アラミレ | Agnus問題

アラミレ | Agnus問題

今日はアラミレのリハでした。

イザークのミサcomme femmeをやっているのですが、アニュスにちょっとした問題が起こりました。

このミサが収録されている写本で、主なものとしては3つあります。

そのうち今回アラミレではバチカンのカペラシスティーナにある写本を使っているのですが、その写本と、他の2つの写本、バルセロナの図書館にある写本、ペトルッチ(1506年の出版譜)との間に大きな差があるのです。

まずアニュスのテキストは3つの部分に分かれていて、Agnus dei qui tollis peccata mundiという上の句は3つとも共通、下の句が第1・第2アニュスではmiserere nobis、第3アニュスではdona nobis pacemとなっています。

それがペトルッチでは

第1アニュスーー4声

第2アニュスーー3声

第3アニュスーー5声

という構成になっています。真ん中の部分で声部を減らして、最後は声部数を増やすというのはよくあるやり方でしっくりきます。

それに対し、アラミレで使っている写本、カペラシスティーナでは、

第1アニュスーー4声(ペトルッチにはない)

第2アニュスーー4声(ペトルッチの第1アニュス)

第3アニュスーー3声(ペトルッチの第2アニュス)

となっています。

ずっと4声できていて、ミサの最後で3声になってそれで終わりなんてことあるでしょうか?!

ちなみにバルセロナの方は、第1第2はペトルッチと共通で、第3は欠如しています。

ものの本によると、カペラシスティーナの方を、信用ならんと切り捨て、カペラシスティーナの第1アニュスは別人による作ではないかと結論づけています。

3声でミサを終えるというのもあまりに斬新すぎるので、今回アラミレではペトルッチの構成を採用しました。

そう!勘の良い方はお気づきでしょう!ペトルッチ↓ってパートブックなので、演奏するにはクワイヤブックにしなければならないのです!

 

それも参照できる画像は相当粗く、拡大してクワイヤブックにできるほどのクウォリティではありません。

どうしよう、と考えた挙句、全部手書きすることにしました。

いえーい初めてのクワイヤブック全手書き!

とはいえ一番面倒なのは五線です。当時はラストラールという5つの股に分かれたペンがあったので簡単に書けましたが、今はそういうものが手に入らないので、一本ずつ書かなくてはなりません。

これは相当面倒です。

そこで、適当な写本を見繕って、空の五線のあるページを探しました。

それがこれ↓


微妙な歪み具合とか最高ですよね。

これにまず音符を書き入れていくのですが、5声なので、左ページにはソプラノとテノール2声、右ページにはアルトとバスを入れなければなりません。

そして、明らかに1ページには収まらないので、どこの瞬間にページをめくるかということも考えなければなりません。(パート譜とちがってクワイヤブックでは全員同時にページをめくるので、そこが一致していないといけないのです)

まずペトルッチの各パートが全長何センチなのかを計りました。

それぞれを大体半分に割ってこの辺かなってところでめくりをいれることにして、1パートにかけられる段数を計算します。

その段数で、何センチのソプラノを収めるためには音符1つがこのくらいで、、、非常に綿密な計画のもと音符を書き始めます。


音符だけ書き入れた状態がこちら。メモによるとバスは50センチ、アルトは75センチだったようですね。


ソプラノは4段、テノール1は2段、テノール2は3段という塩梅になりました。

これに今度はイニシャルを入れていきます↓

こう見えてAgnusの”A”です。

別の写本をお手本に書きました。

こちらはBass、ソプラノ以外はイニシャルの部分にパート名が入ります。

そして最後に歌詞を書き入れて。

完成!

どうです?結構上手でしょう?(自画自賛)

今日始めてこの楽譜で音出ししましたが、間違いが山ほどありました(爆)


Vocal Ensemble Alamire 第10回演奏会

日時:2017年9月24日(日)開場16:00/ 開演16:30

会場:大森福興教会

 

入場料:2,500円 (当日はプラス500円になります) 全席自由

曲目:
グレゴリオ聖歌
聖母の七つの御悲しみの祝日ミサ固有唱
Gregorian chant
Proprium missae in Festo Septem Dolorum Beatae Mariae Virginis
ハインリヒ・イザーク
ミサ《うちひしがれた女のように》/「天使、大天使」
Heinrich Isaac (ca. 1450/55-1517)
Missa Comme femme desconfortee / “Angeli, archangeli”
ジョスカン・デ・プレ
「スターバト・マーテル (悲しみの聖母)」
Josquin des Prez (1450/55?-1521)
“Stabat mater”

詳細はコチラ→http://www.geocities.jp/alamirejp/concert.html

 

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ヴォクスマーナ第38回定期演奏会終演

ヴォクスマーナ第38回定期演奏会終演

昨日、ヴォクスマーナの定期終演致しました。

ご来場くださった皆様、誠にありがとうございました。

(↑ゲネプロ直前、なぜかオンステしてないはずの松井さんがいます笑)

(↑Lightroomというアプリで撮影、編集したのですが、やはり大変暗かったのでガサガサした感じになっちゃいますね)

個人的に感慨深い演奏会でしたが、作品はどれもそれぞれの難しさのある難易度の高い曲でした。

特に私は近藤譲さんの作品が飛び抜けて好きでした。プログラムノートにある近藤譲さんのコメントを見てまた好きになりました。

「そう意識して作曲したわけではないのだが、この音楽は、多分ドビュッシーとヨハネス・オケヘムの音楽に対する私の敬意を何らかの形で反映しているのではないかと想う」

ドビュッシーはよくわかりませんが、旋律に対して旋律を合わせていく繊細さ、あやうさ、規則的に、また絶妙に予想を外しながら旋律をずらして重ねていく作法など、オケゲムっぽさは凄く感じました。

でも、やっぱりとくに現代音楽については、どこがどうとかって言うのは難しくて、出てきた音の作る空間と、時間との関わりの中にその人が表れて、そこに求道心というか、やっぱり気合いって言ったほうがわかりやすいと思うけど、それがあるかどうかってことなんだと思うんですね。

それで、やっぱりそれはその時その場にいないと感じることの出来ないものだと思うんです。

録音にそれを閉じ込めることができるんだろうかと、思います。空間、までも。


打ち上げの模様です↑

この写真だと何の演奏会かわかりませんね。左の二人は、受付をやってくれたカンタータクラブの後輩です。こういうとき積極的にちょけるのは先輩の役目ですね笑


さて、来週は合唱団フォンスフローリスの演奏会です。

最近ルネサンスと現代音楽ばかりやっていたので、なんだかバロックが久しぶりです。合唱団の皆さんと一緒に歌わせていただきます。

ヴェルサイユのグラン・モテ

2017年7月30日(日)午後7時15分(午後6時45分開場
渋谷区文化総合センター大和田 4階 さくらホール

演奏曲目
□ニコラ・ベルニエ Nicolas Bernier (1665-1734)
「主に向かって新しい歌を歌え
“Cantate Domino canticum novum“
「わたしをあわれんでください、神よ」
“Miserere mei Deus“
□アンドレ・カンプラ Andrè Campra (744-1660)
「天の元后、喜んでください」
“Regina coeli laetare”

チケット料金
前売 3,500円 当日 4,000円 学生2,500円

詳細はコチラ↓

http://www.fonsfloris.com/choeur/

過去の演奏動画も聴けます。↑

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カペラ・カテドラル公演終演→ヴォクスマーナ公演明日

昨日、ヴォーカル・アンサンブル カペラ20周年記念演奏会1、カテドラル公演が終演致しました。

ご来場くださった皆様、誠にありがとうございました。

最高の環境のもと、少なくとも自分にとっては、やれることをすべてやれたと思います。終わってホッと一安心です。

今回後半にソリが4曲あって、そのうちの1曲は長大なアニュスのデュオで、かなりブドウ糖を消費するプログラムでした。

由比ガ浜公演では休憩中の糖分摂取が不十分だったようで、ミスが出たところもありましたが、カテドラル公演では反省を活かし、存分に糖分摂取を行い、ノーミスで演奏することが出来ました。

血糖値、大事。

物販も好評だったようで、マグカップもTシャツもほとんど売り切れたそうです。ありがたいことです。

(ちなみにサリクスもTシャツ売ってますのでご興味のある方はコチラをどうぞ。ステマ笑)

カペラは今度は10月3日、パレストリーナの超有名曲、教皇マルチェッロのミサを演奏します。なんと20年の歴史でパレストリーナを演奏するのは初めてだそうです!

なんというかこう、聴衆に媚びない頑なさみたいなものも感じますが笑、ついに解禁、といったところでしょうか。今回のメンバーに、青木洋也さん、谷本喜基くんを加えた豪華な編成で、またカテドラルで演奏させていただきます。

こちらもどうぞよろしくお願いいたします。

本番前のメンバーの様子↓

叙唱の練習をする研一郎とプログラムを朗読するトミー↑

それぞれのやり方で集中力を高めるメンバー↑


さて、ほっとする間もなく明日はヴォクスマーナの公演です。

今日最後のリハーサルを終えました。

↑今日のリハーサル会場近くの川

↑川沿いにあるためか、総コンクリートの神社

ヴォクスマーナもカペラ同様20周年、20年前というと私は若干10歳。失楽園、鉄道員、少年Hがベストセラー、ハイパーヨーヨーがヒットし、サッカー日本代表がジョホールバルの奇跡でワールドカップ出場を決めた年だそうです。

凄い。。20年って凄い。。。

今回は4曲全てにオンステします。全ステージオンステは通常の定期公演では初めてかもしれません。

ここでしか得ることの出来ないものを、感じ、考えられる機会になると思います。

チケットお申込みはぜひ私の方までお願いいたします。

 

ヴォクスマーナ第38回定期演奏会

2017年7月20日(木)19:00開演
東京文化会館小ホール

一般3,000円(当日3,500円)、大学生1,500円、高校生以下1,000円

山根明季子(b.1982)/ 水玉コレクションNo.15 (2012委嘱作品・再演)
横島 浩(b.1961)/ Interval Ⅱ「泣いてみたくなった ~“I felt like crying”」(2013委嘱作品・再演)
大胡 恵(b.1979)/ ずっと月がキレイ (委嘱新作・初演)
近藤 譲(b.1947)/ 嗟嘆(といき)(委嘱新作・初演)  詩:ステファンヌ・マラルメ 訳:上田敏
伊左治直(b.1968)/ 或る日の手紙(2013・アンコールピース7委嘱作品・再演)  詩:新美桂子

 

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カペラ由比ガ浜公演終演

昨日、ヴォーカル・アンサンブル カペラ結成20周年記念演奏会1、由比ガ浜公演が終演いたしました。

ご来場くださいました皆様、誠にありがとうございました。


ゲネプロの模様。白熱し過ぎて1時間押しました。


美しい由比ガ浜教会。


今回の演奏会場ではカペラの最新CDを先行販売しております。


昨日いただきました。

私にとってのカペラデビューCDです!

買ってね!

ジョスカンの世俗歌曲によるミサ2曲が収録されてます。

私もまだ聴いてません。楽しみです!


そして20周年記念グッズも作りました。


Tシャツ2600円です。この写真は昨日の打ち上げ(?)です。


こちらは写本マグカップ。オケゲムのミサ・カプトの写本なので、マグカプトらしいです笑

それぞれ明後日のカテドラル公演でも販売しますので、ぜひお手に取ってご覧ください!

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リハまみれ

リハまみれ

このところリハが立て込んでおりまして、こちらの更新をご無沙汰してしまいました。

主にカペラとヴォクスマーナのリハです。この団体は両団体とも今年20周年。ほんと凄いです。

ヴォーカル・アンサンブル カペラ ホームページhttp://www.cappellajp.com/

ヴォクスマーナ ホームページhttp://vox-humana.wixsite.com/vox-humana


上の写真は、京浜東北線で朝ヴォクスマーナに向かう途中、ちょうど荒川の上で電車が止まっちゃったんですが、あまりに水面が美しかったので人目をはばからず撮りました。

怪我の功名です。


先週金曜はカンタータクラブに久しぶりに伺ってみると、演奏委員長も副演奏委員長も不在ということで、そういうことであればと、2年ぶりにカンタータクラブを指導させていただきました。

何が驚いたかって弦の人数。私がいた頃はリハにパートが揃っていればいい方で、各パート複数人揃っているのは本番だけ、みたいな状況でしたが、この日はファースト4人セカンド4人ヴィオラ3人とかそのくらいいました。ちゃんと数えてなかったから大体ですごめんなさい。

コンバスも3人いて、流石に3人同時に弾くことはなかったけど笑、交代で弾いてました。なんてこと笑

今カンタータクラブのグループラインは120人登録されてるそうです。空前絶後とはこのこと!去年の倍くらいいるん違います?

彼らの次の本番は8月12日の日光真光教会での演奏です。どうぞ応援よろしくお願いいたします。


土曜の午後はフォンスフローリス古楽院の講座でした。4回目でだんだんみなさんも計量記譜法に慣れてきたようです。日本で計量記譜を学べるところはそんなに多くないので、この講座はおすすめです。

こういう楽譜(クワイヤブックといいます)で歌います(この楽譜はアラミレで歌うミサですが)。


土曜の夜は師匠ことライプニツレコードの新村氏宅へ伺い、諸々の悪巧みをしました。拓さんも一緒に行ったので、やることが山のようにあったのに焼肉にも行ったので、結局幾つか仕事を積み残してしまいました。

が、この日作った動画は先日公開出来ましたので、よろしければご覧ください。

そしてちなみにこの曲をリハーサルしているときの模様がVR動画で公開されています。こちらも面白いのでご覧下さい。


日曜午後はバッハカンタータアンサンブルのリハでした。

この度の演奏会のためのリハとしては初めてのオケのリハーサルもやりました。4時間のリハ時間中前半2時間オケで後半2時間合唱だったのですが、オケも合唱もアマチュアで、それぞれにアシスタントがいて、何回かは合同でリハが必要で、それぞれのリハ内容ということまで考えるとなかなか複雑です。

こちらは11月26日の本番に向けてリハを積んでいっています。

よく考えたら計道会の本番は23日・・・結構大変だな・・ふふふ。

この日の夜は櫻田亮先生宅へレッスンに伺いました。先生お忙しくて日曜の夜にまでレッスンを入れなければならないなんて大変・・・。今回からマタイのエヴァンゲリストをみていただくことになりました。いつか歌わせて頂ける日がくるでしょうか。


月曜はヴォクスマーナ→カペラ→計道会でした。最近こういうパターンの日が多いです。先週の月曜もこのパターンでした。

ヴォクスマーナはもともと9時からリハをする珍しい団体(だいたい午前は10時始まりが多いでしょうか)なのですが、今回は特に午前のリハが多く、満員電車に揉まれることが増えました。

「時差ビズ」やっているそうですが、どうでしょうか?あんまり実感なかったです。12日の朝は少し少なかったかな。13日の朝とかは電車遅れていたのでめちゃ混んでましたね。

「時差ビズ」ホームページhttps://jisa-biz.tokyo/

↑立派なホームページだあ。お金かかってる。

ともあれほんと満員電車はたったひとりでも車両に人が少ないだけでもありがたいので、効果があるのであれば続けてほしいです。そろそろデータ公表されないのかな。

ヴォクスマーナですが、今回も演奏曲目は4曲、そのうち2曲は新作初演です。

第38回定期演奏会

2017年7月20日(木)19:00開演
東京文化会館小ホール

一般3,000円(当日3,500円)、大学生1,500円、高校生以下1,000円

近藤 譲(b.1947)/ 嗟嘆(といき)(委嘱新作・初演)  詩:ステファンヌ・マラルメ 訳:上田敏
大胡 恵(b.1979)/ ずっと月がキレイ (委嘱新作・初演)
山根明季子(b.1982)/ 水玉コレクションNo.15 (2012委嘱作品・再演)
横島 浩(b.1961)/ Interval Ⅱ「泣いてみたくなった ~“I felt like crying”」(2013委嘱作品・再演)
伊左治直(b.1968)/ 或る日の手紙(2013・アンコールピース7委嘱作品・再演)  詩:新美桂子

事情により私がヴォクスマーナに参加するのは今回で最後にことが濃厚なので、是非聞きに来ていただきたいです。

今回の曲の中では特に近藤譲さんの作品が個人的にツボです。めっちゃくちゃ難しいですが、これぞ近藤譲、近藤譲にしか書けない音、近藤譲ワールド炸裂してます。

前回歌わせていただいた薔薇の下のモテット同様構造ははっきりとしているし、ポリテキスト出ない分薔薇の下のモテット以上にシンプルで聴きやすいですが、演奏はめちゃめちゃシビアです。単純に音程が非常に難しい。自分の出す音で他のパートと半音でぶつかってない音を探すほうが難しいのではないかと思います。そのくらい四六時中どこかのパートと半音でせめぎ合っています。

間違いなく、ここでしか聴けない音、をお聞かせできます。


そしてカペラはジョスカンの聖母ミサとイザークのモテット。

両方共超ド級の名曲です。

ジョスカンのミサといえば(なぜか)パンジェリングワが代表作のように言われていますが、私個人としてはこの聖母ミサがジョスカンのミサの最高峰じゃないかなと思います。

宣伝をする時に、聞き所をお知らせするのは大事なことだと思いますが、この曲、聞き所は全部です笑。端から端まで凄い。素晴らしい。

ですがそれだと流石に手を抜いたっぽいので笑、特にクリステとグロリアのアーメンとオザンナを推しておきましょうか。

クリステは、もとの聖母ミサのグレゴリオ聖歌がこうなってるんですね。(クレフ消えちゃった。一番上の線にハ音記号です。)

なんというか、これほぼそのままなんです。この旋律を使ってバスとテノールが長大なカノンのデュエットをして、それと全く同じことをソプラノとアルトがデュエットして、それで最後申し訳程度に4声揃っておしまい。

ただこれだけ、申し訳ないけど現代的な意味での面白さは皆無です。展開とか、発展とか、そういうの一切ない。あるのは謙虚で瞑想的な祈りのみです。

現代の音楽愛好家がこれを聞くと、もはやこれは音楽なのだろうか、と判断に困るくらいのしろものです。でもそういう価値観じゃないんです。我々の音楽的価値観をぶっ壊してくれる、そんな凄い曲です。

あとの2つ、グロリアのアーメンとオザンナは、似た理由で凄いです。これはもうなんというか、カオス?各パートが一見拍もなにも無茶苦茶に歌っているように見えてすんでのところで音楽が成立している。物凄い危うさと緊張の中にどぎつい美しさがギラギラしてる。これはもう興奮の坩堝です。こっちのほうが私たちにはわかりやすく凄いです。

洗濯機が左右全くランダムに回っていて、かき回されている洗濯物の気持ちになります。今日はお洗濯日和ですね。。

そして最後に演奏する6声のイザークのモテット、これも当時からめちゃ有名だったそうで、超名曲です。6声といいながら演奏時間の3分の1くらいはデュエットです。

アカペラのデュエットって、歌ってみればわかりますが物凄い痺れます。ポリフォニーの最小単位で、もうなんというか髪の毛一本の隙間もないくらい繊細なんです。説明が難しすぎるのでもう聴きに来て!笑

あ、そうジョスカンの聖母ミサの第2アニュスもデュエットです。こちらは1曲まるごとデュエットです。長いです。血糖値上げていかないと脳内のエネルギーが切れた瞬間オシマイです。

こちらはそのリハーサルの模様。なぜこんな手の形になっているのか、えー、理由は不明です。(これかぶちゃんがとってくれたのですが、よく見たら右下にスノウの文字、なぜ?笑)

そうそう、これ私にとって結構大ニュースなんですが、私がカペラに入って初めて参加したCDが(ようやく←それは言わないお約束)発売になります!

この演奏会で先行発売になりますのでこちらも是非!

カペラ 結成20周年記念演奏会1 ジョスカン・デ・プレ 聖母のミサ

2017年
7月16日(日) 午後5時 カトリック由比ガ浜教会
7月18日(火) 午後7時15分 カトリック関口教会・東京カテドラル

 

グレゴリオ聖歌 Gregorian chant
 聖母被昇天のミサ固有唱
 Proprium missae de Assumptione Beatae Mariae Virginis

ジョスカン・デ・プレ Josquin des Prez (1450/55?-1521)
 ミサ《デ・ベアータ・ヴィルジネ》(聖母ミサ) Missa De beata virgine 
  「思い起こしてください、おとめである御母よ」 “Recordare, virgo mater”
  「めでたし いとも聖なるおとめ」 “Ave virgo sanctissima” 
 
ハインリヒ・イザーク Heinrich Isaac (ca. 1450/55-1517)
 「いとも聡明なおとめ」 “Virgo prudentissima”

superius: 花井尚美 安邨尚美 鏑木綾 田村幸代
contratenor/tenor: 望月裕央 及川豊 根岸一郎 富本泰成 渡辺研一郎
bassus: 櫻井元希 花井哲郎(Maestro di Cappella=音楽監督)

7月16日
前売:一般4,000円 ペア7,400円
当日:一般4,500円
学生:2,500円

7月18日
前売:一般4,500円 ペア8,400円
当日:一般5,000円
学生:2,500円


えー長くなってしまったので、今回はこれくらいにしておきます。

火曜は八咫烏のリハもあったりしたのですが、またいずれ書きます。

 

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Salicus Kammerchor

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公演情報更新しました!

次回公演は10月18日、Ensemble Salicusのデビューコンサートです!

http://www.salicuskammerchor.com/concert

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DVD発売中!

第2回定期演奏会のDVDをウェブ販売しております!

http://www.salicuskammerchor.com/goods

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