J. S. バッハ作曲/マニフィカト初稿BWV243a

このところ、バッハのマニフィカトの初稿BWV243aを譜読みしています。

11月26日のバッハ・カンタータ・アンサンブルに向けての準備です。この度花井先生のご都合がつかず、不肖私が指揮をすることになりました。

アラミレの初回のとき(ヨハンネス・レジスをやりました)もそうでしたが、なんでこういきなりこんなデカイ曲があたってしまうのでしょうか。その上初期稿というヤヤコシイほうで笑

ソリストにはいつも一緒にやってくれてる、金成さん、輿石さん、トミー、小池くんにお願いしているので、それもまた楽しみです。


簡単に改定稿との違いを・・・

1.記譜された調

よく演奏される改訂稿BWV243はD-Durですが、初期稿BWV243aはEs-Durです。

通常トランペットはC管かD管なので、D-Durというのはとても自然なのですが、Es-Durとはどういうことなのでしょうか。おそらく通常のカンマートーンよりも低いピッチで演奏したのでしょう。

トランペットは、Es管で記譜されています。通常より半音高いEs管のトランペットが使われたのか、あるいはオーボエのピッチが通常より半音低かったのか、後者の方がありそうですかね。(↓冒頭部分。他のパートはEs-Durの調号だが、トランペットはC-Durで書かれている)

オルガンのパート譜が残っていればわかりやすいのですが(D-Durで記譜されていれば後者であることがわかる)パート譜が残されていたないので、はっきりしません。

コープマンは後者の解釈で、a’=392で演奏しています(通常のカンマートーンa’=415より半音低いピッチ)。

この辺のピッチのことについてはほんとややこしいですよね。頭こんがらがります。

2.挿入曲

よく知られている12曲のマニフィカト(ルカ1章46-55節)に4曲短い曲(ドイツ語による曲が2曲、ラテン語による曲が2曲)が挿入されています。

これらはバッハの前任者のトーマスカントルであるヨハン・クーナウのクリスマス・カンタータから歌詞を取りました。そしてこのクーナウのカンタータは、彼のC-Durのマニフィカトに挿入するために作られたのだそうです。

この説のもと演奏したものがやはりコープマンの演奏であります。

先程の動画と同じ演奏会のようです。

そしてこの4曲は曲順には記譜されず、最後にまとめて4曲書かれていて、マニフィカトのスコアの方には挿入曲の曲名だけ載せるという方法で演奏順を示しています。

(下部に、「ここでコラール『天高くより私は来る』が続く」Alhier folget der Choral Vom Himel hoch da kom ich herと書かれています)

おそらくこの4曲はマニフィカト本体とは別の場所で、少人数によって演奏されたのだろうと考えられています。

3.使用楽器

改訂稿BWV243はトランペット×3、ティンパニ、フラウト・トラヴェルソ×2、オーボエ×2、ヴァイオリン×2、ヴィオラ、通奏低音という楽器編成ですが、初稿ではフラウト・トラヴェルソ(フルート)が無く、5曲目にだけフラウト・ドルチェ(リコーダー)が使われています。

リコーダーを徐々に使わなくなって代わりにフルートを使うようになったというのは一般的な時代的特徴で、それにバッハがフィットさせたという感じですね。初稿で5曲目だけリコーダーが使われているというのは、オーボエ奏者が持ち替えで吹いたのでしょう。こういった持ち替えもこの時代は当たり前でした。


とまあこのあたりのことまでは知っていたのですが、まじまじと楽譜を見比べたことはなかったので、マニフィカト本体の方は移調されているだけで大体おんなじなのかなあと思ってましたが、全然違いました笑

結構衝撃的でした。

例えばQuia respexitのオーボエの出だしが付点になってたり、Deposuitの最初のヴァイオリン・ヴィオラユニゾンのところがオクターブ下がってるとか、Esurientesの通低がピチカートじゃないとか、まあこのへんは書かなかっただけで演奏ではそうしていた可能性もありますが。あとこれも書き損じかもしれませんが、Suscepitのトランペットの最後のロングトーン、最後2小節でタイが切れてるんですね。さすがにこんだけ息持たんだろっていうバッハの優しさでしょうか笑(改定稿ではオーボエ2本になっているのでブレスの心配はない)

中でも一番衝撃的だったのは終曲の冒頭、tuttiのGlo000ria!のあとでバスから順番に3連符のメリスマで上がっていくところ、改訂稿では通低がずっとAの音を伸ばしているんですが、初稿ではなんとお休みなんです。つまりバスが入ってくるところ、無音で、そこから3小節アカペラ!ぎゃふん!

こちら改訂稿↓

これが初稿ではこう!↓

いやーたまげました。

他にも色んな発見があったのですが、もう書くの疲れてきたので機会があったらまた書きます。Suscepitのオブリガートのラッパの音数とかも面白いのですが。

また、演奏会ぜひおいでくださいませ。11月26日です。

 

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コントラポントのヴェスプロ終演!

コントラポントのヴェスプロ終演!

昨日、沢山のお客様に見守られまして、コントラポントのヴェスプロ、終演いたしました。

13時から17時半までゲネプロ兼録音、19時15分から本番ということで、ハードなスケジュールでしたが、なんとか無事演奏を終えることが出来ました。

ご来場くださった皆様、誠にありがとうございました。


そして今回お越しくだされなかった皆様もどうぞご安心ください!

音源が発売されます!笑

今回は録画が入らなかったので、装備は比較的シンプルでしたが、それでもマイクは15本ほど立っていて、特にこの中央にそびえる巨大なスタンドはもはや鉄塔か?と見紛うほどでした笑

リハの最初の方で撮ったので歌メンバーだけですが・・・。

 


今回も本当にメンバーが豪華で、皆々様の歌をリハーサルで聴いているだけでありがたかったです。

特に櫻田先生の歌はほんとにスキがなく安定していて、こちらの稽古の前日までBCJで録音本番の3連戦をこなしているとは到底信じられない超人ぶりでした。

本当に信じられません。本当に人間なのか?と思いました。神がかってました。ほんの一瞬でも不安な要素はありませんでした。

また2年前の演奏ともっとも違った点は、私はトミーだと思います。

今回も(サリクス同様)歌ってる時間一番長かったともいますが、それだけ花井先生からの信頼も厚く、素晴らしい諸先輩方の歌唱にひけをとらない演奏だったと思います。

自分がテノールになってから、ずっとトミーの背中を追っている感じなのですが、また差が開いたなと実感してしまって落ち込みました笑。

そのくらい素晴らしかったです。

2年前の録音をお持ちの方は、ぜひ今回の録音もお聴きいただいて、彼の成長を感じてください。決して天才肌ではありません。彼(私も)、他の人と比べて才能が特別あるわけではありません。ただただ日々の努力の賜物です。

私もがんばります。まずは音出し可の物件を探すところから・・・

 

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コントラポントのヴェスプロ公演 | 明日!

いよいよコントラポントのヴェスプロ公演、明日が本番です。

1回こっきりの演奏会なので、皆様お聴き逃しなく!

なんか勿体無いですよね。こんな素晴らしいメンバーで、こんな素晴らしい曲をやるのに、1回、ものの2時間くらいで終わっちゃうなんて。

でもご安心ください!今回の演奏も録音します笑

2年前にも録音したのに今回もやるの?!そう、私もそう思いました。

なんでも超最新の録音方式を使うのだそうです。

前回の録音とどう変わったか、聴いてわかるかな、、

聴き比べてみたいです。

というわけで明日も2年前同様ゲネプロと称したレコーディングがあります(´ー`)

これが大変なんだな笑

明日は是非カテドラルに!19:15開演です。

お越しになれない方は是非音源をお求めください。(多分ダウンロード販売になるのだと思います)



演奏曲

クラウディオ・モンテヴェルディ 聖母の夕べの祈り

Claudio Monteverdi (1567-1643), Vespro della Beata Vergine

演奏

ソプラノ Soprani: 花井尚美  広瀬奈緒  染谷熱子  田村幸代
アルト alti: 金沢青児  輿石まりあ

テノール Tenori: 櫻田亮  富本泰成  櫻井元希  福島康晴

バス Bassi: 春日保人  松井永太郎
ヴァイオリン violini: 丹沢広樹  丸山韶

ヴィオローネ violone: 西澤央子

コルネット cornetti: 上野訓子  笠原雅仁  湊仁美

トロンボーン tromboni: 宮下宣子 大内邦靖 青木治夫

フルート、リコーダー flauti: 太田光子 前田りり子

リュート liuto: 金子浩

ハープ arpa doppia: 伊藤美恵

オルガン organo: 上尾直毅

指揮 direttore: 花井哲郎

チケット

指定席・一般 6,000円 自由席・一般 5,000円 学生 2,500円

指定席・2公演連続券 10,000円 (3月17日第23回定期公演と同時購入)

*学生券は、学生証を提示のうえお求め下さい

チケット取扱

東京古典楽器センター 03-3952-5515

主催

株式会社フォンス・フローリス

助成

文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)

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ヴェスプロ | カンヅメ

今日から3日間、コントラポントのヴェスプロのリハーサルです。

今日は初めての器楽との合わせでした。


午後は器楽のみの合わせ。


夜は歌もまじえて↓


躍動感( ゚д゚)↓


金管カッコヨ!

 


さてこれは何のリハでしょう?↓

今日はコルネットがいませんでしたが、明日からはさらに豪華な響きになります。

カテドラルの7秒の残業を想像しながらのリハーサルでしたが、なかなか想像し辛く、グレゴリオ聖歌なんかは特に難しさを感じました。

リハーサルから響きのあるところでやりたいのは山々ですが、なかなか日本では難しいです。というかカテドラル並みに残響のある練習会場って存在しないですよね。

PA入れてリバーブかけるしかないですね笑

いやー、楽しみです。カテドラル。

今回の演奏も録音するそうで、ゲネプロから録り始めるので2年前同様2回本番(やるようなもの)コースですが、2回楽しめると思ってがんばります笑


演奏曲

クラウディオ・モンテヴェルディ 聖母の夕べの祈り

Claudio Monteverdi (1567-1643), Vespro della Beata Vergine

演奏

ソプラノ Soprani: 花井尚美  広瀬奈緒  染谷熱子  田村幸代
アルト alti: 金沢青児  輿石まりあ

テノール Tenori: 櫻田亮  富本泰成  櫻井元希  福島康晴

バス Bassi: 春日保人  松井永太郎
ヴァイオリン violini: 丹沢広樹  丸山韶

ヴィオローネ violone: 西澤央子

コルネット cornetti: 上野訓子  笠原雅仁  湊仁美

トロンボーン tromboni: 宮下宣子 大内邦靖 青木治夫

フルート、リコーダー flauti: 太田光子 前田りり子

リュート liuto: 金子浩

ハープ arpa doppia: 伊藤美恵

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メモリアルイヤー | イザーク&モンテヴェルディ

メモリアルイヤー | イザーク&モンテヴェルディ

今日はカペラで3月のモンテヴェルディ公演と、2/27のイザークの振替公演のリハでした。

「2人の共通点は?」

「せーの!」

「ゼクエンツ!!!」

はい。そうですね。2人とも大変なゼクエンツフェチです。

特に今回演奏する2曲のミサではその傾向が強いです。

イザークのミサ「カン・ジェ・オ・クール」モンテヴェルディ「イン・イッロ・テンポレ」

ゼクエンツの展覧会のような曲です。

しかしまぁほんとに2曲とも強烈に個性的です。


イザークはいつものメンバー8人と司祭役の渡辺研一郎の9人で演奏します。

以下のメンバーです。(今日は根岸さんはお休みでした)


いつも自分で写真を撮っているので自分が被写体になることがほぼないのですが、今日はかぶちゃんに撮ってもらいました。上手いなあさすが。

モンテヴェルディは6声なので、これに以下の3人が加わります。


(トミーの顔がいつにも増してデカく見えますが、遠近法です。念のため)

ただでさえ華やかなモンテヴェルディの音楽ですが、12人編成で更にきらびやかなサウンドとなっております。

アンセルモ、カテドラルと、どちらも非常ーーーーに素晴らしい音響の教会で演奏します。

今からとても楽しみです。



夜は古楽道場×計歌会で別のイザークのミサをリハーサルしました。

Missa”Virgo prudentissima ”

こちらは6声のミサです。今年はほんとにイザークいっぱい演奏します。カペラ2/27、サリクス4/22・27、アラミレ9/24、道場×計歌会11/23、それから古楽院でもイザークを取り上げます。

今までの人生の中でこんなにイザークばっかり演奏する年はなかったし、これからも多分こんな年はもう来ないでしょう。

何しろ没後500年ですから。

盛り上げていきますよー!これを機会にイザークの知名度をガッと上げていきましょう!

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Salicus Kammerchor第3回定期演奏会

『J. S. バッハのモテット全曲演奏シリーズvol. 3 〜詩編モテットと葬送モテット〜』

チケット発売中!

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Salicus Kammerchor主催第3回ワークショップ

参加者募集中!

http://www.salicuskammerchor.com/workshop

ご好評いただいておりますサリクスのワークショップです。毎回早い段階で応募上限に達しております。

お申込みはどうぞお早めにお願いいたします。

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