしまったので(謎)、この話題は次回に持ち越しになりました。

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ヴォーカル・アンサンブル カペラ「ラ・リューの聖母ミサ」終演

ヴォーカル・アンサンブル カペラ「ラ・リューの聖母ミサ」終演

昨日まで3日連続で行われました、カペラのラ・リュー公演終演いたしました。

お越しくださいましたお客様、誠にありがとうございました。


初日は鎌倉の由比ガ浜教会。いつも寒いイメージがあって防寒対策完璧で行ったら、エアコンが新しくなっていて、とっても暖かく快適でした。

ありがたやー。

由比ガ浜教会はほんとにいつもお世話になっていて、美しい教会で、行くたびにパワーを貰えます。

凄く短いですが、動画を撮りましたので貼っておきます。

ラ・リューの3重カノンのモテット”Ave sanctissima Maria”です。


二日目は九段教会でした。初めて使わせていただく会場で楽しみにしていましたが、快適な響きで非常にあたたかな雰囲気の教会でした。

演奏会後には、カペラの会員の方々とのパーティもありました。この日は父が広島から出てきていたので私は中座させていただいたのですが、そこで思いがけず父とともに一言スピーチすることに・・・笑

ポリゴノーラの宣伝をさせていただきました笑

ポリゴノーラの演奏動画はこちら。レクチャーの最初の部分です。

素晴らしい演奏です。

そしてこの夜は父と叔母と渋谷でサルディーニャ料理を食べました。

3人で話していると、本当に血は争えないなあ、という感じで、永遠に喋れます。

叔母は今サリクスのメルマガにも記事を寄せてくれていますが、声明やユダヤ教の聖歌ディワンなどを演奏するパフォーマーで、かなり私たちのやっていることと共通する部分があります。

今回話したことも、そのまま文字に起こしてメルマガに載せても、サリクスのファンの方は喜んでくださるだろうなというような内容でした。私たちはある意味クラシック音楽の脈絡からは孤立したアプローチをしていますが、クラシック音楽以外の視点からその意義を認めてもらえるような気がして、とても心強かったです。

父は科学者ですが、音楽と科学って、真理を追求するということではとても共通していて、根本的なところではつながっているので、それもまた心強いです。

一見価値があるようには思われなくて、見向きもされないようなことでも、それを信じて追求するということそのことに価値があるのだと(たとえそれが後に完全に否定されたとしても)、そういうことも話しました。


3日目は近江楽堂でした。

近江楽堂はカペラがジョスカンのレクチャーコンサートをやっていたころは頻繁に使わせていただいていたのですが、最近はなかったのでとても久しぶりでした。

近江楽堂は響きがかなり独特で、お客さんのいない時は響きすぎるくらい響くのですが、お客さんが入るとそうでもなくて、しかも演奏している方と聴いている方ではかなり聞こえ方の違うという難しさがあります。

しかしここにしかない独特の魅力というのもたしかにあって、お客さんとの距離の近さ、音に包まれるような感覚、現実世界から抜け出たような特殊な雰囲気というのがなかなか他では得難いものがあるなあと思いました。

6月の公演でご一緒する佐藤裕希恵さん(芸大古楽科の先輩でもあります)と、以前北とぴあのオペラでご一緒させていただいた高橋美千子さん(それ以来私は彼女のただのファン)がお客さんとしていらしていて大変ドキがムネムネしました笑


ラ・リューのメモリアルイヤー最初のコンサートが終了しましたが、今年はラ・リューの作品を集中して勉強、演奏出来る年になりそうです。

フォンスフローリス古楽院でも新年度からはラ・リューに取り組む予定です。

またヴォーカル・アンサンブル アラミレでも、秋の演奏会に向け準備をスタートしています。前回の記事にも書きましたが、ミサ「ロム・アルメ」、非っ常に興味深い作品です。また紹介していければと思います。

この機会を逃さないようにしっかりやっていきたいと思いますので、ぜひ一緒にこのメモリアルイヤーを楽しみましょう!

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