コエダイr合唱団演奏会

コエダイr合唱団演奏会

2024年も終わろうとしていますね。

9月から投稿が滞っておりました。

というのも9月から10月にかけて、ひと月にデュファイのミサを3曲演奏する(9/23グランデュファイ.10/14アラミレ.10/25カペラ)という多分人生でもう二度とないことがありまして(しかもそれぞれテノール、バス、コントラ(アルト)という別々のパートでした)。

そしてその翌週には叔母の新作能「雪の華」の公演がありまして。

その翌週にはグレゴリオ聖歌の録画と名古屋弾丸ワークショップなどありまして。

その翌週にはオケ合わせに入って、3日連続オケ合わせ、1日あけて2日連続公演、翌日ブルガリアンボイスのワークショップを受けて翌日京都でワークショップというわけのわからんスケジュールで、その後1週間位は呆けておりました。

それぞれを詳細に振り返っておりますと、年が明けてしまいますので、ほんの少しだけ。


グランデュファイ

この催し物は花井哲郎先生が指導する関東関西中部の3つのアマチュア団体が合同でミサ・スラファセパルを演奏するというもので、私は助っ人でテノールを歌いました。

総勢30人くらい?でデュファイを歌うというのも初めての経験でしたし、そもそも本番でテノールミサ(テノールが全ての楽章で定旋律を歌うミサ)のテノールを歌ったのも初めてでした。

長い音価で比較的高い音を歌い続けるので、まあ大変といえば大変なのですが、俯瞰でミサが観れる感じで、役得感もありました。とても面白かったです。

面白いといえばこのときに演奏したグレゴリオ聖歌も面白く、デュファイ作と言われる新作のグレゴリオ聖歌で、なかなかこれも演奏機会の少ないものですので、貴重な経験となりました。


<ヴォーカルアンサンブル アラミレ>第15回演奏会

アラミレも今年はデュファイで、ミサ・アヴェレジーナチェロールムを演奏しました。

これがまたとんでもない難曲で、まあそれはそれは四苦八苦しながら練習して、しかし本当にとんでもない名曲でした。

スラファセよりもこっちが有名になっても全然おかしくないと思います。

モテットの方もごっつい難易度高い曲で、音にするだけでも相当難しいですが、かなりいい演奏ができたのではないかと思います。

アレミレは来年は打って変わってパレストリーナ。

わけあって今デュファイも並行して練習しているのですが、アマゾンとアラスカくらいの体感の違いで、それを楽しみながら練習しています。


ヴォーカル・アンサンブル カペラ
デュファイのミサ《ロム・アルメ》

10月26日に半袖ですね。まだこの頃は夏だった。ほんともう季節が無茶苦茶。

ミサ・ロムアルメのコントラテノール(アルト)のパートを歌いました。

今回驚いたのは、配信の音の良さです笑

めっちゃくちゃ綺麗に入ってる。

カテドラルって残響が多すぎて会場で聴くと、それがいいといえばいいのですが、ディティールを聴き取るのが難しいんです。

もちろん会場でライブでしか体験できないものも大きいので、どちらが良いとは一概には言えませんが、オススメは会場で聴いたあとアーカイブ配信視聴です。

一度お試しください。(できるだけ良い視聴環境で)

それからロムアルメなのでミカエルの祝日のグレゴリオ聖歌を歌ったのですが、使った写本がカンブレー写本、グランデュファイで歌ったデュファイ作のグレゴリオ聖歌が収められている写本でした。

メディチ版のようにずいぶんともとのグレゴリオ聖歌からすると簡潔になっているのですが、そのセンスがメディチ版と違って、めっちゃ面白いです。

一つのグレゴリオ聖歌をいろんなバージョンで歌うのごっつい楽しい。

そういうイベント企画したい。

ちなみにミカエルの祝日のグレゴリオ聖歌は来年のアラミレでも歌うのですが、こちらはメディチ版を用います(パレストリーナなので)。

今練習中なのですがまあほんと面白いです。

詳しく書いていると年が明けるので続きはまた別の機会に。


新作薪能 ハイパー能「雪の華」

ジャニー喜多川をテーマにした新作能でした。屋根はあるけど野外、という環境で、この季節には普通ありえない大雨&風&雷で、凄まじいコンディションでした。

よく薪に火がついたなと思います。

早々に楽譜が飛んで舞台上でパルプになってるし。

私は地謡とグレゴリオ聖歌風の歌、唱歌との二重唱などを歌いました。


Salicus Kammerchor
J. S. バッハの教会カンタータ全曲シリーズvol.1

100年計画の第1回の録音が終了しました。

音源化前提の寒い演奏とは程遠い、かなり録音してることも忘れるような熱演担ったと思います。

打ち上げでコンマスが「世界一美しいコラールだった」と言っていたことが非常に印象的でした。

うちのコンマス厳しいんですよ。同級生でもう10年くらい一緒にカンタータやってるので遠慮がないし。

めったに褒めないというか初めて褒められた気すらするんですが笑、嬉しかったです。

クラウドファンディングもお陰様で目標金額を達成しまして、なんとかやっていけてはいるのですが、それでもお客さんもう少し呼べるようになりたいです。

倍は来てほしい。。

広報頑張ります。

来年は6月に第10回定期演奏会で、グレゴリオ聖歌だけの演奏会を行います。

定期会員の募集を開始しましたので、どうぞよろしくお願いいたします。。

https://www.salicuskammerchor.com/support


コエダイr合唱団演奏会

振り返り終わりましていよいよ本題です。

今月の私の出演する唯一の演奏会です。

ヨーデル、ジョージア、ブルアリア、ホーメイ、オルティンドー、テノーレス、台湾の合唱をやります。

いやあ列挙してみるとなかなかイカツイ。イカツイプログラムです。

これらをただその曲を普通の声で歌うのではなく、それぞれの芸能の価値観に見合った声で歌うというのがコエダイr合唱団の凄いところです。

全部ではありませんが、ホーメイやヨーデルやブルガリアや台湾に関しては、その道の専門家を呼んで定期的に指導を受けています。

テノーレスは実際イタリアのサルデーニャ島まで出向いて直接現地のテノーレスから教わっています。

いやあイカツイ活動してますわ。

演奏会お申し込みはこちら↓
https://www.reservestock.jp/events/948824

さらに、特殊発声は聴くのも楽しいけど出すのはもっと楽しいということで、体験会もあります。↓

https://www.reservestock.jp/events/976243

同じアホなら歌わにゃ損ということで、皆様のご参加お待ちしております。

Ensemble Salicus第3回演奏会

Ensemble Salicus第3回演奏会

常日頃から、「いい音楽家の条件の第1番目は暇であることである」と言っている私ですが、今の私はいい音楽家ではありません。

10月からやばい忙しいです。クソです。クソ音楽家です。

ブログの更新も滞っておりました。

この間セアダスでライブをしたり


アラミレの演奏会があったり

コエダイのWSをやったり


京都でもWSやったり


トムウェイシのライブをしたり


富士山でレクイエムを歌ったり


長野でWSをやったり


オケゲムのレクイエムを歌ったり


エレウシスの公開WSをやったり

しておりましたが、今週末はEnsemble Salicusです!


没後400周年の記念の年に3声のミサを3人でやるなんて、これを聴かない手はないと思うのですが、なんとまだ出演者の5倍のチケットしか売れておりません(掛け算してね)

OVPP(1人1声)で3声(しかもクワイヤブックで演奏)というのはある意味ではスリリングだけれども、自由度が非常に高いので、ならではの演奏ができると思います。

こういう演奏はこの人たちしかできないねっていう演奏をしますのでぜひ皆様お越しください。

何卒!

何卒!!

https://tiget.net/events/264218

Afra|Human Beatboxワークショップ

Afra|Human Beatboxワークショップ

先週末、日本ビートボックス界のレジェンド中のレジェンド、Afraさんのワークショップに参加してきました。

まさか僕みたいなもんがAfraさんから直接ビートボックスを教わる日が来ようとは夢にも思わなかったのですが、徳久さんが過去に共演経験があったそうで、コエダイ主催のWSが実現しました。

教わった内容は基礎音と簡単なビートの組み合わせだったのですが、生音とマイク通した音と比べながら、一つ一つ丁寧に教えていただいて、Afraさんの基礎音が私が想像したものと結構違って、なかなかショッキングでした。


キック

普通のBのキックですが、めっちゃAfraさんの喉頭上下に動いていて、これノーワードでやってたんですね。

ノーワードというのは、(私の理解では)肺からの呼気や吸気を用いずに喉頭か舌のポンプで呼気圧か吸気圧を作ることです。

(私の理解がビートボクサーの一般常識と異なる場合があることをご了承ください。)

喉頭が上下しているということで、声帯を閉じて喉頭を上下させて気圧を作っているということがわかります。

多分私が思い込んでただけなんでしょうねえ、改めてOnii-chanのチュートリアル見たら、口の中に空気の玉を作ると言っているので、これノーワードですね。後半のSxinのデモンストレーションでもはっきり喉頭の上下を見て取れます。

https://youtu.be/axHknUapQAU

そしてなんでこれアウトワード(吐き)じゃなくてノーワードの方が良いかというと、まず唇に圧力をかけやすいです。肺で作る圧力よりも、喉頭や舌で作る圧力の方が強いんです。これはSpitzスネア(ハンドクラップ)をやってみるとわかります。アウトワードでもSpitzスネアできるんですが、めっちゃ筋力必要な上に、舌でやってるときのようなクリスピーな音はしません。

momimaru先生も解説しております。

あとノーワードの利点は、キレがいいところですね。アウトワードだと発音のあとに呼気が出て、余韻が残る感じ(アスピレーションの感じ)になるのですが、ノーワードだと音がピタッと切れる感じになります。

なので硬い印象の音を出すにはノーワードの方が良いのだと思います。

そしてAfraさんのキック、生音で聞くと、わりと「プッ」くらいの感じで軽いんですが、マイク通すとカッチカチです。

こういうのは動画ではわからないところなんだろうなと思います、動画だといずれにせよマイクを通しているので。


ハイハット

ハイハットも私全くアウトワードでやってましたが、Afraさんがやってたのはノーワードでした。

よく考えたらアウトワードでやるとオープンハイハットになりやすいですよね。これもキレの問題で、ノーワードの方がキレが良いです。

あとハイハットを”t”でやる人と”ts”でやる人といると思うんですが、いや、これただの表記の問題で、音は殆ど同じなんじゃないかとも思うのですが、実は前から気になってるんですよね。

Afraさんは”t”で表記されていました。

あとt派で面白いのは、ロシアのビートボクサーImproverで、彼は右手に”b t k t”というタトゥーをしていて、ハイハットをtで表記しています。

Rofuは「ツ」だ!以上!と言ってますね。

そして上のOnii-chanは”tz”と表記してます。ドイツ人なんで!

いやしかしこれ最終的には同じような音になるとしても、入り口がtかtsかって結構な違いな気がするんですよね。

(この件についてAfraさんに質問しようと思ってたけどすっかり忘れていたよ。というか質問いくつか用意してたのに、質問ありますかって言われた時に頭が真っ白になったよ。)


Pスネア

今回習った基礎音はこの3つですが、Pスネアだけアウトワードでした。

そしてアタクシはこの3つ全部アウトワードだと思ってたので、bとtをノーワードにするというだけで完全に脳と口まわりがバグりまして、何もできなくなりました笑

たったこれだけのことでバグっちゃうんだなあとわがことながら感心しておりました。

今ちょっとやってみてもtがアウトワードになっちゃったりpがノーワードになっちゃったり(これはもはやスネアではない)、結構長い間自己流で全部アウトワードでやっててこの習慣はなかなか抜けないものだなあと思います。

あとFugaさんも言っていますが、Pスネアは個性が出る。AfraさんのPスネアは結構高めの音で、真似しようと思っても全然その高さ出ませんでした。唇つよつよです。

いや、Pスネアに限らず、ビートボックスってドラムとは比較にならないくらい個性が出て、それがヒューマンだなあと思うのですが、多分私音質にもよりますが、so-soのハイハットは聞き分けられます。あとFootbox GとかHeliumのハイハットも好きで、多分これも聞き分けれると思う。

効きビートボックスやってみたいな。いろんなビートボクサーのキックだけとか、ハイハットだけとか集めて、あてっこすんのね。超楽しそう。

ビートボックスの歴史

今回の講座は実践だけでなく、ビートボックスの歴史も教わりました。レジェンドによるビートボックスの歴史。えぐい。

私は新参者のビートボックスファンなので、最近の事しか知らなかったので、とても興味深かったです。

特に黎明期の全部勢いでやってます!みたいなビートボックス、激アツでした。

やっばいですよねこの気合い。つよい。めっちゃつよい。

いやデスメタルとかもそうなんですけど、テクニックは時代とともに向上していくんですけど、こういう気合いのパフォーマンスって減ってくんですよね。余裕でできるようになっちゃってさあ。

ギリギリのところで千切れそうになりながらやってるのがいいんじゃんねえとかデスメタルの場合は思います。

あとデスメタルでプチョヘンザとか言い出したら世も末(ry

脱線しましたが、現代のガッチガチにテクいビートボックスもいいけど、黎明期の気合いと勢いのパフォーマンスもいいですよね、という話で、初心忘るべからずという話でございます。


というわけで様々な発見のあった講座でしたが、Afraさん、実際にお会いすると音はカッチカチなのに物腰は柔らかすぎてこちらが恐縮するほどでした。

こんな柔らかいレジェンドいる〜〜〜?って感じでした。

また講座第二弾やってほしいなと思うと同時に、最近のビートボックスについてもどう思ってるかなどお話聞いてみたいなと思いました。


さて本業の方ですが、Salicus Kammerchorが先月収録しましたシャイトの動画が公開になりました。

無料でご覧いただけますので是非多くの方に聴いていただきたいです。

大角先生、米沢先生の解説動画も、こちらからご覧いただけます。

http://rikkyo-kiriken.com/events/index.php?QBlog-20220310-1

Salicus Kammerchorは5月に第7回定期演奏会を開催いたします。

こちらもどうぞよろしくお願いいたします。

Salicus Kammerchor第7回定期演奏会
ハインリヒ・シュッツの音楽vol.2
二人の天才
​〜モンテヴェルディ→シュッツ〜

【日時・会場】

5月20日(金)19時開演
日本福音ルーテル東京教会
チケット予約:https://tiget.net/events/160766

5月22日(日)14時開演
台東区生涯学習センター ミレニアムホール
チケット予約:https://tiget.net/events/160767

自己紹介します

自己紹介します

最近このブログの記事のラインナップを見ても、お前は一体何者だ、結局何がしたいのだと自分でも思いましたので、改めて自己紹介しようと思います。

これが私、櫻井元希です。

この写真いいですよね。昨年のemulsionのコンサートの時に平舘平さんに撮っていただきました。

これだけだとなんだかやばい人だと誤解されそうなので、自意識過剰に自分が写ってる写真を集めてまとめてみました。↓


本業

私の本業は歌手、指揮者です。専門はバロック以前のキリスト教声楽作品です。

その中でも特にフォーカスしているのは、グレゴリオ聖歌、フランドル・ポリフォニー、J. S. バッハです。


歌う方

Ensemble SalicusemulsionEnsemble XENOSThe Cygnus Vocal Octetヴォーカル・アンサンブル カペラ古楽アンサンブル コントラポントなどで歌っています。

大体古楽と呼ばれる1750年以前のクラシック音楽が多いですが、emulsionやThe Cygnus Vocal Octetではもっと新しいものや、バーバーショップなどポップスに近いものなんかも歌っています。

声種はなんなんですかと聞かれることも多いのですが、最近あんまり気にしてません。歌わせてもらえるんであればどこでも歌いますよというスタンスです。

アルトからバスまでならどこでも、という感じですが、シグナスではちょろっとソプラノを歌うことになったこともありました。ホイッスル練習してソプラノも歌えるようになりたいなという希望もあります。

そういうことも滅多に無いのですが、どうしても書類に声種を書かなきゃいけないとかいうときは、間を取ってテノールと書いてます。

最近「声楽家」ではなく「歌手」を名乗っているのは、私の中の声楽家のイメージと、私のやっていることがあまりにも乖離してきたので、「歌手」としています。


指揮の方

指揮は主催しているプロの室内合唱団Salicus Kammerchor、アマチュア合唱団Chor Eleusisと、バッハ・カンタータ・アンサンブルで振っています。

指揮をするようになったのは芸大のバッハ・カンタータ・クラブがきっかけで、モテットやカンタータやミサなんかをやりまして、そこを引退する時に、振るとこなくなっちゃうなあと思って、2015年にSalicus Kammerchorを作りました。

サリクスではまずJ. S. バッハのモテット全曲演奏、全曲録音に取り組み、2019年にモテット全曲録音CDをリリースしました。

現在はJ. S. バッハから時代をさかのぼり、ハインリヒ・シュッツの作品をメインで取り上げるシリーズを進行中です。5月に第7回定期演奏会を行います。

秋にはJ. S. バッハのカンタータを演奏します。直近ではこのシュッツのシリーズとカンタータのシリーズの二本立てとなっております。

Chor Eleusisは2019年に立ち上げたアマチュア合唱団で、サリクス同様グレゴリオ聖歌からJ. S. バッハまでのキリスト教声楽作品をレパートリーとしています。

立ち上げ早々コロナ禍に突入してしまいまして、まだ演奏会が出来ていないのですが、毎週地道に地力向上を目指して練習しています。

バッハ・カンタータ・アンサンブルは師匠花井哲郎がやっている団体で、器楽も合唱もアマチュアでJ. S. バッハのカンタータ全曲演奏を目指している骨の太い団体です。

数年前から花井先生と交互で本番の指揮を振っています。


本業以外(に一見見える方)

ここまでのところはまあ音楽家としてそこそこ普通かなと思う部分なのですが、ここから一見本業とは関係なさそうな活動のお話です。


武術

このブログでもしょっちゅう更新しておりますが、光岡英稔先生のもと武術を稽古しております。

光岡先生は韓氏意拳という中国武術の日本の代表であると同時に、世界の様々な武術を修めて、講座で教えてくださっています。

ほぼ毎回このブログでレポートしているので、詳しくはそちらをご覧いただくとして、なぜ私が武術をやっているのかというところをお話したいと思います。

きっかけは、学部卒業くらいのときに、徳久ウィリアムさんのボイトレを受けに行ったということです。

おそらく7−8年前くらいの話ですが、この時すでに徳久さんは武術からインスピレーションを受けたボイトレをやっていました。

我々が普通にボイトレと言って想像するのは、現状の声を聞いて、それに対してそれをどういう風に変えたいかというところからアプローチするというのが基本かなと思います。

徳久さんのボイトレは、「状態が行為を生む」という発想の元、出ている声をどうこうするのではなく、望んだ声を出すための「状態」の方に着目します、そして声そのものではなく、「状態」にアプローチします。

(あくまで私が徳久さんのボイトレを受けた上での印象なので、気になる方はぜひ徳久さんのボイトレを受けてみてください。)

それでまあ声という現象ばかりを追っていた私にとっては目から鱗でございまして、そのおかげで今の私がいると言っても過言ではありません。

そしてその徳久さんの武術のお師匠が光岡先生ということで、光岡先生の講座に通うようになったというわけです。

ここで学んだことは、歌や指揮のみならず、生きて在るということに関して私の指針となっています。人間とはなにものか、身体とはなにか、自然とはなにか、生きるか死ぬかというあまりに身も蓋もない状況下で生まれた「武術」は、こういった最も根源的な問いに対する示唆をシンプルに、ストレートに与えてくれます。


特殊発声・ノイズボイス

ここでお話するのは、上記の徳久さんにまつわる活動です。

特殊発声というのは、何に対して特殊かというのがめちゃくちゃ曖昧な定義ですが、コエダイr合唱団の活動を想像していただくと大体こういうもんかとわかっていただけるかと思います。

これはイタリアサルデーニャ島のテノーレスという芸能ですが、こんな感じの曲をレパートリーとしています。

他にブルガリアン・ヴォイス、ジョージアの男声合唱、オルティンドー、ホーメイ、ヨーデルなどをやっています。

これをまあなんでやってるかということなのですが、まず第一にこういうのが好きだからです。

特にホーメイやテノーレスは昔から憧れがめちゃくちゃあって、日本でまさかテノーレスを歌える機会があるなんて10年前は想像だにしませんでした。ドリームズ・カム・トゥルーですね。

それでやってみて感じたり、わかってきたのは、こういった特殊と呼ばれる発声方法は、ボイトレ的に普通の声を出すにあたっても良い効果がめっちゃある、ということです。

普通の発想だと、こんな変な声出したら喉を傷めそうとか、声出なくなりそう、とか思いそうですが、真逆です。

ますます健康になりますし、ますます声は出るようになります。

いろんな声出すのが良いことだというのは最近ボイトレ業界でも言われるようになっています。私の経験だけを根拠にしているわけではないです。

ヨーデル、カルグラ、喉詰め、オルティンドー≒ベルティングは私のボイトレのレッスンでは普通にツールとして使います。

そしてノイズボイス。これは徳久さんのオハコです。

去年の灰野敬二さんとのDUOを聴きに行ったのですが、衝撃的に良かったです。

こういう声(?)を使った企画でノイズボイスカラオケというのに参加しているのですが、ほんとデトックスです。私たちには叫びが足りなかったんだなあと思います。

そしてもちろん喉には良いです。翌日めっちゃ調子いい。出来なかったことが急にできるようになったりします。

呼気にしても吸気にしても、やっぱりノイズボイスが一番気圧がアガります。


ビートボックス

ビートボックスもまず単純に超ハマってます。ただただ好きです。

クラシックの演奏家の中で多分一番ハマってると思います。

ビートボックスについて書いた記事はコチラ

お読みいただければいかに私がビートボックスを愛しているかをわかっていただけると思います。

それでビートボックスの文化って面白くて、オリジナルの技とか自分で作ったらすぐチュートリアル動画出すんですよね。新しいものがすぐオープンソースになる。素敵ですよね。

そういうのを観て私もやってみよーとか思うんですけど、これがね、おっどろくほど何もできない。私かなりいろんな声出してるし、そこそこ発声に関わる筋肉も鍛えてる方だと思うのですが、マジで手も足も出ない。それどころか何を言っているのかさえわからない。

https://youtu.be/9yEKHmCgovY

こういうのです。マジで意味がわからん。

ただこういうの観ていくと思うのは、見えるところでも舌の筋肉の盛り上がり方とか異常だというところとか、見えないところではきっと想像もできないことが彼らの体内で起こっているということ。

人間のポテンシャルに関する見方が変わりましたね。

マジで無限大過ぎる。

自分の想像力なんてハナクソみたいなもんですね。

でまあ出来ないなりにビートボックスを練習していくと、まあ出来ないなりに上達はしていって、それに伴って声を支える筋肉もついていってる感じがするんです。

この後紹介する岩崎ひろきさんもビートボックスをボイトレに取り入れているのですが、発声に必要な筋肉を鍛えるのに結構ビートボックスは最適かもしれません。

普通に声を出しているだけでは決してかからない負荷をかけることができる。


将棋

将棋もただただ好きなだけです。趣味です。

けど将棋と音楽の共通点は多いと加藤一二三先生も仰っておりますし、もの凄くコアのコアのところではそのとおりだなと思います。

まっさらではない盤面に二人でせめぎ合いながらいっきょくの世界をアンサンブルして、同じ戦型を何千回指しても全く同じ将棋は一回もない。

特にフランドル・ポリフォニーの世界観に似てると思います。宇宙の真理を探求してる感じですよね。

また、AIについての加藤一二三先生の言葉を引用しましょう。

車は人間が追いつけない速さで走る。しかし、車が登場したからといって陸上競技の百メートル走が廃れることはなかった。百メートル走は、今なお観客を魅了し続けている。

音楽もそうですよね、初音ミクのように正確に歌える人間はいないけど、それはそれ。初音ミクは初音ミクだし、人間は人間。


ボイトレ

私は現在3人のボイストレーナーに習っています。小久保よしあきさん、岩崎ひろきさん、mahoneさんの3人です。

それぞれの先生にそれぞれ違うことを学んでいます。

ポップス系

小久保先生はマイケル・ジャクソンも受けていたメソッドとして有名なSLSバックグラウンドのボイストレーナーで、ポップス系の発声をメインで教えています。

いわゆるミックスボイスというやつを教えてもらっていますが、最近はコーチング的なアプローチが多く、自分が一体どういう声を求めていて、それには何が必要なのかということのディティールを詰めていくのにとても役立っています。

芸大を出てから最初についたボイストレーナーで、私の声を脱芸大化するのにとても力になってくださいました。

一度どっぷりと浸かってしまった価値観の枠の中から出ていくというのはかなり難しいことです。

私もいまだに昔の悪癖に苦しめられることがあります。

なぜひとつの価値観の中から飛び出していくことが私に必要だったのかについては、最後に書こうと思います。


ベルティング

ビートボックスの項にも登場した岩崎ひろきさんには、主にベルティングを教わっています。

ベルティングはゴスペルやなんかでソウルフルに高音を出すために使うテクニックで、結構ミックスとは真逆のテクニックと言えると思います。

岩崎さんにはSalicus Kammerchorのメルマガ、サリクス通信でも記事を書いていただきましたが、舌骨をキーとして全身へと繋がる筋肉の張力に注目したテンセグリティ的な発想によるボイストレーニングをやってらっしゃいます。

クラシックではベルティングは使わないと今は言われておりますが、私はそんなことはないんじゃないかと思っています。

広義でのベルティングは普通に使われていると思いますし、狭義でのベルティングもかつて使われていた可能性は非常に高いと思います。

ミックス的な高音の出し方と、ベルティング的な高音の出し方と、どちらが「自然」かと考えると、ベルティング的な出し方の方がより原始的で、時代が下れば下るほど普通であった可能性が高いと思うんですよね。

あと、使わなかったとしても、当然ボイトレのツールとしてベルティングはめちゃくちゃ有用です。

合唱団の練習でほぼ毎回やってます笑


スクリーム

デスボイスといった方がイメージはしやすいかもしれませんが、より広義にスクリームとしました。

もともとデスメタル、ブラックメタル、グラインドコアあたりをよく聴いていて(といってもCarcassとGorgorothとCephalic Carnageくらいですが)、これも私の人生と分かちがたく好き♡なんですよね。

メタル関連の記事はコチラ

それでずっと自己流でデスボはやってたんですけど、去年からちゃんとレッスン受けるようになりました。

mahoneさんは教えるのも上手いし、物理の理解も桁違いだしその上デタラメにバカテクです。

この動画一発でバカテク具合がわかります。

日本最高難度と言いながら、その難易度をむしろ上げにいってますよね。異常者(褒め言葉)。

スクリームとホイッスルとガナリを習ってて、最近ガナリをメインで教わっているのですが、ガナリというとこういう感じです。

あートム・ウェイツ好き、あーー好き、好き。

一応音程がある歌唱をクリーントーンと呼ぶのなら、その中で一番好きかも、二番目はウラジーミル・オイドゥパーかなあ、次はSentencedのヴィレ・レイヒアラ。

あ、全員仮声帯発声だ。でも音程があるというだけを定義とするならイゴール・コシュケンディとかも入ってくるか。

レッスンを続けて受けていて思うのは、ビートボックスともホーメイともめちゃくちゃつながってくるというところで、それはつまるところ普通のボイトレにも役になっているということです。

また、スクリームのレッスンが一番ギリギリのところを攻めてる感じがします。

これまでの自分の経験から、身体が完全に拒否反応を起こして、「立入禁止」って看板立ててるところをおらーって突っ込んでくんですよね。でそこ行ってみると意外となんともなくて、翌日筋肉痛になっているという、つまり未だ鍛えたことのない筋肉を鍛えることができたということなんですよねえ。

これも、それまでの自分の常識みたいなもんをぶち壊して、その先に可能性が見出だせた例でありまして、得難い経験でございました。


インド音楽

昨年からバーンスリー奏者の寺原太郎さんに個人レッスンしていただいて、インド古典音楽を学んでいます。

これにははっきりした目的がありまして、グレゴリオ聖歌の歌いまわしを探るためです。

グレゴリオ聖歌の歌唱法って、一応10世紀頃に記された古ネウマによって伝えられてはいるのですが、ネウマによる歌唱の伝統が途絶えてしまって、ネウマが意味するところが一部はっきりしないところがあるのです。

特に特殊ネウマと呼ばれる一群のネウマは何らかの特殊な唱法が用いられたということぐらいしかわかってなくて、私たちはその歌い方を想像して再現するしかないんですね。

でなんで古ネウマによる歌唱の伝統が途絶えてしまったのかというと、古ネウマでの記譜の習慣がなくなって、音程と一部古ネウマの名残を残した記譜法に変化してしまったからで、それはやはりポリフォニーの発達も大きく影響していると思います。

西洋音楽は横方向ではなく縦方向に進化した、そう言えると思います。つまり声部が増えていったことで、一つ一つの声部の旋律に対する繊細な感覚は失われていったと。

その点インド音楽は横方向のまま進化したと言えると思います。とにかく一つの旋律に対する感覚というのが、我々からすると異常に繊細で、聞き取ることもできないほんの僅かな変化によってもの凄く多様なラーガの世界を形作っているんです。

だからきっとそこには同じ単旋律の歌であるグレゴリオ聖歌を歌うためのヒントがあると思ったんですね。

まだまだ研究の途上ですが、少なくとも私の中で、グレゴリオ聖歌を歌う時の旋律に対する感度といいますか、繊細さは飛躍的に増しました。

インド音楽の気の遠くなるような世界観についてはこちらの動画をちょっと観ただけでもおわかりいただけるのではないかと思います。


結局何がしたいんだい

というわけで「本業以外(に一見見える方)」という項目がやたら長くなってしまいましたが、私の活動、一見とっちらかってますよね。

しかしまあほとんど本業に直結しているというか、極論言うと人生に無駄はないので、全部つながっているといえばいるのですが、これがほんとに思ったよりつながってるんですね。

というのも私の本業、いわゆる「古楽」の中の特に声楽というジャンルはなかなか曲者でありまして、もちろん録音が残っているわけでもなく、楽器が残っているわけでもないので、実際にどういう声で歌っていたかわからないんです。

インド音楽のところでも書きましたが、グレゴリオ聖歌の場合、古ネウマという歌いまわしを示した記号は残っておりまして、どういう歌いまわしをしていたかは(一部除いて)だいたいわかります。

また歌の教則本のようなものも残っておりまして、例えばヤギが鳴くような声で歌っちゃだめだよーとかこういうときはこういう装飾をつけるんだよーとかそういうことは残っているのですが、やはりテキストで音色を表現するのは難しいということと、書くまでもないことは書かないというところから、実際にどういう音色で歌っていたかわからないんですよね。

ヤギの鳴くような声で歌っちゃだめってそれわざわざ書かなきゃならなきゃいけないようなことかと思うんですけど、そういう声で歌う人がいたからそういうことを書くわけですよね。

そんなわけで、多分今巷でやられてるような、いわゆるオペラ発声のマイナーチェンジでしかない「古楽発声」みたいな声ではなかったと思うんです。

時代を遡れば遡るほど。

また、そもそもわりと新しい作品であっても、今やられてるような発声が本当にふさわしいかどうかというのは甚だ疑問がありまして、特に、わりとみんな「歌詞に即した表現をしましょう」というようなことを言うのですが、その割にみんなずーっとおんなじような音色で歌うんですよね。

「え〜〜〜そんな生々しいエゲツない歌詞歌ってるのにそんなよそよそしい声で歌うの〜〜?」ってよく思うのですよねえ。

音色のバリエーションが極端に少ないというのは、今のクラシックの歌の最も大きな特徴ではないでしょうか。

私は歌を歌う時に、その歌にほんとうにぴったりな声で歌いたいと思うわけです。

気剣体の一致とか剣術では言いますけれど、気声体が一致した歌が歌いたいんです。

特殊発声も、ノイズボイスも、ビートボックスも、ベルティングも、スクリームも、人間の声の可能性のひとつなんです。

これは武術で学んだことですが、「型」というのは身体観の変容を経験することだと。

そして型によって経験した身体観の変容を、型によらずして起こすことが観法だと。

いろんな声を出すということは、型の稽古をしているようなもので、「身体観の変容の経験」を目的としていて、「意」が起きたその瞬間に「意識」のラグを挟まないでその声が「出ている」ということを目指しています。

韓氏意拳では一形一意(意と形の一致)という言葉がありますが、歌の場合「一声一意」です。

そのための型稽古としてのボイストレーニングという感じですね。

特殊発声、ノイズボイス、ビートボックス、スクリームといったあたりは、ただただ好きでやってたらいつの間にかつながってたんですよね、偶然。笑

自分から足を突っ込んでいったのはポップス系の発声、ベルティング、インド音楽あたりです。

これは必要だなと思ったから突撃しました。

武術はこれらで身につけたテクニックをテクニックで終わらせないための土台といいますか、それらと体、心、気を一致させていくために私にとって絶対必要なことです。

あー、将棋だけただの趣味のようですが、うん、いや別にただの趣味でもいいんですけど、ただの趣味と言うには憚られる奥深さ、コアのコアでのつながりを感じます。宇宙とはなんぞや、人間とはなんぞや、ということを追求してますよね。プロ中のプロの将棋の話ですけどね。


いやはや長くなってしましました。

興味ある方はレッスンやってますので私のところに来ていただいてもいいし、私はそれぞれの専門家では全然ないので、それぞれの専門家のところへ行ってください。

武術:光岡英稔先生の講座 BUGAKU 韓氏意拳

特殊発声・ノイズボイス:徳久ウィリアムさんhttps://note.com/voiz

ポップス系発声:小久保よしあき先生http://kokubovoicetraining.com/

ベルティング:岩崎ひろきさんhttp://gospelvoicelab.com/

スクリーム:Mahoneさんhttps://mahone.jp/

インド音楽:寺原太郎さんhttps://srgmtaro.jimdofree.com/class/


所属団体のリンクもここに貼っておきます。

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コエダイr合唱団WS&演奏会

コエダイr合唱団WS&演奏会

1月に予定していた公演の延期公演です。

緊急事態宣言が発出されたのを機に延期した本公演ですが、緊急事態宣言が延長されても今回はやります。

時間も早めですしね。

今回はWSと演奏会の二本立て!大変そう〜笑

1時間半で何かしら特殊発声ができるようになって、夕方からの公演では一声出せるかも??

演奏会ではいつものように、

トゥバのホーメイ

サルデーニャのテノーレス

モンゴルのオルティンドー

ビザンチン聖歌

ヨーロピアン倍音唱法

日本民謡

ブルガリアン・ヴォイス

ジョージアの男声合唱

ヨーデル

をやります。

その上ソロコーナーもあって、私はグレゴリオ聖歌を3種類の声で歌います。

わたしにとっては実はこれが一番チャレンジングかもしれない。

限定15名様なのでお申込みはお早めに!

お申し込みはこちら↓

https://www.reservestock.jp/events/523024?fbclid=IwAR3dDIV4U9YzfP15CWG9YloqnWPh_35HZ00bCYuAMYS9kzf56l1cU-TVPHo


Ensemble XENOS音源配信!

第2回演奏会の演奏録音、演奏動画を配信しております!

結構凄い演奏だと思います。ぜひ、注意深く聴いていただきたいです。

https://xenos.thebase.in/


Salicus Kammerchor第6回定期演奏会チケット発売中!

シュッツのシリーズの第1回です。

今まで聴いたことのないようなシュッツになると思います。ぜひ!

【日時・会場】

2021年5月16日(日)14:00開演(13:30開場)
千葉市生涯学習センターホール
予約:https://tiget.net/events/114695​

ライブ配信:https://twitcasting.tv/salicus_kc/shopcart/51713

2021年5月21日(金)19:00開演(18:30開場)
豊洲シビックセンターホール

予約:https://tiget.net/events/114696

(2019-21年定期会員の方は両公演ともご招待となりますので、誤ってチケットを購入されないようお気を付けください)