リモート合唱の試み

皆様、いかがお過ごしでしょうか。

私は相変わらず、今できることは何か、できることのうち最も効果的なのかを模索する日々です。

サリクスの演奏会が延期にせざるを得なくなって、かなり落ち込みましたが、メンバーに対する寄付もかなりの方にお申し出頂き、また身を起してできることを一生懸命やろうという思いです。

前回の記事はこちら↓
新型コロナウィルス感染拡大を受けて


ウェブ会議アプリ(Zoom)を使った練習

合唱団エレウシスとアンサンブルアラミレでZoom練習を試してみました。

Zoomは個人練レッスンでも使っているアプリで、設定さえうまくやればなかなか音質がいいです。

会議のためのアプリなので、誰かが音を出している間は他のマイクに音が入らなくなるため、大人数で声を出すと、切れ切れに誰かの声が聞こえるという状態になります。

そのため練習の進め方としては、リーダー(指導者)だけマイクをオンにし、ほかのメンバーはミュートにして、リーダーと一緒に歌うという形がメインになります。ホストには、ほかのメンバー全員をミュートにしたり、ミュートを解除するという機能があるので、便利です。

曲の説明をしたりするときは他のメンバーは声を出していないのでミュートする必要はありません。なのでこの時はメンバーの反応を聞くことができます。

ただ歌う段になると、メンバーの声が全く聞こえないので、フィードバックができません。メンバーが歌えてるのかどうか、また歌っているのかどうかさえ分かりません。

これがかなり孤独です。

いうなればオンライン講義と放送大学を交互にやっているような感じ。笑

アラミレでは研一郎にグレゴリオ聖歌指導の進行をお願いしたので、私は指導を受ける側にまわったのですが、受ける方としては結構楽しいです。純粋に指導者と一対一で声を合わせるという感じなので、普段の大勢の練習とは全く違った感覚があります。

また、自分の声が他のメンバーには聞こえていないという安心感もあるので、かなり思い切った表現などをやっても平気です。むしろいつもより少し開放的に歌える感じすらあります。

ただ多くの方がイヤホンをつけながら歌っていたので、結構これは歌いにくいと思います。

メンバーの方をミュートにしている限りは音が混線することはないので、歌う段階では、イヤホンを外してスピーカーでやるのがいいかなと思いました。(ただし進行役はインプットアウトプットが両方生きているのでヘッドホンをするのが望ましいです)

ヘッドホンをつけたまま歌うということを今月になって初めてやったので、慣れるまでかなり大変でした。

Zoom練は一対一の練習に優れているので、誰か一人が歌って、それをリーダーが指導する、というのを全員で見学するというスタイルも効果的だと思います。

基本的に大勢で同時に歌うということはできず、リーダーと一緒に歌うか、リーダーの歌うパートに対して他のパートを歌うかということしかできないので、グレゴリオ聖歌の練習とデュエットの練習はかなり効果的だと思います。

あとはパート練習。1パートの練習は普通にできます。今思いつきましたが、2パートも大丈夫ですね。つまりリーダーがアルトを歌うので、アルトの方は一緒にアルトを、ソプラノの方はリーダーの歌うアルトに合わせて自分のパートを歌いましょう。ということができます。

3声以上の練習はほとんどできることがないと思います。特にポリフォニーの場合は。ホモフォニックな曲の場合は、リーダーの歌うバスに合わせて自分のパートを歌いましょうということはできますが。

そこで、私は3声以上のポリフォニーの練習は、多重録音が効果的ではないかと思います。


Soundtrapを使った多重録音による練習

合唱団のかたに音楽の全体像を把握してもらうため、多重録音を始めたのですが、これ、驚くほど難しいんです。

めちゃめちゃ鍛えられます。

自分の音を何度も何度も再生しながら一緒に歌うので、自分の歌のまずいところもよく把握できます。

今Appleがテレワーク推奨のためにLogic pro Xを90日無料トライヤルをやっているので、かなり高度な編集もできるようです。(私は環境はあっても使いこなせていません笑)

それで、この多重録音をウェブ上で共有できるのがSoundtrapというサービスで、みんなで多重録音しようぜっていうのにはもってこいというか、そのために開発されたのでしょうね。

これだとウェブ上で擬似的にアンサンブルを楽しむことができます。すでに町村さんが、みんなでコラール、みんなでSicut cervusという企画を立てられて、結構盛り上がっていたようですが、これそのまま合唱団の練習に使えないかなということでございます。

アラミレでいまお試し中なのですが、まず最初が結構大変なので、私が多重録音(今回の曲はソプラノが高いのでそこはキーボード)で全体を作る→そこから自分のパートをミュートにしてカラオケ状態で練習する→ある程度歌えるようになったら自分のトラックを足して、自分の歌も録音する。

これを全員ができれば、ウェブ上で疑似アンサンブルができます。

練習段階、録音段階では私の声に対してアンサンブルするという感じになるので、OVPPの練習になります。

これは結構ちゃんと練習になります。アンサンブル能力上がります。

それでこれからなのですが、全員の録音があがってきて、私の最初の録音を消せば、オリジナルメンバーによるアンサンブル録音の出来上がりです。

自分のパートをミュートにしてそれを流しながら歌えば、メンバーみんなで歌っている感覚が得られると思います。この状況下ではこの上ない喜びとなるはずです。

とにかくみんなと一緒に歌いたい!歌えない!というのがきついんですよ私たち。

ヘッドフォンを通してみんなの声が聞こえて、それに合わせて自分も歌ってるって、それだけでも今涙が出るほど嬉しいんです。(というのは今Ensemble Salicusでそれをやっているので・・)

しかもそれを録音して成果物として残せるので、モチベーションの向上にもなると思います。


Netduettoは?

というわけで自分の関わる団体では、Zoom練とsoundtrapを使った多重録音で練習を進めようと思います。

再三話題に上がるYamahaのNetduettoですが、通信環境の影響をかなり受けるようで、全員光回線でないと実用的でないようです。

試しにコエダイのメンバーでやってみましたが、人によっては音がブツブツに切れてしまって全くダメでした。

色んな人が集まっている合唱団で使うのはほぼ不可能だと思います。

ネット回線と機材を揃えられるお金に余裕のあるプロの少人数アンサンブルとかでは導入できるかもしれませんが。

ただ、会議ツールではなく最初からアンサンブルすることを目的としたアプリケーションということなので、今後に期待したいなと思います。


寄付金募集中

サリクスメンバーへの寄付金募集ですが、2日で30万円近くのお申込みを頂いております。

本当にありがたいです。

将来がどうなるかわからないのは私たちだけでないにも関わらす、こうしたお申し出をいただけるのは本当に、ありがたいです。

サリクスメンバーこれまでオンステしたのは合計38人です。引き続きご支援のご協力どうぞよろしくお願いいたします。

以下詳細です。


 フリーの音楽家の多くが、2月後半から収入ゼロの状態が続いています。このままでは数カ月後には家賃も払えずに廃業というケースが出てくるでしょう。これまでSalicus Kammerchorを支えてくれたメンバーがそうなってしまうのは耐えられません。メンバーはサリクスの財産です。そこで、Salicus Kammerchorとして皆様から1口5,000円で寄付を募ることといたしました。第1次締め切りを4月30日とし、それまでにお預かりした寄付金から事務手数料を引いた全額をこれまでサリクスの演奏会と録音にオンステしたメンバーに振り分けます。どうか皆様、これからの音楽界のために、才能ある音楽家がこんなことで将来を断たれてしまわないように、この危機的状況を乗り切るためにご支援ください。

【寄付送金先】

お振込:三菱UFJ銀行蕨支店(店番383)普通0181628 Salicus Kammerchor

(振込先に英文字を指定できない場合は、
「サリクスカンマーコア サクライ ゲンキ」とご入力ください)

Paypal:こちらのURLからお手続きください。https://www.paypal.me/salicuskammerchor

【お問い合わせ】Salicus Kammerchor事務局 salicus.office@gmail.com

Salicus Kammerchor第6回定期演奏会【延期】

やむを得ず第6回定期演奏会を延期することとなりました。

ここにも各SNSのサリクスアカウントでアップしたコメントを転載します。


Salicus Kammerchorよりいつも応援くださる皆様へ

●Salicus Kammerchor第6回定期演奏会延期のお知らせ

 皆様、いつもSalicus Kammerchorを応援いただき誠にありがとうございます。5月16・22日に予定しておりました第6回定期演奏会ですが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令を受け、来年5月頃に延期することを決定いたしましたのでご報告させていただきます。

 なんとか、どのような形でも皆様に演奏をお届けできないかと模索してまいりましたが、声楽アンサンブルのリハサールにおける感染リスクを軽減する方策が見つからないこと、オンラインではアンサンブルのリハーサルは不可能であることが決定的な要因となりまして、このような決定に至りました。

 楽しみにしてくださっていた皆様には誠に申し訳ありません。2019-20年シーズン定期会員の皆様には、延期公演のチケットを改めて来年送らせていただきます。

 Salicus Kammerchorは5年間活動を続けてきて昨年J. S. バッハのモテット全曲演奏シリーズを完結、今回が6回目の定期演奏会、ハインリヒ・シュッツをメインプログラムとして取り上げた最初の演奏会となるはずでした。今各地で星の数ほどの演奏会、ライブ、イベントが中止か、あるいは延期となっています。サリクスの演奏会もその一つとなってしまったわけですが、その星の数ほどの演奏会、ライブ、イベントの一つ一つに、どれだけの人がどれだけの時間をかけ、どれだけ努力し、どれだけの情熱を傾けて、どれだけの困難に立ち向かい、そして、どんな思いで中止や延期という決断に至ったか。一人ひとりの思いを慮るにつけ、言葉がありません。

●寄付金募集

 フリーの音楽家の多くが、2月後半から収入ゼロの状態が続いています。このままでは数カ月後には家賃も払えずに廃業というケースが出てくるでしょう。これまでSalicus Kammerchorを支えてくれたメンバーがそうなってしまうのは耐えられません。メンバーはサリクスの財産です。そこで、Salicus Kammerchorとして皆様から1口5,000円で寄付を募ることといたしました。第1次締め切りを4月30日とし、それまでにお預かりした寄付金から事務手数料を引いた全額をこれまでサリクスの演奏会と録音にオンステしたメンバーに振り分けます。どうか皆様、これからの音楽界のために、才能ある音楽家がこんなことで将来を断たれてしまわないように、この危機的状況を乗り切るためにご支援ください。

Salicus Kammerchor主宰
櫻井元希

【寄付送金先】

お振込:三菱UFJ銀行蕨支店(店番383)普通0181628 Salicus Kammerchor
(振込先に英文字を指定できない場合は、
「サリクスカンマーコア サクライ ゲンキ」とご入力ください)

Paypal:こちらのURLからお手続きください。https://www.paypal.me/salicuskammerchor

【お問い合わせ】Salicus Kammerchor事務局 salicus.office@gmail.com

新型コロナウィルス感染拡大を受けて

新型コロナウィルス感染拡大を受けて

皆様いかがお過ごしでしょうか。

頑なに外出を控えている皆様。命がけで満員電車に乗り、家族のために働いている皆様。仕事がなくなって家で仕事ができないかともがく音楽家の皆様。お疲れ様です。

多くのフリーの音楽家は、この状況がもう2・3か月続けば生活は立ち行かなくなるでしょう。

理想を言えば、政府が全国民の生活を保障したうえで戒厳令を出すというのがいいのでしょうが、日本ではそこまでの人権の制約が難しいのでしょうか。

そもそも今の政府に何かを期待するということ自体が得策とは言えないと思いますので、この先が見えない状況で、自分が何をすべきか、何ができるのか、試行錯誤の日々でございます。

まず一番心配なのは、サリクスのメンバーをはじめとする仲間の音楽家の生活です。

こんな時のためのキャンセル料金の規定があるような契約をして、仕事をしている音楽家は極めて限られていると思います。多くは口約束で、日程と報酬と仕事内容を決めているだけです(それされもあいまいな、特に報酬が提示されない状態で日程だけおさえられる仕事もあるということはひとまず置いておいて)。

このような全く予想できなかった状況下で、仕事が全滅したとしても、キャンセル料を音楽家の方から請求するのは相当難しいです。

ありがたいことに先方から、こちらを心配してくださってキャンセル料を提示してくださる団体もございます。ただこちらから請求するのはかなり難しいと思います。そんな約束はしていないからです。

ですからこういうことも想定したうえで契約を結ぶ必要があると思うので、今後はそうしていけばいいと思うのですが、当座どうやりすごすか。

3・4月の演奏会が全滅して収入がゼロという仲間も珍しくありません。私は演奏以外にも、グループ指導や個人レッスンもやっていますので、ゼロにはなっていませんが収入はかなり減っています。

融資を申し込みに行った仲間もいます。


オンライン合唱の取り組み

話題のZoomですが、私も取り入れようと思います。

個人レッスンは試してみて、できることはかなりあるなと感じました。

問題は合唱団やアンサンブルです。

村山さんのフェイスブック投稿、柳嶋さんの実験他、様々な方が情報を共有してくださって、とても参考になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

ラグがあるので一緒に声を出すということができません。その中でも、できることを探しながら当座つなぎの練習をすることはできるかもしれませんが、合唱としての練習とは言い難いものになると思います。

エレウシスでも今週の練習時間にテストとしてやってみます。

それからエレウシスではサークルスクエアというクラウドサービスを使っていて、その中のブログ機能を利用して、この機会に団体としてのコンセプトの共有、自主練のメニューをアップしていっています。

これはイチかバチかで、こういう傾向の人はこういう練習をということを書いていますが、自分でそれが判断できないと悪化する可能性すらあります。

Zoomでの練習も歌い手側をミュートしなければならないようなので、フィードバックができません。自分の声を自分で聞きながら修正していく習慣をつけるという意味ではいいのかもしれませんが。

もう一つの取り組みとして、私が多重録音した音源もアップしています。 本来であれば、まだ曲の譜読みの段階で、読譜力の向上も兼ねて練習を進めていたのですが、背に腹は代えられず。

そんな中土曜日に、月一のマドリガーレを歌う集まりが開催されて、ドクターが参加されていました。

徹底した感染対策が施されていましたが、ドクターが参加されるとは正直思っておらず、意外でした。

曰く「この状況下でいかに文化的な生活が送れるか実験したい」ということでした。

かなり心強かったです。

状況は厳しいけれど、それでも文化的な生活を諦めないでいてくれる人がいる。

死んだも同然の気と心で、それでも体だけ生きているということは、生きていると言えるでしょうか。

気と心を生かすことが体を生かす。そしてその逆はあり得ない。

心気体とはそういうことなのだと思います。

生きていれば、生きてさえいれば、そう思うからこそ、気と心を生かさなければなりません。

そして私たちにはそれができます。


フェイスガードを使った合唱練習

そうそう。マドリガーレの会(schola IDEという名前になりました)で話題になったのですが、ドクター中松の作ったマスク、合唱練習にいいのではないかということ。
http://drnakamats.shop-pro.jp/?pid=148719805

あといきなりステーキのマスクもいいのではという話になりました。
https://item.rakuten.co.jp/ikinaristeak/13/

と思って調べてみたらいろいろありますね。
https://is.gd/NQoTk7

喋ったり歌ったりする時に発生する飛沫の飛散を防止するのに良いという話でした。

これを装着して人と人との間隔を開ければかなりリスクを軽減できるのではないでしょうか。


オンラインレッスン開始に伴う料金改定について

うちは対面のレッスンもまだやっています。

心配な方にはオンラインレッスンをおすすめします。

オンラインはコマを短く設定して、30分4000円(初回3000円)としました。

もともとも対面レッスンがギリギリの価格設定をしているため、どうしてもそれより安くということが難しく、整合性がとれなくなってしまいました。

そこで大変心苦しいですが、対面のレッスン料を改定して、以下とさせていただきます。

【対面指導】初回1時間:5,000円
2回目以降1時間:8,000円
2時間:13,000円

【オンラインレッスン】
初回30分:3,000円
2回目以降30分:4,000円
1時間:7,000円

※学生料金は各1,000円引き

現在ご予約いただいているレッスンについては旧料金で、本日4月6日以降予約分を新料金とさせていただきます。

ご理解いただければ幸いです。

詳しい料金設定はこちら→https://genkisakurai.com/work-price/

演奏会も合唱練習も中止になって、歌から離れてしまっている方、声を出す機会を作りましょう。

声を出すことを通じて、身体と心と気を観ましょう。

声を出すことで体と心と気を養いましょう。

声の養生功だと思って。

コミュニケーションをとることを、文化的な生活を送ることを、学び続けることを、どうか諦めないでください。


Salicus Kammerchorについて

サリクスは5月2日に第9回ワークショップ、5月16・22日に第6回定期演奏会を予定しています。

まずワークショップについてですが、今の所以下の対策を実施しての開催を目指しています。

情勢は刻一刻と変化しております。こちらは現段階の方針です。これからの情勢の変化によっては中止の可能性もございますのでご了承ください。

1. 感染症対策を徹底
手洗い、手指の消毒、うがい、マスク着用、30分ごとの換気、受講者どうしの空間的距離を1メートル以上とる、といったことを徹底します。

2. 受講者定員の見直し
会場内で受講者どうしが一定の空間的距離をとることができるように、受講者定員を当初予定していた20名から、12名に減らします。

3. 時間の短縮
感染のリスクを減らすため、当初の6時間から4時間に短縮します。

4. 資料と解説動画の事前配布
受講時間を短縮するために、予め資料を配布し動画で解説できることについては動画でお送りします。

5. 受講料の振り込みについて
直前まで状況が読めないため、今回に限って受講料の当日支払いもお受けすることとします。

6. キャンセルポリシーについて
今回状況を鑑みて、通常のキャンセルポリシーは適用しないものとします。
直前のキャンセルであっても、キャンセル料はいただきません。

現在9名様にお申し込みいただいております。受講定員まで残り3名様です。
皆様のお申込みを心よりお持ち申し上げております。


そして第6回定期演奏会についてですが、少なくと通常通りの開催は厳しいと考えています。

定期会員の方限定の演奏会にし、お越しになれない会員の方には動画を配信、あるいは録画をお送りし、その他のお客様には録画を販売、という方法もあるかと思います。

まず練習が開催できるかどうかもわからないので、はっきりしたことが何も申し上げられなくて心苦しいですが、なんとかして、どんな形であれ開催することを目指して足掻いています。

今しばらくお待ちいただければと思います。


あのときはドクター中松のフェイスガード使って練習したよねあははって、いつか笑える日が来るさと、でもあれのおかげで設備が整ったり、知識が深まったり、技術が革新したり、活動の幅が広がったよね、って言える日が来るように。

今、やれることを全部やる。

ノイズのライブに行ってきました

ノイズのライブに行ってきました

さる3/16、大久保水族館というライブハウスに、ノイズのライブを見に行ってきました。

https://www.facebook.com/events/617156565775235/

風人さんという、徳久さんの元生徒さんで、今ドイツを中心に活躍されているノイズ・パフォーマーが帰国されて、企画されたライブでした。

風人さんがドイツに行く直前に私一回Tokyo Voiz Choirという徳久さん主宰の団体の練習にお邪魔させていただいたことがありまして、そこで一度お会いしてました。

そこではじめて、アイケイイチさん、そして本業占星術師のノイズ・パフォーマー、一樹さんとも出会いました。

その時も風人さんのパフォーマンスは度肝抜くレベルで、その後の飲み会兼反省会での真面目っぷりとの対比がエグかったんですが、今回のパフォーマンスはもう完全に別の世界に行ってしまわれたのだなという感想でした。

一部を切り取りました。全体は15分くらいでした。

なんていうんでしょうね。もう開いた口が塞がらなかったです。

控えめに言って人生変わった。

それで、これ5組出演のオープニングアクトなんですよね。

トリでいいじゃんって感じでしたが、この後出演の並びを考えると、オープニングでよかったですね。一番刺激が強くてストイックなのを最初に置くというのが、もう、ぬるま湯で生きてんじゃねえよって言われてるかのようでもうシャキッとしました。

ド頭にこれをやるというのが一番効果的だったと思います。

これ小さなピックアップマイク(徳久さんいわく)を2個口に加えてやってるみたいなのですが、見た目イアホン加えてるみたいで、片方壊れたイアホンとかでやってみようかなあとか思いました。

声、というか口から出てる音だけでここまでできるのは本当に凄いです。

エフェクターなし、操作してるのはゲインとイコライザだけだそうです。

とにかく本当に丁寧に丁寧に自分の身体と向き合いながら、丁寧に丁寧に音を紡いでいってるのが印象的で、嘘を言わない覚悟みたいなものを感じました。


続いて肩書きにはviolinistと書いてあったRohcoさん。

後で聞いた話では、先日叔母が行った「ノイズ白拍子」に出演されていたようで、これまたご縁を感じました。

こちらの動画はTwitterにあがっていたものを引用させていただきました。

左手側にプリペアドヴァイオリン(?)右手側に弓が置いてあって、真ん中にミキサーと髭の生えたまな板みたいなのが置いてありました。

ヴァイオリンは主に手で擦ったり弾いたりしていて、弓はまな板の髭を弾くというそっちかーーいなスタイルでした。


続いて徳久さんとコバさんによるノイズボイスカラオケ。

今回は仕上がった内容でしたねーーかなりアイデアが練られた様子でした。

最高に笑えました。

こちらコバさんのTwitterから。

まずは挨拶代わりの春の小川デュエット。

ていうか、

「コバ何歌う?」

「じゃ春なんで春の小川で」

って流れでふたりとも歌い出すのおかしくない?笑

とにかくノイズボイスカラオケってカラオケのユルさとノイズの対比が肝なんですけど、今回は曲間のやり取りまでそのユルい流れがうまく続いててよかったです。

照明もまたミラーボール的なのがぴったりあってましたね。

続いて最近の曲が歌いたいという流れからBillie EilishのBad guy。

これも当たり前のようにデュエットなんですが、なんとミニマルノイズでした。

今までなぜこのスタイルなかったんだろうと思うくらい当たり前といえば当たり前のやり方なんだけど、めちゃめちゃ笑えました。

コバさんは吸気のキュルキュルドローンずっとやってるし、徳久さんはマイクを近づけたり遠ざけたりしながら「ギャイギャイギャイギャイ」みたいのずっとやっててもうなんか後半笑いが止まりませんでした。

右キュルキュル、左ギャイギャイ、真ん中ビリー・アイリッシュ。意味わかんねえ。

続いて軍歌で微音。やられましたね。まさか軍歌で微音とは。

微音っていうのはまあ聞こえるかどうかのギリギリの音量でやるノイズなんですけど、徳久さんはずっとイビキみたいな「ゴル、ググ、、」ってやってるし、コバさんはフルボイスシャウトのモーションでほぼ無音っていうこれもまた対比が見事で、素晴らしいアンサンブルでした。

バックで流れてる軍歌は音質が悪すぎてそれだけでノイズとして成立してるし。

ビジュアルの対比もやっぱり結構大事ですね。面白い。

それでここからの流れが非常に秀逸。

「腹減ったね。すみませんカレー2つくださーい」

からのカレー食いながらカルグラドローンしながら会話はカルグラのまましゃべるという。

カラオケとして流しているのはエル・システマのドキュメンタリー的な映像。

なんだこれ。

結構つらそうに食べながら声出して、むせたりしてるのほんと面白かった。

途中ビール追加したりね。

そして最後は徳久さんのYouTubeの動画を使ったやつ。

もうなにがなんだかわかりませんが、倍音漫談ですかね?倍音猥談?を流しながらホーミーやりながら、途中からその猥談動画と夏の終りのハーモニーのカラオケがオーバーラップしてきてその上普通に二人でカラオケで歌うというもうわけわからん。

普通にカラオケしてるのがもはやノイズに聞こえる。

畳み掛けのトランス。

ノイズボイスカラオケの奥深さを見せてもらいました。


最も意味のわからんノイズボイスカラオケの後は、biology of the futureという方。

めちゃめちゃちゃんとしてる笑

ギャップがエグい笑

Cの音をドローンにしてその倍音を操作しながら展開させていく、途中にふりかけみたいに他の要素も入れていきながら、おそらく20分くらいかな、C音はなり続ける。

これもかなりヤバかったですね。あーこれ気持ちいやつやーって感じで。

ヒーリング的な、口から涎出る的な。

sound cloudに音源があがってて、いくつか聴かせてもらいましたが、どれも素敵。初心者にもおすすめです。

作業音楽にぴったりかも。今こうして記事を書きながら聴いてますが、これ、いいですね。気持ちいい。

あ、ちなみにちょっと興味があってスペクトログラムで音をみてみました。

左側です。綺麗ですよね。とても。倍音のゆらぎと、基音の安定感と。

比較のために右側にノイズボイスのも載せてみました。これはこれで綺麗笑

基音がそもそもめちゃめちゃ高くて幅ひろい笑
多分徳久さんのリップハーシュだったと思います。

ほんと人生いろいろ、ノイズもいろいろですね。


さて、トリは山下哲史さん。

この方ほんとに素晴らしかった。

直球のノイズ。ユーモアと、ピュアさと、可愛らしさがありつつ、様式美と、構成感、偶然と必然の混交。

すごいちっちゃなターンテーブルに最初はレコードのせてスプーンでこっすったりなんかしてるんですが、それはもう前戯みたいなもんで、レコードがどっか飛んでっちゃってからがもうほんと素晴らしかった。

ドタバタ、叫び、悶え、八つ当たり、土下座、土下寝、地団駄。

なんだろう、やりたくてもできないこと全部やってくれたって感じなのかな。

これの素晴らしさを表現する言葉がない。

自分でも動画撮ってて、見返してみると、自分

「ま、祭り、、祭りだ、、」

って言ってるんですよね。語彙喪失。

ちょっとあれに近いかも。ビルとか橋とか古くなった建造物を爆破して解体するやつ。あれ、気持ちいいですよねなんか。ちょっとあれに近い。

それかシャーマン。現代における祈りの儀式。やっぱ祭りだな。うん。祭りだと思ったんだもん。

とんど焼きとか、キャンプファイヤーとか、なんかそんな感じ。


とにかくこのイベントはほんとに凄かった。

風人さんのテンプルにカチーンってくるノイズに始まり、怪しげなviolinist、ユルすぎ意味不明のノイズボイスカラオケ、ヒーリング系ドローン、祭り。

流れが完璧。これ以外の順番は考えられないほど。

それで翌日徳久さんが言ってたのは、こういうイベントにEnsemble Salicusとかでバッハ歌ってよって。ゾクゾクしますよね。たぶんね。あんまりいないんですよね。こういうアンダーグラウンドミュージックに本意気のリスペクトを持ってる古楽演奏家。みんな心の底では下に見てるでしょ。クラシックのほうが偉いって思ってるでしょ。なのに、同じ土俵で戦うの、怖いでしょ。

先日叔母とやった「ダヴィデの声明・如来のイムヌス」も相当アンダーグラウンドでハードコアでしたが、これからもジャパニーズネオアヴァンギャルドエクストリームプログレッシブブルータルミクスチャークロスオーバードゥームコアクラシカルミュージシャンとして、怖くてできないことをやっていこうと思った次第であります。


というわけでね。

話題のライブハウスでですね。

話題のコロナをね。

2本も飲んでやりましたよ。

ははは


昔ね。「私、普通の人が好き」ってふられたことがあったんですよ。

雷に打たれたような衝撃の後に、うん。なら、しょうがないね。って、めちゃめちゃ諦められたよね。

ダヴィデの声明・如来のイムヌス|終演

先週土曜日、叔母との企画が終演しました。

統計開始から最速だった東京の桜の開花宣言の日に雪が降るというわけのわからぬ天候の中、ご来場くださいました皆様、誠にありがとうございました。

いろいろな事情を鑑みたうえで、この企画は私たち叔母甥にしかできない企画だったのではないかと思います。

グレゴリオ聖歌風に新作とか、声明風に新作とか、まともな神経ではできないです。そんなことができるのは、アホかイカれてるかどっちかで、私も叔母も後者です。

今回プログラムには歌詞しか載せなかったし、MCも最小限だったので、少し制作の過程をここに記しておこうと思います。


前半は詩編23をいろいろな言語で、いろいろなスタイルで。

同じテキストで違う作曲家やスタイルでというのはサリクスでもおなじみですが、それのひどいやつと思っていただければいいかなと思います。

1.”Dominus regit me” グレゴリオ聖歌(ラテン語)
2.モロッコ系の朗唱(ヘブライ語)
3.「主は私の羊飼い」グレゴリオ聖歌風に新作(日本語)
4.声明風に新作(中国語)
5.「主はわれらの牧者」高田三郎(日本語)
6.声明風に新作(中古日本語)

1と3と5が私が担当した部分で、1は普通にグレゴリオ聖歌。受難節第1主日の聖体拝領唱です。

3は昨年出版された聖書協会共同訳聖書の詩編23編のテキストをそのまま使って、日本語でグレゴリオ聖歌風に作曲したらどうなるかというのをやってみました。

旋律定型を織り交ぜつつ、日本語の抑揚や内容の象徴なんかも考えながら作りました。しかも10世紀頃に書かれた古ネウマも用いながら作ったので、特殊ネウマのコブシみたいのものも結構沢山用いました。意外とそのあたり日本語との相性よかったんじゃないかなと思っています。

5は現行カトリックでも用いられている高田三郎の典礼聖歌からとりました。

2.4.6が叔母の担当した演目で、2はユダヤ教の実際の典礼で使われているような話だったので(曖昧でごめんなさい)、前半プログラムのうち新作は3.4.6の3曲で、半分新作だったということになります。


後半は如来唄と中唄の流れにそって、それをいろんなふうに歌うということをやりました。

1.「如来妙」 声明(漢文)
2.「色」 グレゴリオ聖歌風に新作(ラテン語)
3.「講式 」声明(中古日本語)+ドローン(ラテン語)
4.「身」 グレゴリオ聖歌風に新作(ラテン語)+声明風ドローン(漢文)
5.「世」 声明(漢文)
6.「間無当等」(中唄)声明(漢文)+グレゴリオ聖歌風に新作(ラテン語)+詩編唱(ラテン語)

1は普通に声明、2は経典をラテン語訳してそれにグレゴリオ聖歌風に作曲しました。

この作業がなかなか大変で、固有名詞をどうするかとか、仏教的な言い回しをラテン語に直すのにキリスト教の考え方に置き換えてみたりとか、なかなかの超意訳をしております。笑

例えば
哀愍覆護我 令法種増長 此世及後生 願我常摂受
という文言は日本語だと、

なにとぞ、哀愍のお心を垂れたもうて、私をお譲りくださって、仏法の(優れた美徳を発育させる)種子を増長させ、現世と未来世とにかけて、願わくばみ仏が常に(私の願いを)救いとって(摂受)くださいますように。
となります。

これを
主よ、私を哀れんでください。
日毎私の心を励まし、
いつも私に耳を傾け、お救いください、
主なる神よ、とこしえに。

と書き換え、ラテン語にしました。

Miserere mei, Domine,
adjuva me cotidie,
inclina aurem tuam ad me, et salvum me,
Deus meus, in aeternum.

言い回しをキリスト教風にね。しましたね。

3は声明にラテン語のシラブルでドローンをつけました。ドローンとは言いつつも割と頻繁に音を変えていましたので、どちらかというと長音価の定旋律に声明が乗ってるという感じに聞こえたかもしれません。

4はグレゴリオ聖歌も声明も両方新作で、まず私が2でやったのと同じようにテキストを作って、ドローンがつけやすいようにDをfinalisとする旋法でグレゴリオ聖歌風に新作し、その音源を送って、それに合わせて声明風ドローンをつけてもらうという方法をとりました。

しかし出来上がったのはドローンとは言えないくらい普通に声明みたいで(少なくとも私にはそう聞こえました)、グレゴリオ聖歌と声明の対等関係のポリフォニーのような感じになりました。

5はまた普通に声明で、6は声明+グレゴリオ聖歌風新作+詩編唱ということで、如来をマリアにみたて、聖母の晩課で唱えらえれる詩編を用い、グレゴリオ聖歌風新作と交互に歌うAntiphona風にしました。

もとの声明が、音を長く伸ばす部分と、動きのある部分が交互に現れるような構成をしていたので、声明が長く伸ばしているところに動きのあるAntiphonaを、声明に動きのある部分には同じ音で唱える詩編をあてるという方法をとりました。

詩編唱は旋法によってそれぞれ定型を持っているのですが、その時の声明の動きとマッチする旋法を選びました。

その結果音域の高い旋法と低い旋法がたまたま交互に現れるようなことになり、声明の上で唱えたり、下で唱えたりと、声部交差が頻繁に起こって、そういった意味でも変化に富んだものになったのではないかと思います。

同じシラブルを何度も何度も、ずーーっと引き延ばして歌う声明に対して、次から次へとテキストを畳みかけるような詩編唱が対比され、トランス×トランスのような状態になったのではないかと思います。


今回の企画、破戒的な企画だったとは思います。

しかし鳴り響く音を聴くと、それほど不快ではなく、むしろ意外と心地よい感じになったのではないかと思います。

しかしその内容はそれぞれの業界から袋叩きにあうようなヒリヒリとした部分をはらんでいて、しかしそれでいて、もっとずっとずっと深いところでは響きあう、通底するものがあるよって、そういう3層構造になったのではないかと思っています。

二つの宗教のモノフォニーが歌いかわし、交わることで、祈るということについて、思いを馳せる機会になったのであればうれしく思います。


聴きに来てくれた家族、スタッフ、そしてコエダイ関係のみなさんと。
左4人はカルグラしてるので不思議な表情と口の形になっております。

そしてこの4人、実に15年ぶりの集結でした。

15年前、私が18歳のとき、叔母が広島大学入学のお祝いに東京に呼んでくれて、この4人でTOKYO DEATH FEST2005という日本初のブルータルデスメタルのフェストに行きました。

この時が徳久さんと私の初対面。ライブ後渋谷の中華屋で中華食べながら親父と徳久さんが話していて、徳久さんの発言をきっかけにできたのが、ポリゴノーラです。

ポリゴノーラについてはこちら↓
https://www.oto-circle.jp/music

というわけで、もう私が徳久さんと出会ってから15年も経つんですね。恐ろしい。

実は昨日も徳久さん出演のライブを見に行ったのですが、もうこの記事的には長すぎるので次の記事に譲ることにします。

徳久さんとのワークショップは来週末です。

声に興味のある人全員にイチオシのワークショップですので、ぜひお申し込みください。

詳細コチラ↓
https://note.com/voiz/n/nb8d37d4d8fba


昨年7月から活動開始したアマチュア合唱団、Chor EleusisのFacebookページとTwitterアカウントを作りました。

皆様フォロー、いいね!シェア、リツイートじゃんじゃんお願いします!!